こぶた部屋の住人

訪問看護師で、妻で、母で、嫁です。
在宅緩和ケアのお話や、日々のあれこれを書き留めます。
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揺れる心。

2009-11-12 23:45:41 | 訪問看護、緩和ケア
昨日は、私が皮膚科の往診から帰ると、緊急当番が訪問に行ったと報告が。
このところ血圧が低下していた、Sさんがベットから落ちたとのことで、駆けつけていました。
火曜日には、ご本人と奥様の強い希望で「、何があってもいいからお風呂に入りたい。」「最後の入浴になると思うから」と言われ、訪問入浴も無事入り、昨日は朝から血圧も60を切っている方です。

身の置き所のないだるさ。
バタバタと向きをかえたり、衣服をはいだり、手足を投げ出したり・・・
終末期にはよくみられる症状です。
あまりに身をバタバタさせて、ベットからずり落ちてしまうことがたまにあります。

こういうときには、鎮静作用のある座薬を入れることで眠くなり、だるさや苦しさから解放されます。
ただし、衰弱の進んだ状態では、時としてそのまま目を覚まさないことがあることを、ご家族にもちゃんと伝えます。
ほとんどの方は、はじめは戸惑いますが、病状の変化をまじかに見て、ご家族の苦しみを見たときに、「もう十分だから。これ以上苦しまなくてもいいから。」
「眠らせてあげてください」といわれます。

この時も同じでした。
「私が、一人残るのが心配なのね?」わずかにうなずく夫。
「大丈夫。私は一人でも大丈夫だから。安心していいから。もう苦しまないで、眠ってください。」
そういう妻の手を、両手で握り締めて何度か力ずよく振った後、眠りにつきました。
最後に口を動かし何かを言っているように見えましたが、看護師にはわかりませんでした。
でも、妻はわかっていました。

「ありがとう。」と言ったことを。

そして、その20分後に彼は旅立ちました。

担当の看護師も駆けつけて、一緒にステルベンケアをしてくれました。
私もケアマネとして伺いました。

最初は「無理。私できない。」と言っていた奥様は家で看とれたことを、とても感謝してくださいました。
「こんな介護を家で受けれるとは思わかなった」と。
「これから、私が広めるから。みんなに教えてあげるんだから」と言ってくれました。
悲しみの中にも、ちゃんと見送れた満足感と誇りがあり、とてもしっかりとされていました。

最後に意思を伝えあえてよかった・・。

新しい素敵なスーツが、とてもよく似合って、笑顔を浮かべて眠っていたそうです。
奥さん。よく頑張りました。
ご主人も分までこれからの人生、楽しんでくださいね。