こぶた部屋の住人

訪問看護師で、妻で、母で、嫁です。
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バルン交換がネック

2011-12-20 20:49:16 | 訪問看護、緩和ケア
バルンカテーテルに関しては、いろいろなハードルがあります。
在宅ではバルンカテを使用している患者さんが多い割に、このおかげで色々なトラブルが起こってきます。

バルンカテーテルと言っても、在宅でいうバルンカテは膀胱用のものです。

何らかの障害や全身管理の目的で、膀胱に管を留置するもので、その管が抜けないように膀胱の中で風船を膨らませて固定します。

このバルンカテの管理は、男性は医師が入れ替え、女性は看護師が入れ替えるのが通常ですが、在宅では医師の指示があれば、男性のバルンカテ交換を看護師が行う事もあります。

交換の目安は、ラテックス性のカテーテルでは2週間ごと、シリコン製では1か月ごとが一般的です。

ちなみに、尿は貯留バックに貯められますが(バックの形態もたくさんあります。)一日1回は定時に破棄します。
尿量や性状を観察しやすく、オムツ交換は便のみの管理なので、家族としては「楽です。」と言う言葉もよく耳にします。
でも、実際膀胱に異物が入っているわけで、カテーテルなど入れないに越したことはありませんが、総合的な判断での使用が必要です。
管の交換は、医師か看護師しか行えないものですが、長く使っているといろんな問題が起きてきます。

一番問題なのは、尿路感染。
本来無菌的な膀胱に、外界とつながる管が入っているので、時にバイ菌が入って、膀胱炎や酷ければ腎炎なども起こすリスクがあります。
ですから、陰部の清潔を保ち、管の管理も十分注意が必要です。

そして、よくあるトラブルとしては、自然抜去とそれにともなう裂傷や損創でしょうか。
何年も前ですが、半年ほどバルンカテを入れ、寝たきり状態の患者さんの訪問で、びっくりしたことがあります。
なんと、管の挿入してあるペニスの先端からペニスの付け根まで、見事に裂けてたのです。
長い時間の中で、少しづつ開いていったと、妻は言っていましたが、これは尋常じゃないですよね。
いわゆる魚の開きの様相を呈していたわけですが、ご本人は痛みもなく平気な顔をしていました。
確か尿路感染がなかなか改善しなかった記憶があります。

そこまで行かなくても、挿入部に潰瘍が出来たり膿がたまったりすることも時々あります。

動きの多い方は、どうしても引っ張ってしまうので、固定の仕方に工夫が必要です。

それから、女性に多いのが自然抜去です。
特に何もしていないのに、管がスルッと抜けてしまう。
先端は、きれいにバルンが膨れたまま・・。

女性は尿道が短いうえ、長期の使用で、尿道の括約筋が弱ってしまい、抜けやすくなってしまう方がいらっしゃいます。

最近、ある女性の患者さんが、時々抜けるようになってしまいました。

先日は、デイサービスで抜けてしまい、ご家族から「入れに行ってください。」と電話が来ました。
でも、残念ながら介護保険で利用している施設には、介護保険で入っている訪問看護が行って活動するわけにはいきません。
その日は、デイサービスが泣く形で、途中から自宅に帰り訪問看護の緊急訪問での入れ替えとなりました。

そして昨日、今度はショートステイを利用中です。
夕方、特養からご家族連絡が入り、ご家族から緊急連絡がありました。
「ショート先でバルンが抜けたので、訪問看護師さんに入れに来てくれるよう言われました。」と・・。

こちらからショート先に連絡すると、特養の看護師が「うちでは入れられないことになっていますので、訪問看護師さん、入れに来てください。」とのこと。

介護保険サービスでは、それは出来ませんから、ショートで看護師さんがいるならそちらでお願いします。と言いました。
「え~?出来ないんですか?」「だって、介護保険重複して使用は出来ないことになっていますよ。どちらかは、請求できなくなりますよ。」
結局すったもんだの上、施設での入れ替えをお願いしました。

実際、法的には主治医からの指示があれば、施設のナースがやっていいことになっています。

ですが、現実は・・

①老健では看護師が常駐しているが、特養では看護師が定時でいなくなってしまう。
②看護師はいるのに、施設の方針で施設の看護師は処置をしてはいけない事になっている。
③もし抜けた場合、家族対応で病院へ搬送し、そこで入れ替えてから施設に戻る。

でも、在宅医しかかかっていなければ、最寄りの病院はなく、かといって男性の医師にバルン交換は双方困るかも・・・(そんなこと言ってる場合じゃないですが、心情としてはお互いそんなものです。)

それに、在宅支援診療所ならまだしも、そうでない往診医は時間外につかまらないことだって多いのです。

最悪、訪問看護師が保険外の10割自己負担で訪問するか、もっと危ない橋を渡るか・・って。
そういう事は、出来る限りしたくないですね。

とにかく、バルンをちょこっと入れ替えるだけで、やたら面倒なことになってくるのです。

今回、固定液を5ccから10ccのものに、変えて頂けるよう交渉中で、主治医もそれを探してくれています。
在宅支援の先生なので「ショート中はこちらでの対応がスジなので、こちらで何とかします!
」と言ってくれてますが、こういうのってなんとかならないのでしょうかね・・。
どうして、施設の看護師がこんな簡単な処置をしてはいけないのか・・?

医療事故が万が一起った場合の保険料の問題とか、看護師のスキルの格差の問題とか人手不足の問題とか、いろいろな理由があるのでしょうね。
でも、これからもっともっと医療ニードの高い方が増えるわけで、そういう受け皿を増やす意味で施設の乱立を許可しているのなら、そのへんのフォローが出来るような体制を指導してもらわないと、在宅は進歩できないと思うのですが・・。