[自公惨敗]<中>

 

 「政権交代前夜という言葉に間違いなくリアリティー(現実感)が出てきた」

 立憲民主党の野田代表は28日の記者会見で、与党が過半数割れとなった衆院選をこう評価した。

 立民は148議席と公示前勢力から50議席の大幅増となった。ただ、党幹部は20議席弱を取りこぼしたと悔しがり、「自民党をもっと追い込めたはずで高揚感はない」と明かした。

 全国の比例選の得票は今回1156万票で、惨敗した2021年の衆院選からの上積みは7万票にとどまった。それでも議席を増やしたのは、政治とカネの問題で自民党に激しい逆風が吹き、小選挙区での勝利が21年の57から104に急拡大したためだ。

 石破首相(自民党総裁)は選挙中、「自民の候補者におきゅうを据えたいという国民の気持ちが強すぎる」と周囲に漏らした。返り咲きを果たした立民の中堅議員は「有権者に立民へ期待があったわけではなく、自民への怒りがあっただけだ」と指摘した。

 野田氏は今後、少数与党に陥った自民と対峙たいじするため、野党をまとめていく手腕が求められる。

 30日には、日本維新の会や共産党との党首会談が予定されているが、野党第2、第3党の維新と国民民主党は政策によって与党とも連携する路線を掲げ、立民と温度差が大きい。維新と国民は、憲法や外交・安全保障、エネルギーなどの考えが立民と異なることも問題視し、「基本政策の協議と一致が不可欠だ」(国民・玉木代表)との立場をとっている。

 野田氏は衆院選では、党綱領にある「原子力発電所ゼロ」などは曖昧にし、現実路線で穏健保守層の支持を呼び込んだ。今後は、党内左派の反発も招きかねない政策の見直しに正面から取り組まなければ、立維国関係の構築や来夏の参院選での支持拡大はおぼつかなそうだ。

 立民内には、内閣や閣僚への不信任決議案を連発するなど、「国会戦術で徹底的に与党を揺さぶるべきだ」という主戦論がある。立民の前身である民主党は2007年参院選で躍進し、衆参の多数派が異なる「ねじれ国会」が生じた。民主は法案や国会同意人事などの駆け引きで自民を追い込み、09年衆院選での大勝、政権交代につなげた。

 ただ、国政をいたずらに停滞させれば、維新と国民はさらに立民と距離をおきかねない。野田氏が目指す野党連携の先行きは不透明感を増している。