Sketch of the Day

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日本橋の景観論をめぐって

2006-01-22 | Japan
小泉首相が日本橋を覆い隠す首都高の移設を唱えたことにたいして、都知事の石原慎太郎が「つまらん金かけるより、日本橋をどこか近くの川に移したらいい」と発言したそうだ(1月21日朝日新聞朝刊)。ただ、そういう石原も、現在の日本橋周辺の景観については「ナンセンスで非常に野蛮な街の造形」と断わっている。ところで、国家や政府による「景観発言」(公による私の制限)にたいして一部で批判的に捉える向き(石原の発言とは無関係)がある。そういう心配がなきにしもあらずだということは理解できる。だけど、日本橋には現行の景観を良しとしない地元の声が確実にあるわけだし、ボクとしては小泉発言の積極的な意味を評価したいと思っている。(ただ、あそこだけ高速をどかしてもあんまり意味ないとは思うけど)

少なくとも、今の日本橋の景観はおかしいのだという「みかた」が国民に向けて発されたことをボクは評価したい。むろんああいう景観こそがオモシロイんだという「みかた」もまたあることは知っている(ボクだってそう思う時さえある。というか、こういうことにかんして健全な議論が巻き起こればいいと思っている)。ボクとしては、確かに東京の景観はオモシロイかもしれないけど、そういう「みかた」をもった連中が増えて欲しいとは決して思わない。「大本営による景観発言に危惧を覚える」という指摘がバカなキッズどもに曲解されて、日本橋の景観はアレはアレでいいんだと思うヤツが増えることをボクはむしろ危惧する。そういうバカどもが将来デザイナーになって、これがトーキョーのリアリティなんだとかぬかしてとんでもないものつくって、東京の景観をさらに混乱に陥れることをボクは危惧する。

少なくとも今のボクにとっては、「大本営による景観発言に危惧を覚える」という指摘よりも「日本橋上の高速道路を撤去せよ」という発言のほうがよほど刺激的だ(歳とったのかな、たぶん20年前だったら前者に興奮しただろうに)。いや、ほんとうは小泉発言なんてものは、あたりまえすぎて面白くも何ともないとるに足らない内容なのだが、「日本では」やけにラディカルに聞こえる。