4月1日の記事で、「友からのお薦め番組」というタイトルで、BS1スペシャル「ウイルスVS人類~未知なる敵と闘うために~」という番組を紹介させてもらいました。
それで、モノは「ついで」ということで、すべてではありませんが、番組の中で出演者たちが話したことのうち、比較的耳にしているところは省略し、通常のニュースなどには出て来ない話を文字にしてみました。
話し手が話した通りではなく、わかり易いように簡略化したり、多少言葉を変えたりしていますが、意味としては変わっていないつもりです。
ブログ記事としては少し長いので、前篇と後篇に分けてアップさせてもらいますが、読んでいただければ幸いです。
BS1スペシャル「ウイルスVS人類~未知なる敵と闘うために~」
【出演】押谷仁(東北大・専門家会議メンバー)、五箇公一(国立環境研究所)、瀬名秀明(作家)
≪ナレーション≫
○中国経済が発展し、物資や人の往来が増えてきたという状況の中でヒアリも入って来た。ウイルスも、ウイルスそのものの力というよりも、人の往来の速度が速まり、世界の距離が縮まってきた、そう云うことが大きな要因としてある。航空機で移動する人は現在35億人と言われ、この15年余りで倍増した。
○2013年に発表された中国の一帯一路構想はかつてのシルク・ロードのように、アジアとヨーロッパを陸路と海路でつなぐ壮大な計画だが、この10年で、中国とヨーロッパを往来する列車も大幅に増加し、グローバル化が急速に進む中で発生したのが、新型コロナウイルスだったのだ。
○コロナウイルスは、表面の突起が太陽のコロナ冠に似ていることから名付けられた。コロナウイルスは6種発見されていて、
①その内の4種類については症状が軽い。
②2002~2003年に発生したSARS(重症急性呼吸器症候群)は、感染者数が約8000人、致死率約10% 野生のコウモリ由来のウイルスである。
③2012年に中東で発生したMERS(中東呼吸器症候群)は感染者数2500人、致死率34%と極めて高い。ラクダから人に感染した。
④今回の新型コロナウイルスは未知のもので、SERSやMERSほどの強毒性はないが、致死率はインフルエンザよりはるかに高いと見られている。
≪解説≫
○人体に入って感染症を引き起こすものとしては、ウイルスと細菌がある。ウイルスは特殊な顕微鏡で見なければ見えないぐらい小さく、自分自身では増殖できないため、人の体の細胞の力を借りて増殖する。この様に自己増殖できないことから、一般的に生物ではないと言われている。
ウイルスが増殖しようとすると、これを排除しようとして身体の温度を上げ、さらに免疫機能が働いてウイルスを攻撃するが、出会ったことのないウイルスに対しては免疫機能が充分に働かない。このため新しいウイルスに対しては感染が拡がり重症化するので警戒が必要だと言われている。
五箇公一(国立環境研究所)談
○中国南部に生息しているいろんな種類のコウモリを調べると、種類ごとに特異なウイルスが寄生している。で、ウイルスは自然宿主(しぜんしゅくしゅ――ウイルスと共生している生物のこと) というものの中で共生していて、その中でウイルスは常に変異している。その変異がたまたま新しい宿主に出会ったときにマッチングして、一気に拡がることを繰り返している。今回も野生生物の中で閉じ込められていたウイルスが、人間が自然の中に入り込み、活動域を拡大していく中で、家畜または人間に感染するタイプに変化している。
≪ナレーション≫
○16世紀、スペインの南米大陸に上陸し、インカ、アステカの国を征服したが、わずかな兵力で勝利したのは、銃や鉄製の武器に加え、スペイン人が感染症を持ち込んだからだ。この時代、免疫がなかった南北アメリカ先住民は5600万人が死亡した。
○1918年、全世界で8億人が感染したスペイン風邪は、第1次世界大戦の末期、戦死者1000万人をはるかに超える4000万人以上の死者を出した。、
○1957年のアジア風邪と言われるインフルエンザでは200万人が亡くなった。
○1997年、鳥インフルエンザ(H5N1)は香港で初めて人に感染し、6人の死者を出した。
○2009~2010年 新型インフルエンザは豚由来のインフルエンザで、死者1万9000人、日本では203人が亡くなった。
押谷 仁(東北大・専門家会議メンバー)談
○21世紀に入ってSARSやいろんな高病原性(強毒性)とか、鳥インフルエンザとかの流行があって、それが本当は自然からの警告で、人類はもっと真摯にこの警告を受け止めなければいけなかったんですけども、2009年のパンデミックが重症例が少なかったということもあって、警告を受け止めることが出来なかった。その為、今回のようなことが起きた時の準備が出来てなかった。
五箇公一(国立環境研究所)談
○僕は外来生物を研究しているが、例えばヒアリ一つとっても、アメリカではこういうパターンで巣をつくって広がるとか、中国ではこういうパターンで広がるとか、その共通項をもって日本でもこうなるだろうと想定してマニュアルを作っていた。ところが今回品川のオオミ埠頭で出て来たヒアリは全く違った形で巣をつくっていた。砂も土もないコンクリートの中でちゃんと巣をつくっていた。要は生き物、ウイルスは生物ではないが、野生で生存しているものは常に進化し、順応的で、人知を超えたところで新しい住処を見つけて行くわけですね。だからウイルスの場合も同じで、前はこうだったからという想定でやっていたんでは追いつかないんところがあるんです。
つづく
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