新・臨床検査の光と影

人の命を測る臨床検査に光を!

医療崩壊「かわら版」(17)

2009-08-23 10:06:29 | 医師不足の深層探究

 Photo_5 医師定員増員・削減・また増員

   くるくる変わる医療政策

  医療の進歩や人口動態のシミュレーションを見誤った医療政策の失敗が、今日の深刻な医師不足、医療崩壊を招いています。

 時系列的に医師需給計画の変遷を検証してみましょう。

 1948年;医科大・医学部、46校、定員2820

 58年;国保法施行、医療受給が増大

 70年;85年までに人口10万人対150人に、医学部定員増員

 73年;一県一医大構想(田中内閣)、医科大、医学部80校、定員8360人に

 86年;医師数抑制政策、95年めどに、10%削減

 94年;遅くても2015年までに、引き続き10%削減

 97年;さらに削減閣議決定(橋本内閣)

 98年;遅くとも2020年までに、未達成の削減を達成

 04年;医師臨床研修制度開始、大学からの派遣医師、貸し剥しが始まる。

 07年;暫定的に08年度、189人定員増

 08年;09年度から、8486人定員増を閣議決定(福田内閣) 

 医療現場に医師が増えるのは、速くても8年後、その間、いくつの病院が姿を消すことでしょうか?

  この国の医師の不足数は14万人とも、20万人ともいわれています。

 



医療崩壊「かわら版」(16)

2009-08-21 17:04:12 | 医師不足の深層探究

Photo_3   診療科別、医師数の変遷

  小児科、産婦人科医の激減

  勤務医不足、残った医師に過重負担・退職・フリーになって派遣会社登録・あるいは開業、そして診療科閉鎖・無床化、入院・外来患者激減、赤字拡大、統合・廃院・・・・まさしく医療崩壊シンドローム

 とくに、救急医療の現状は、どこもかしこも限界に達しています。

 ここに、激務を忌避する麻酔科勤務医の離脱が拍車をかけます。

            産婦人科医は絶滅危惧種?

 さらに、2004年の調査で、産婦人科に占める女医は21.8%、しかも25歳~29歳が65.9%。

 小児科に占める女医は31.9%、25歳~29歳は実に、49.2%です。

 これは一体何を示しているのか、意欲に燃えた働き盛りの年代ではありますが、女性としての一生の中で、出産や育児の最適年代でもあります。

 女医さんたちの退職・離職の理由、出産が70%、育児が39%、「悩み」はと聞けば、「仕事と家事の両立不可能」をあげています。これをみても、ここに重大な社会的要因が、職場復帰の障害になっていることがわかります。

 ある産院の院長が「絶滅危惧種」と嘆いたことも、深刻な事態を現しています。

 

 


医療崩壊「かわら版」(15)

2009-08-18 11:00:26 | 医師不足の深層探究

Photo 県知事、議会で4度びの土下座

    県立5医療センター無床化

 北海道に次ぐ広大な面積を有する岩手県の、地域住民の医療の在り方を巡って事件は起きました。

  岩手県事業会計の累積赤字は膨らむ一方。

 診療費未収金は182億2.800億円。金額べースで、入院患者の実に82%。

 3月6日の岩手県定例議会本会議場。

 県内5医療センターの入院ベッドを完全に廃止したい県側は代りに、センターと基幹病院を結ぶ送迎バス購入費、2.300万円の予算承認を求めました。

 反発した議会側は修正案を提出、ただちに可決。

 なんとしても県立病院の無床化を達成したい達増知事は、赤絨毯の議場に降りて、額をこすりつけ、前代未聞の土下座すること四度に及びました。

 「礼をつくした」「みっともない」「恥かしい」県民の意見も割れています。

 それにしても、公的病院の赤字って、一体なんでしょうか?

 誰がここまで追い込んだのでしょうか?

 「病院が、40キロも遠くなりました」と、老患者の嘆きが聞こえてきました。

 


医療崩壊「かわら版」(14)

2009-07-31 12:08:27 | 医師不足の深層探究

Photo医師養成を「けちる」医療政策
    圧倒的に少ない国費

 医師養成に、莫大な費用をかけているのは、第1位アメリカ、続いて韓国。

 すべて国費を投入している国は、デンマークを筆頭に、スイス・フィンランド・ギリシャ・オーストラリア・アイスランド等。

 これらに比較して、我が国は、OECD加盟上位28カ国中、第24位。しかも、公費負担に対して、私費負担割合が遥かに多い。

 その公費負担、最も少ない韓国に次いで,尻から第2位、なんともお寒い現状です。

  おりしも、今日付けの朝日新聞第1面に、親の年収で大学進学率が左右される!見出しで、年収1.200万円以上では62%、200万円以下では28%。

 医学部では入学金や学費は比較にならないほど、そのうえ私学では、公立の1.5倍~2倍。

 政治家の世襲とは言いませんが、また、医者がすべて裕福とは思いません。しかし、医家の子女が家業を継ぐ割合が多いのは頷けます。

 いずれにしても、文科省も厚労省も、誤った将来見込みの付けの始末に、重い責任を負わなければなりません。

 せめて「経済大国」を自認するなら、公費負担もOECDの水準並みにするべきではないでしょうか。 

 


医療崩壊「かわら版」(13)

2009-07-25 10:37:34 | 医師不足の深層探究

Dsc00885医療は世界一、医療現場は火の車
 
 連加盟国中、63位の日本

  WHOが、「日本の医療は世界一」のお墨付きを公表しました。米国は37位でした。

 そのアメリカ、100病床当たりの医師数の国際比較で、世界一の66.8人、イギリス49.7人、フランス43.5人、ドイツ37.6人にも抜かれて、1位の米国比で、日本は僅かに13.7人、5分の1でしかありません。

 日本の医療現場は、「火の車」になって、世界一の医療を支えていることになります。

 国連加盟197国中63位、先進国に比較して、医師不足は実に14万人とも、20万人とも言われています。

 同時に、満足度は第6位とか、果たしてそうでしょうか?

 「医師が増えると、医療費が高騰する」これが、永年続いた政府の基本政策でした。

 今まさに、この付けが、如実に回ってきたのです。

 あわてて、医師養成定員の増に着手しましたが、定員増の効果が表れるのは、最低でも10年から15年先の話しです。

 ここでも厚労省のシュミレーションの失敗は明らかです。