綿吹いて懐かしきかな祖父の笑み
季語:【綿】(仲秋)綿の実 綿実 綿吹く 桃吹く
夏に開花した綿は、秋に卵形の果実を結び、熟すと三裂して白色の綿毛をつけた種子を吐く。
これを「綿(棉)吹く」「桃吹く」といい、この実綿が繊維に加工される。➡綿取・棉の花 は(夏)の季語
例句一句:綿吹くや遠き思ひは遠きまま (板津 堯)※俳句歳時記
昨日から9月に入りました。
梅雨に入る前、お隣さんから「珍しいから育ててみる」と、綿(わた)の種を貰いました。
幼い頃、祖父が綿花畑を持っていて、綿の種取りを手伝った記憶があります。
木製の「綿の種取り機」がありました。
そうやって種を取った綿は、大人たちが綿屋(わたや)さんと呼んでいた所に持って行くと布団などに加工してくれました。
遠い昔の記憶です。
この猛暑のなか、せっかく出た芽を駄目にしないようにと、陽当たりや水遣りを考え、大切に育てました。
甲斐あってか、綿吹きを見ることができました。
「ほうら、いっぱい綿(わた)取れたよ!」と…笑顔の祖父・・・
遠い遠い昔を思い出だし、句にしてみました。
※歳時記に乗っていた例句も、わたしの心情に似ていたもので載せてみました。
7月下旬、淡い黄色でハイビスカスや芙蓉などの形状に似た美しい花が咲きました。
朝咲いて夕方には萎んでしまいます。
花の散った後に、実がなりました。
季語の傍題に「桃吹く」とあるのは桃ではなく綿のことで、この実が桃の形状に似ているからだそうです。
8月も終わりに近づいたある日、気がつくと白い綿ができていました。
これを「吹く」と言うのだそうです。(俳句をやっていなければ知らなかった言葉)
お隣さんから頂いた【綿の種】で、思いがけず昔を懐かしむことができました。