「魚の棚商店街」
地元明石では “うおんたな” と呼ばれています。
今日も色鮮やかで勇壮な大漁旗がゆっくりと泳いでおります。
「明石鯛」 と 「明石ダコ」 がシーズンオフ、「いかなご」 もまだシーズン前
ということもあり、年明けのこの季節、魚介類の種類や市場の活気は、やや
スローダウンしています。ただ、その季節だからこそというネタも無いわけでは
ありません。水揚げされた 「明石の昼網の魚」 は、すぐに市場でセリ落とされ、
それこそ昼頃には、「魚の棚」 の棚の上にリアルタイムで並べられ、夕食の
おかずを買いに来るお客さんを出迎えます。
今回、一番多く目にしたのは、 浜で “メダカ” と呼ばれている 「メイタガレイ」
でしょうか。5~6枚入れて 1ザル○円で売っているのですが、まだ生きていて
ハネまわっています。生命力の強いこういう魚を食べていると長生きできるかも
しれませんね ・・・ 。それから、数は多くありませんが 「ハリイカ」 もピクピク
していて旨そうでした。ただ、あると思っていた 「イイダコ」 が意外に少なかった
のは水揚げが無かった為か、それとも、大阪あたりで高く売れるので出稼ぎ?
に行ってしまったのか ・・・ ???
太刀魚(地元では「立魚」)は、もう少なくなり、ミリン干しなどに加工されたものが
売られています。播磨灘で有名な 「アナゴ」 は、高砂・姫路ほどではないですが、
300g以上の 「デンスケ」 と呼ばれている大きなアナゴが “明石ブランド” になって
います。ただ、これも少し季節外れなのか、丸で持っているお店は見当たりません。
「テンバリ(200~250g)」 を開いて焼アナゴとして売っているお店がほとんどで、
明石のBIG3(明石鯛・明石ダコ・アナゴ)は撃沈の季節です。
さて、そんなこんなで商店街をうろうろしていて気づいたのですが、昔より
はるかに明るく垢抜けた商店街になっているではないですか。私個人的には
魚が少なくて寂しい感はあるのですが、それを補うほどのパワーを感じます。
もちろん、写真にもあります商店街の各店舗の上にかざしている鯛のイラスト
入りの行燈(照明)や大漁旗が商店街の活気と統一感を生んでいます。その
繋がりを持った上で、各お店は自店を主張するファサードを用意しています。
当たり前ですが、流行るお店と流行らないお店にはそれなりの理由があります。
新鮮な魚を買いたいお客は、新鮮に見えないお店では買いません。新鮮に見える
お店を探すのです。魚の目利きができるお客は多くありません。でも、二つのお店
のうち、どちらが新鮮な魚を置いていそうかという判断はできるものです。
その違いが結果を決めるということを店側が常に意識できるかどうかです。
「今日はお祝いやから、少々値が張ってもええから“めでたい(鯛)” を買うで!」 と
思っているお客が、暗い店員さんが売っている暗~いお店で買いますか?まず、
買わないでしょう。活気・元気がある兄ちゃん姉ちゃんが売っているお店へ集まる
はずです。同じようにセリに出かけて新鮮な魚を手に入れても売れなければ何の
意味もありません。大きくみれば、商店街全体がそうです。“あの商店街は ・・・”
と思われているサビレた商店街が全国に広がっています。その中で、この明石
「魚の棚商店街」 は元気だと云えます。商店街の管理運営を行なっている方々が
素晴らしいのかもしれません。HPも情報がわかり易くてええ感じですよ。
⇒ http://www.uonotana.or.jp/
大阪に負けないほどの派手な看板やオブジェ、店先に出している屋台棚は大きく
通路にハミ出し ・・・ 商売っ気を感じます。商店街はこうでなきゃ!!です。
普通、地方の魚市場(商店街)に行く観光客のほとんどがリタイアした年配の方や
慰安旅行で行く場合が多いのですが、特産の 「明石ダコ」 を素材とした 「玉子焼」
や揚げたての 「たこ入り天ぷら」 を売るお店もあり、この商店街には若い層の
グループがこぞってやって来ます。そして、それに負けないで、兄ちゃん姉ちゃん
だけでなく、干しダコや珍味を売っているオッさん、天ぷらやするめを売っている
オバはんたちもすこぶる元気で相乗効果を生んでいます。若いて言えば、味見を
すすめるのはいいのですが、買いたくてもポーションと値段が判りづらいお店が
多いので、“すぐ買える(買いたくなる)” 見せ方(サンプル)は必要だと思います。
最後に、商店街に1軒だけある酒屋(たなか屋)さんを覗きます。地元のお酒
(太陽酒造のお酒もありました)やおすすめのお酒を店先にディスプレーしています。
「魚」 と 「肴」 と 「酒」 の “3S” を買える商店街 ・・・ やっぱ、いいですよね!
ちなみに、ワインも置いてます。何と、このブログで私が紹介したワインもあります。
この酒屋さん、只者ではないはず ・・・ 。
「明石」
今度行くなら、やっぱ夏でしょうか ・・・ 。
【 Q 】 「たこ焼」 ではなく、出汁につけて食べるたこ入りの
「明石焼」 を本場の明石では何と呼んでいるでしょうか?
【 A 】 「玉子焼」 です!
というクイズがあったような ・・・
酒を求めて明石に来たのは良いのですが、「明石だこ」 のシーズンオフ
ともいうべきこの季節に来てしまった為、やはり昼飯に悩んでしまいます。
すみません。途中ですが、
前回の記事で結論を出していなかった、“昔飲んだ 「燗上がりのお酒」” は
「太陽酒造」 さんのお酒ではありませんでした。( 私の舌の記憶が確かなら ・・・ )
実は、もう2箇所ほど蔵元さんを廻ったのですが、行ってみると工場の風情で ・・・
入るのを躊躇ってしまいましたので、結論は次回に持ち越します。それにしても、
ほっこりした気分に浸れた 「太陽酒造」 さんのお酒との出会いはラッキーでした。
さて、話を戻します。昼飯です。
何にしましょうか? ( PC持ってくればよかった ・・・ )
確か、いつもチェックしているグルメブロガーさんが明石で食べた 「玉子焼」 の
お店の情報が手帳にあったはず ・・・ ありました!ありました!
少し離れていますが、明石港(魚の棚)の方へ向かう私にとっては、通り道の
ようです。ここにしましょう。( NAVIがすこぶる快調、迷わずに一発で到着です。 )
幹線道路から少し南へ下がった地域にあります。やたら近隣に神社とお寺が
密集しています。あと数㍍(2筋)も南へ行けば港に出てしまうという細い生活道路
沿い(漁師さんたちがたくさん住んでいそうな住宅地)にあります。どう見ても、
今風の流行のお店ではないです。2階建ての自宅兼店舗(1F前部分)の玄関には
青い暖簾がかかっています。入ってみます。5坪弱ほどでしょうか。
カウンター4席と小上がりの座席(細い方が4名なんとか座れます)が1つあります。
詳しい場所と屋号は控えます。流行っているとか、美味しいとか、評論する前に
同じ業界人として良い意味で疑問と興味が湧くお店です。少し私なりの解説をして
みたくなりました。
私は一人です。( 素で入ると間が持たない雰囲気 ・・・ )
何故か、“何度か来店経験あり!” という雰囲気で入ってみようと思った私は、
玄関の引戸を開ける時、心の中で “ガラ・ガラ・ガラーッ!いける?” と、
一人コントをやっているような顔つきで入ります。店内には老齢(80歳前後)の
夫婦らしき店の女将さんと旦那さん、そして、見るからに漁師であろうおっちゃん
(お持ち帰りのお客さん)が一人います。さすがに、私の不可思議な雰囲気に
“いらっしゃいませ!” の声はなく、“何か(用事ですか)?” と聞かれます。私は、
“(客ですけど)いけますか?” と素に戻った感じで紳士的にお伺いを立てます。
“ああ、どうぞ!いらっしゃいませ!” と、ようやく客として認めて頂いたようです。
漁師のおっちゃんが私に一礼したのは何故かわかりませんが、とにかく、私は
カウンターの右端に腰を下ろします。
女将さんが、“何します?” と声を掛けてくれたのですが、どこにもメニュー
らしきものがありません。カウンターの上に 「 玉子焼 20ヶ 600円 」 という
張り紙が一枚あるだけです。私は一瞬、“何します?” が、空耳?気のせい?
と思いつつ、“すんませ~ん、玉子焼一つ!” と注文してみます。すると、
女将さんが “ハイ!ちょっと待ってくださいね” と漁師のおっちゃんの方を横目で
見てから、私に “おっちゃんの分が焼けたら、やりますから待ってくださいね” と
伝えるように目配せします。私は “ああ、いいですよ(待っています)。” と
返答しながら、やっぱり空耳だったんだと安堵します。
女将さんがメインで焼いています。銅打ち(手打ちの銅版)かどうか見分けられない
ほど年季が入った鉄板(20ヶ用)が3枚あります。一気に60ヶ(3人前)まで焼ける
ようです。通常、明石焼の場合、下駄に移しますので、10ヶ用の鉄板(2×5)を使う
ことが多いのですが、このお店では、たこ焼仕様の20ヶ用の鉄板(4×5)を使って
います。女将さんは強火で焼いています。旦那さんが参戦します。旦那さんは右手
が少し不自由なようで、左手に箸を持ち女将さんとの間合いを取りながら手伝って
います。一方、女将さんは両手に箸(串や千枚通しではなく年季の入った菜箸)を
持ってフルスロットルな動きを見せます。その動きはとても80歳前後の老人には
見えず、“ひょ・ひょっとして ・・・” 某CMの唐沢寿明のように、突然、特殊メイクの
マスクを取るのでは?と、私は想像し、ちょっとだけハラハラします ・・・ ???
冗談はさておき、
この二人、只者ではありません。そろそろ焼けて仕上がろうかという段階で
旦那さんはヒラリと後ろを向きお持ち帰りの箱と出汁(ビニール袋に詰めています)
を用意します。ほどなく、女将さんが一枚目の鉄板から下駄(オリジナルの杉の木)
に乗せ替えます。その下駄から持ち帰り用のPPに旦那さんが入れ替えます。
手が不自由なのですが、なかなか素早くこなします。そして、残り二枚も旦那さんの
様子を見てタイミングを計りながら女将さんが手渡します。何と息の合ったコンビ
でしょうか。街場のちょっとしたステーキハウスのパフォーマンスより洗練された感
がお二人にはあります。
さて、次は私の一枚を焼くようです。
鉄板が馴染んでいる(鉄板の温度と油が良い状態)からでしょうか、先ほどより
早く仕上がりました。もちろん、女将さんの手は “フルスロットル” です。旦那さんが
お出汁をぐい飲み(出汁用銚子)に入れて温めています。女将さんが下駄に
乗せたのとほぼ同時にお出汁も仕上がります。( やっぱ、このコンビは絶妙! )
さあ、いただきましょう!
一人前、20ヶあります。
まず、そのまんまで一つ口へ ・・・ 熱くて ハフ~ ハフ~ します。( 私は、猫舌です )
柔らかくて箸で持つのが大変です。食感も柔らかいとしか言いようがありません。
生地の柔らかさは、もちろん、※ じん粉 が入っているのと、常に空気が入るように
休みなく転がしながら焼いている女将さんの技が成し得たものでしょう。
小さめですが、しっかり地の明石タコも入っていて、味は非常に上品です。
二つ目 ・・・ おっと、出汁の味をみていませんでした。出汁のあたりをみます。
香り的には普通の和だしで、高級(高い)材料は使っていないことはわかりますが、
これまた、有り得ないような “上品で柔らかい味の吸い地” です。私には理解不能。
失礼な言い方ですが、何故、この店で ・・・ この地域で ・・・ この味なのか ・・・
どう味わってもファーストフードの域ではありません。お店自体や立地は別として、
ある意味、和食の世界です。なぜここまで ・・・ 本当にとても疑問です!
( 評価も高く流行っているようなので、私がコメントすべきではないのですが ・・・ )
そのままで5~6個、お出汁につけて3~4個食べたでしょうか。
( 出汁にネギなどの薬味はありません )シンプルで上品でとても美味しいです。
残り10個ほどになった時、私は物足りなさを感じ、小さい頃からの自分の好きな
食べ方で食べてみます。おもむろに玉子焼にソースを刷毛で塗ります。
( ソースは薄めの醤油味に近いものですが用意されています )
その塗った玉子焼を出汁に浸して食べます。この食べ方は邪道かもしれません。
しかし、私は濃い目の甘酸っぱいソースと鰹の香りがする出汁がミックスコラボ
した中に、タコ入りの玉子焼を浮かべて啜るのが好きです。三位一体となった
味わいが何ともいえない至福の時間を感じさせてくれます。
その食べ方で戴くと、不味くはないのですが、すごくバランスが悪く感じます。
もう少し、ソースが甘いとか、出汁が濃いとか、ネギなどのトッピングがあるとか ・・・
一度、出汁を飲み干します。新しい出汁を徳利から注ぎ、カスターセットにある
七味を入れて試してみます。これもイマイチです。やはり、完成された玉子焼と
お出汁の味を消してしまうようなアレンジは、どうやらこのお店ではNGのようです。
数日前、複合ショッピングセンター内のフードコートで食べた たこ焼を思い出します。
たこ焼自体はお世辞にも美味しいと言えるものではありません。しかし、そこに
それぞれ特に美味しいわけでもないソース・マヨネーズ・青ねぎをトッピングする
ことで意外な美人に生まれ変わります。TV番組の「ビフォーアフター」 のようです。
“なんと ・・・” “まるで ・・・” の連発です。脅威のミックスコラボ成功です。業界人の
私としても “目から鱗” です。どこに行っても “おいしい発見” はあるものです。
( 私の勝手な創造や意見はここまでにしておきます。長々申し訳ありません。 )
「美味しい」 や 「旨い」 の定義は難しいものです。( 人は勝手なものです! )
やはり、どういったお客様のどういう動機のどのシチュエーションで提供する
料理(商品)なのかを常にイメージして味を完成させなければ価値満足は上がり
ません。逆に云えば、その想像力と味に対する繊細さを立体的に捉えられる
お客様と料理人はスゴイと云えます。人の “価値満足” は常に高まり、業界には
常に期待が掛かりキリが無いようです。業界人としては、厳しい時代なのかも
しれません。それだけに、前向きに捉えて楽しい気持ちで美味しさを提供する
必要がより高まったとも云えます。結果、チャンスの多い時代かもしれません。
さあ、“ほんまにおいしい!” を発見してみましょう!
業界の皆さん、“ほんまにおいしい!” の研究・開発をお願いします。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
【 ※ じん粉 】 の解説です。
じん粉(浮き粉)とは小麦粉のでんぷんの事で、ふわふわ感を出すために重要な
役割を果たします。小麦粉でんぷんを精製したものを本浮粉と呼び、さつまいも
でんぷんで代用した物を浮粉と呼びます。じん粉の主な特徴は加熱しても固まらない
事で、和菓子などにも使用されています。片栗粉(じゃがいものでんぷん)やコーン
スターチ(とうもろこしのでんぷん)も同じでんぷんですが、明石焼きには向かず、
じん粉で作る場合と比べると嫌な臭いがでて水になじみにくく焼き加減にムラが
できて味もかなり落ちます。また、じん粉はたこ焼きやお好み焼きを作る際にも
使用されます。片栗粉は本来はユリ科に属するカタクリの根から取ったでんぷんの
事ですが、本物はわずかしか生産されず高価なため、今ではじゃがいものでんぷん
が片栗粉として販売されています。( 明石魚の棚 「白川南店」 さんのHPより )
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~