気の向くままに

山、花、人生を讃える

或る「夫婦の会話」

2020年02月18日 | 人生

毎月の月刊誌を放置しておくと本箱に入りきらなくなるから、自然と古いものから処分してゆかなければならない。空気を吸って吐く様なもので、処分することも大事な仕事なのである。ただ、そのまま処分するのも申し訳ない気もするので、処分の前にはざっと目を通します。

 

そして今朝、処分をと思って婦人向けの「白鳩」という月刊誌をざっと読むと、『信仰随想』コーナーの「夫婦の会話」と題するエッセーがとても良かったので、このまま処分は勿体ない気がして、ここに書かせてもらうことしました。深いしみじみとしたものが感じられてとても良かったのですが、皆様も何かを感じて頂ければ幸いです。

 

さて、このエッセイを書いた奥さんのご主人は、食べ物をのどに詰まらせて苦しそうにすることが続いたので診察してもらうと、ステージ4の食道ガンだったとのこと。それでも、五女の結婚式のときには、バージンロードを娘と歩いてくれました、と書いています。

以下、原文をそのまま紹介させてもらいます。

 

≪夫婦の会話≫

私たちは、私が22歳、主人が27歳の時に職場結婚しました。鉄鋼メーカーの営業職だった主人は、「僕は出世しないけどいいの?」と言いましたが、私は主人といるだけで安らぎを感じました。

 

主人は元々口数が少なく、しかも単身赴任が7年も続き、私も5人の娘を育てることで手一杯で、夫婦の会話はあまりありませんでした。子育てのことや子供たちの進学のことなどを私一人で決め、主人には事後承諾ということが度々ありました。今振り返ると「きっとわかってくれている」と自分勝手に思い込む私を優しく大きな心で受け止めていてくれたのです。

 

入院中は主人との時間がゆっくり過ぎて行きました。近所の知り合いから生長の家の教えを伝えられていた私は、「人間は神の子で、命は永遠に生き通し」と学んでいたので、「お父さん、命は生き通しだから、いつも一緒だよ」と励ましました。そして枕もとで生長の家のお経の『甘露の法雨』を繰り返し黙読しました。

 

ベッドの主人に「これまで何もできなくてごめんなさい」と言うと、主人からは「よくやってくれてありがとう」という言葉が返ってきました。私も「子供も孫も家もあり、日本一、世界一、宇宙一の幸福者です」と素直に感謝の気持ちを伝えました。主人に「来生は何になりたい?」と聞くと、「お殿様になりたい」と言います。「じゃあ、私がお姫様になったら探してね」と答えました。結婚生活の中で、互いの心が通い合った時間でした。

 

この会話から数日後、「少しだるい、ゆっくり休みたいから先生を呼んでくれ」と主人が言いました。主治医が「ゆっくり休みたいんだね」と問いかけると、主人は「うん」と頷きました。子供たちは手足や体をさすりながら「おとうさん、ありがとう」と 言葉を掛け続けました。そして平成○年○月○日、主人はそのまま安らかに霊界に旅立ちました。

 

主人を亡くした後も、私はもっと主人と話す時間を作ればよかった、もっと主人の気持ちに寄り添えばよかったと、後悔の念に苛まれました。

 

と、その頃の心境をつづられ、その後、本の中に、

○人間の本質は肉体ではなく、それを動かす生命である。肉体はこの地球という天体で生きるための宇宙服のようなものだから、この世の使命が終わればそれを脱ぎ捨てて、新たな次の境涯へと移行する。≪中略≫残されたものは、悲しく、恋しく、切なくても、その思いを感謝の心に替えていくことが必要だ」

 

と、書かれているのを読み、

 

毎日、『甘露の法雨』を読誦して、遺影に「お父さん、ありがとう」と語りかけています。私が毎日明るく笑顔で生きることが、主人か一番喜ぶことだと信じています。

 

と、このように結ばれていました。


さて、自分があの世に行くときは、どんな死に方になるのだろう。
こんなしみじみとした会話の後で静かに旅立っていければきっと幸せだろうと思う。

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