本件労働審問の申立人の不利益とは?
本件労働審問の焦点は、O臨床検査技師に対するS会病院の不当労働行為をやめさせること、申立人の被った不利益をすみやかに回復させ、本職に復帰させることにあります。
具体的には、O臨床検査技師の本来業務を奪い、「採血専門」の部署への配置替えを撤回し、本来業務に復帰させることです。
採血という行為は、医師法や保健師・助産師・看護師法はもとより、臨床検査技師の関連法規によって、「…血液を検体とする検査において、特に高い精度と迅速な処理が要求されるため臨床検査技師が採血及び検査を一貫して行うこ必要がある場合に備えたものであり、採血行為それ自体は臨床検査技師の本来業務でないことであり…」と医務局医事課長通知に明記されています。
事務長兼務の検査科長は、部下である検査技師の関係法規も不知なのです。
たとえて言えば、外科医から「メス」を奪ったも同然です。
しかも、S病院管理者は、30年間も精勤したO検査技師に「認識が不足している」「モチベーションが低い」「ヒヤリハットが多い」などのレッテルを貼って配置換えしたのです。
検査技師の重いミスのなかで、検査のための採血は、患者に対して最も危険の多い仕事の一つであり、レッテルを張った検査技師に相応しいかどうか、S病院側の行為は明らかに矛盾し、理論的にも破たんしています。
神経刺傷や血腫による医療事故の裁判も少なくありません。
また、今日の臨床検査は、がんや難病や感染症などの検査領域、特に異質タンパク質の検出や遺伝子検査は目まぐるしいほどの日進月歩の世界です。
検査を奪われた臨床検査技師は、違法な配置転換が長引けば長引くほど後れを取り、取り返しのつかない不利益をこうむります。
女性検査技師の出産や育休を終えて職場復帰するのに難渋したり、断念するのもこのためです。
そして医療技術者としての誇りも奪うものです。