ブランチラボの偽装請負(3)
国立病院機構傘下のU国立病院が、ブランチラボになることを巡って、同機構の広報誌NHOに、「ブランチラボは、かくのごとく儲かる」とばかり、捏造した礼賛記事を掲載し、各地から、その算出根拠について問い合わせが殺到しましたが、改竄偽造した記事であったために、一切まともな回答ができない事態を招いたことは、さきにも薬事日報社のMANで紹介したとおりです。
国立S病院においても、ブランチラボの全容が、診療会議に諮られることもなく、臨床検査部長すら知らない間に、トップダウンでブランチ契約がなされ、検査部長が辞表を提出する事態も招いています。
そして第3弾は、国立病院機構の中でも有数なT国立病院のブランチラボ問題です。
いずれも、現地取材を行うか、関係者のインタビューで取材したものです。
なかでも、T国立病院のブランチ化問題は、極めつけ!と云っても過言でないほど、珍妙なものであり、これが、かっての国家公務員の仕業かと、呆れるほど杜撰なものでした。
病院幹部がすすめようとしているブランチ化計画に、不安を抱く検査技師が、直接ぶつけた質疑応答で交わされた、珍問答の数々を、次回に紹介してみます。
ブランチラボの偽装請負(2)
ブランチラボは、検体検査の請負業務です。
ブランチラボは、衛生検査所が請負人となって、病院が行ってきた検体検査の業務を、衛生検査所自身の業務として、衛生検査所の自己の責任において完成させることをいいます。
ですから、請負った衛生検査所が、 ?検査に必要な人員を雇い、 ?衛生検査所が雇った人に業務上の指揮命令をし、 ?施設の管理をなし、 ?就業規則を定め、 ?衛生検査所が、必要な検査機器、設備、機材、材料を調達し、 ?請負契約の相手方、すなわち、発注主である病院から、独立して業務を遂行しなくてはなりません。
病院が安易にブランチラボに飛びつくのは、人も機械も、すべて衛生検査所の負担で賄うことから、「安上がり」で、初期投資が要らない、人事管理の面倒がない、などを理由としています。
当然、発注主の病院としてもリスクを伴います。
?診療報酬で決められた、検体検査管理加算の請求ができなくなります。
?病院として、ブランチラボに働く労働者に、業務上の指揮をしたり、命令したりすることもできなくなります。
?施設管理規則上の適用は可能であっても、請負施設であるブランチラボの管理・運営権はありません。
これらの条件(基準)を、全く知らない病院経営者も、たくさんいることを、いくつも経験し、知っています。
性質の悪いのは、知っていながら、堂々と無視する経営者や管理者が、同じように、たくさんいるということです。
ここに、偽装や脱法・不法・違法行為、あるいは書類の改ざん行為等の「誤魔化し」の温床があるのです。
参考:労働者派遣所業と請負により行われる事業との区分に関する基準
ブランチラボの偽装請負(1)
ブランチラボ契約を破棄して、自主運営の検体検査室を再構築する活発な動きが見られる一方、依然として、安易にブランチラボの宣伝に飛びつく病院検査室も、いまだ跡を絶ちません。
何度も繰り返し、ブランチラボの弊害や欠点を書き連ねてきましたが、なんと云っても、ブランチラボ最大の欠陥は、「業務処理請負契約方式」であると云うことです。
ブランチラボは、病院の検体検査業務を、衛生検査センターなどに請負せることです。
請負業務は、請負業者が雇用主となって検査技師を雇用し、検査技師は、雇用主の指揮命令下で、検体検査業務に従事することになります。
一方に、人材派遣業があります。この法制定に際して、「請負業務」と「人材派遣」を明確に区別する必要が生じてきました
人材派遣では、雇用主が検査技師を雇用することは請負と同様ですが、派遣業者は、病院検査室に検査技師を派遣し、検体検査に関する業務を行わせる場合、派遣された検査技師への指揮命令権は病院側に移ることになります。
人の命を測る検体検査業務、病院長も検査課長も検査技師長も、ブランチラボの検査技師に対し、検体検査に関する指揮も命令もできない点が違うのです。
「病院検査室にある検体検査室に勤務している検査技師に、病院が指揮も命令もできないなんて、患者のためにならない、そんな馬鹿な話しはない!」
請負と人材派遣の、都合のいいところだけ抜き取って、「患者のため」をかざして、勝手気ままに検査技師を使いたい。そんな意識が見え見えです。
ここに偽装請負の温床があり、堂々と違法行為が罷り通る結果となります。
ブランチラボが請負業務であるとを定めた法は、患者のためにないことは、その通りかもしれませんが、人材派遣法も含めて、違法労働行為を規制する「職業安定法」なのです。
次回は、故意に偽装された労働者供給事業について、「もってこい!」と言われた法律の条文を、話題として提供します。
医学検査とは、こうありたい!いささかでも参考になれば幸いです。
無資格従事者は、雇用弱者で被害者?(3)
医師法第17条「医師でなければ医業をしてはいけない」
ならば医業とはなにか?。文字通り、医師の業です。
医師の業とはなにか?といえば、広義には診療であり、狭義では疾病の診察、治療の他、疾病の軽減、予防、助産、整形治療、避妊、試験(検査)などであり、医師の医学的知識と技術をもってするのでなければ、人体に危険を及ぼし、又は及ぼす一切の行為をいいます。
そして、業とはなにか?。一定の行為を反復継続することをいい、たまたま数回の行為があっても、その間に反復継続する意思がなければ業ではなく、反対に、一回の行為でも繰り返す意志があれば業となります。
実際には報酬を受ける場合が多いですが、報酬を受けたり、営利の目的を必要としません。
卑近な例では、家庭内で医学的素人が血圧や体温を測る、傷口の消毒をする、子供に解熱剤や下剤を飲ませる、これらはすべて医術(医療行為)を行うのは自由ではありますが、反復継続しなければ業とはならないことをもって、許される範囲といえます。
それでは、医師以外で、これら医療行為を業として行っている保健師、助産師、看護師はどうか。
これは、保助看法第31条「看護師でなければ、第5条に規定する業をしてはならない。但し、医師法又は歯科医師の規定に基づいてなす場合は、この限りではない。
2、保助看は前項の規定かかわらず、第5条に規定する業をなすことができる。
この条件として、実体上、医師の指示によってなされ、指示とは、診療の補助行為の範囲となります。
このように、診療の補助行為は、ある資格のある者と、全くの無資格者との間には、差のあることは当然です。
「無資格者は、やってはいけないと、何処にも書いてないでないか」は通らない理屈で、法律以前の問題であり、無資格者に、人体を検体とする生理学的試験(検査)を指示したり、強要することは、医師といえども許されることではありません。
したがって、退職した臨床検査技師の代わりに、無資格者を雇用して、生理学的検査を担当させることは、明らかに医師法に違反し、保助看法にも違反します。
無資格者は実行行為者として、法律違反に問われます。
業務を強要した医師(管理者)も、共犯です。
雇用情勢に厳しい昨今です。折角、職にありついた無資格者は違法であることも知らされないか、知っていても断れない雇用弱者です。
ましてや、ERやICUで働く無資格者は、特別な医療の専門教育を受けていませんし、孤独です。
法律違反は犯罪です。どうか、犯罪者をつくることは、即刻やめて頂きたいと願うものです。
今日は、75歳、最後の日です。