新・臨床検査の光と影

人の命を測る臨床検査に光を!

国立・労災病院を「脱独法化」へ?

2012-04-03 09:57:08 | ニュース

1_3   国立・労災病院を「脱独法化」へ

 厚労省労省は30日、国立病院と労災病院の新しい法人制度に関する検討会の初会合を開き、▼社会や医療ニーズに対応した病院運営▼法人の経営努力を促進する財政運営▼目標・評価▼国民の目線での情報公開・発進の在り方、等をめぐって年内にも報告書をまとめる方針です。

 このなかで、独法国立病院機構の矢崎理事長は「年間利益をどう使うかを政府が判断する独法の制度は、医療になじまない」と指摘。「民営化が実現すれば、中長期的な投資が可能になり、医療サービスの質が向上する」との期待感を示しました。

 利益追求を優先した医療、儲け主義医療にならないか、厳しい目線で報告書の成り行きを注目しています。

 儲かる科への投資はしても、金がかかり、稼ぎの薄い科の切り捨て、差額ベッドの増床や保険外医療の併用、低所得層患者の足が遠退く、そんな病院にならなきゃいいですが、・・・。


県立病院、ブランチ打ち切り

2006-10-29 13:56:56 | ニュース

Dsc01277    【契約解消

 患者さんの苦痛の原因をつきとめ、「ひとの命を測る」とまで云われている臨床検査、とりわけ検体検査(血液や尿など)を、外部の民間請負業者にすべて外注してしまうブランチラボ、しかも、病院検査技師の意見も、現場の希望も無視した県病院局の、一方的なトップダウンで始まった群馬県立がんセンター病院検査室。

 「必ず儲かる」「医療専門職の人減らしができる」「面倒な人事管理が不用になる」など様々な利点を挙げて強行導入をして5年が経過しました。

 ところが、木に竹をつなぐような、検査機器とシステムの導入によって、機器の不具合、故障の続発、あってはならない検査ミスの頻発に、現場は塗炭の苦しみに喘いできました。

 「3年経ったら成果を検証する」「3年後には、導入したシステムを見直す」、と約束をしていた病院局。

 5年たっても成果が上がるどころか、機器の不具合によって、連日連夜の残業、ついに県職員組合も「人権問題だ」というところまで発展。

 群馬県議会医療福祉常任委員会でも、毎回の重要議題となり、検査機器とシステムの不具合に質問が集中、その度に、県当局はおろか、がんセンター当局までもが、「間もなく修復できる、と業者が言っています」を繰り返すばかり。

 請負業者側も、ついには機器の不具合を見放すような事態にまで立ち至りました。

 それでも病院局の担当官は「検査技師の能力が低いからだ」「検査室の赤字は、検査技師の働きが悪いからだ」と恫喝、すべての責任を検査技師になすりつけてきました。

 検査の現場では、「検体検査財務諸表」と云ってもいい、詳細な経営状態と、何年分もの克明な経理状況を把握していて、その原因を白日の下に明らかにしていました。

 県当局が「赤字」と云っているのは、外部業者に請負契約をしたことで、厚生労働省の認めている「検体検査管理加算」が、支払基金に請求できなくなった医療費の額と、見事に一致していることが判明したのです。

 病院直営の検査室で検体検査をすることにより、「赤字は解消できる」ことまで立証しました。

 県議会側の委員も、臨床検査のなんたるかを学習し、情報の収集と、別途方式を模索する努力のなかで、「機器のレンタル・リース方式」を提案するまでになりました。

 【地元の「上毛新聞」報道】 (クリックして拡大してみてください)

 9月末で、外部請負業者との契約打ち切り、来年4月の新装開院に向けて、新方式のシステム導入と検査機器の選択にはいることとなり、長く苦しい呪縛から開放されることになりました。

 県民税の無駄遣いもなくなります。

 変則運営の請負検査室(ブランチラボ)も解消します。

 なにしろ、この変則検査室は、法律(労基法)によって、病院内に存在しながら、病院の「指揮・命令」ができない職場になっているのです。

 さてこれからが、医療専門技術者としての本領発揮、文字通り、病院自前の検査室で、真に「患者さんの命守る、患者さんのための臨床検査」が取戻せることになることでしょう。

 

 


文科省と九州大学が控訴

2006-10-17 15:38:08 | ニュース

 一審で敗訴した国(文部科学省)と九州大学が、予想通り控訴期限の今日、東京高等裁判所に控訴してきました。

 これから1年半から2年は、かかると思われます。

 柴田洋一先生は淡々と「頑張ります」と、仰っていました。

 控訴趣意書の中味が分かり次第、お知らせするつもりです。

 関心をもって注目してください。


判決文が抉る官僚の虚偽証言

2006-10-10 12:03:54 | ニュース

Photo_3      学医学部附属病院長会議 第1回議事録・九州大学医学部附属病院と明記され、しかも三百数十ページに及ぶ、これが、存在を否定したはずの実物の表紙です。

    (写真を左クリックしてください)

 この議事録と「提言(別冊)」、確かに化石も所有しておりますし、しかも早い段階で入手しております。

 第1回から第6回に至る膨大な議事録の随所に、文部官僚の仕切り、示唆、誘導が積極的におこなわれ、主導的役割を果たした証拠が鮮明になり、議事進行が図られた様子が手に取るように窺えます。

 病院長達が、お上のご意向に逆らうこともできなかったとすれば、自主性や主体性のもとに作られた「提言」とは、とても云えないのではないでしょうか。

  こうして検体検査、とりわけ患者さんの命を左右する緊急性のある輸血検査や、疾病の最終診断とも云うべき病理検査を全面的に民間会社に外注化し、あろうことか、臨衛技法違反の生理検査の外注化や、交替制勤務で24時間対応を指導(労働省)しておきながら、労基法違反の当直制の導入を盛り込むなど、「提言」策定に向かう過程が克明に記録されています。

 日本弁護士会も、「提言」に盛り込まれた医療合理化案に、反対の声明を発しております。

 判決後、文科省医学教育課は「・・・提言に文科省が関与していないという立場は変わらない」と東京新聞の取材に語っていますが、三人の裁判官が、文科省介入の実態を、判決文のなかで克明に記載しています。

 それは、サスペンスドラマのシーンを髣髴とさせるものがあります。

 ・・・・「A課長補佐の方から具体的に強い提言をしなければいけないということで、また提案がございます」(略)「既にこの報告書フォーマットも大体でき上がりつつあるわけですが、実は実弾が込められていない。(略)まだまだ全体にわたって実弾が入っていませんので、それをこれから込めていただかなければならなというのと、あと、まだ少し検討が足りない部分について記載させていただきました」・・・・(略)

 ・・・・以上によれば、特にサブワーキンググループ会議後半以降、文部科学省が会議を主導していったこと、同省の意図が本件提言の内容に一定程度反映されていることが認められる。(T室長は、「A試案」には、A補佐自身の考えは原則的に入っておらず、委員の意見をまとめただけであり、本件提言は同省の意向とは別のものである旨証言するが、前記認定した事実に照らし、到底採用できない。)

 また、M課長の通知等も踏まえると、同省ないし医学教育課が、本件提言の実施に強い意欲を有していたことが認められる。

・・・このことに加え、前記認定のとおり同省は本件答弁書や国会質疑等において、本件提言には同省の影響はない旨の立場を取っていたこと等を踏まえると、同省ないし医学教育課としては、本件議事録が公にされ、本提言の策定過程が明らかにされることは避けたいとの意向を有していたことが窺われる。

 以上が、判決文にかかれた、化石が感じたなりの核心部分であり、情報公開法で、国側が敗訴した初の訴訟であったことを、強く記憶に留めておきたいと思います。

 


判決に対する報道各社の記事

2006-10-07 11:48:21 | ニュース

 国立大学附属病院・独立行政法人移行議事録開示訴訟の判決に対する、翌日3日付、報道各社の記事から、重要視した特徴的な部分を抜粋してみます。

 各紙を総合してみますと、世界に勇名を馳せた日本の官僚達が、いかにその「牙城」を守ることに徹しているか、心根がうかがえます。

 【毎日新聞】 裁判長の「各病院の担当者(病院長)ではなく、国が指導した会議だと明らかになるのを避けたい意向がうかがえる」とした点を批判したことを伝えています。

 核心部分をついています。

 さらに、附属病院長会議・ワーキンググループの議事録の開示を求めたのに対して、文部科学省が民主党議員への政府答弁書で、議事録の存在を否定したため、作成・保管していた九州大学は「正式な議事録ではない」と判断し、文書不在を理由に一旦は非開示としたが、一部の報道を受けて政府答弁書が撤回されたことで、「ようやく開示した」経過を詳細に報じたのは、毎日新聞でした。

 【東京新聞】 文部科学省の不当な関与を隠すために「不存在」と虚偽の回答をしたことに至った経緯を述べていて、裁判長の「議事録を見ると、文科省の意図が提言に一定程度反映され、開示を避けたいと考えていたことがうかがわれる」と、認定した経過を伝えていて、さらに「隠したとする証拠はないものの、不存在という誤りの回答を是正せずに放置した重大な過失がある」と判断した、と報じています。

 また、議事録の存在が報道され、原告柴田洋一氏の元へ議事録が突然送付されたが、不開示決定を取り消した2ヵ月後だったこと。

 さらに国側が、「職員の記憶から議事録が欠落していた」との主張に裁判長は「到底信用できない」と退け、政府は野党の質問趣意書に「関与していない。議事録も存在していない。」と答弁していたが、後に議事録の存在がバレて、文部科学省の事務次官ら数人の処分が行われたことまで詳細に報道していました。

 それでも、記者のイタビューに文科省医学教育課は「判決内容を精査中で、提言に関与してないという立場は変わらない」と話していることを伝えています。

 核心部分の報道では、各社に先んじて、優れている突っ込み取材と感じました。

 【産経新聞】 公開請求のあった議事録は九州大が管理し、文科省が管轄していたこと。

 文科省の「議事録の存在を忘れていた」との主張に対して、裁判長は「忘れていたとの主張は信用できず、情報公開法に基づく法的義務を尽くさなかったのは重大な過失で違法」と判断したことを伝えています。

 さらに、「意図的に隠した」との原告の主張に対しては「文科省の指示で九州大が意図的に議事録を隠したと認めることはできない」とのくだりも報じていました。

 【朝日新聞】 国と事務局だった九州大に「重大な過失があった」ことを報道。

 【読売新聞】 【日本経済新聞】 ともに「故意に議事録を隠したとまでは認められないが、議事録があるのは明らかなのに、漫然と放置した重大な過失がある」ことを報じていました。

 【裁判の根源的な意味】

 この裁判の根源的な要因は、患者さんの治療に必要な、「輸血」という重大な治療行為に際して、「輸血」に伴うリスクを最小限に抑えるべき医学的検査を、病院自ら行うことを放棄して、民間業者に全面的に委託してしまう提言に至る、病院長会議の議事録、その公開請求拒否に端を発していたことは云うまでもありません。