新・臨床検査の光と影

人の命を測る臨床検査に光を!

採血事故で賠償判決

2006-09-18 10:57:33 | 臨床検査技師の業務

 全国に展開する医療機関をはじめ検診事業団・検診センター等をあわせれば、およそ1万ヶ所、一日10件の採血が行われたとしても、その採血件数は10万回にも達します。

 都内のある公的病院では、毎日700~900件の検体検査のための採血があると聞いています。

 あってはならない事故ですが、むしろ、ないほうが不思議なくらい、昼夜の別なくこれだけの採血行為が行われています。

 【1例】次の例は既に損害保険会社等の刷り物などで周知の事実ですが、臨床検査技師が関わった事故の、福岡地裁の裁判です。

 1998年、体調不良を訴えて元美容師(男性・45歳)が、北九州のK病院に検査入院し、臨床検査技師が、左腕から血液採取した際に、神経を損傷し、職業上、櫛を持つて髪を整える左手に力が入らなくなり、指の感覚も低下してしまった、ということで、病院とこの検査技師に対して、約4,650万円の損害賠償を求める民亊請求の裁判をおこしました

 病院側は「不可抗力の要素があった」と減額を求めましたが、なにしろこの美容師は、今でいうところのカリスマ美容師とかで、「20年間に顧客の指名は数千名に達している」と主張。

 裁判長は「神経を損傷する可能性は常にあるが、損傷を回避するための注意義務を怠った」と認定し、さらに「美容師の仕事に復帰するのは困難で、仕事は相当に制限される」とし、65歳までの一定の労働能力を喪失し、その逸失利益を約3,800万円として、慰謝料の支払を命じたものです。

 【2例】2005年の11月にも、大阪地裁堺支部でも原告勝訴の判決があります。

 堺市内の主婦が同市内R病院の看護師から採血を受けた際に、右手の神経を損傷し、身体障害者2級の認定を受ける後遺症に至った例で、病院側は「後遺症は心因性の痛みに起因する可能性が高い」として、所謂「素因論」を展開していますが、全く認められていません。

 【3例】その前年には、埼玉県上尾市の男性(36歳)が、勤務先での健康診断で、県保健衛生事業団(宇都宮)から派遣された看護師(52歳)から採血を受けた際に、誤って神経障害を受けたと、事業団を相手に、約360万円の損害賠償の訴えを起しています。

 訴状では「針を刺してはいけない個所に刺し、注射器に加える力が強すぎたために内出血し、左腕付近の神経を損傷した」といっています。

 事業団では、「事実関係の争いはないが、賠償額について、示談解決に向かって話し合っている」としています。

 否認、謝罪、和解、示談、調停、裁判など、どこかに重大な分岐点がある筈です。

 「明日は我が身」という諺もあります。

 再発防止は緊急で重要な課題です。

 次回、「法律ド素人」の化石の考えるところを述べてみたいと思います。


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6 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
ブログの内容についてではなくてまことに恐縮です... (Tillich)
2006-09-18 10:27:37
ブログの内容についてではなくてまことに恐縮ですが、このブログについている「カウンター」の貼り付け方を教えていただけないでしょうか。急ぎません。
返信する
 カウンターの貼り付け方を教えて欲しいとのこと。 (化石より)
2006-09-18 11:02:11
 カウンターの貼り付け方を教えて欲しいとのこと。
 カウンターホスチィングを右クリックして、リンクを開けてみてください。
 うまくいかなかったら、またコメントをください。
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私のほうのブログに、先生のブログを訪問し (taizann)
2006-09-19 11:55:20
私のほうのブログに、先生のブログを訪問し
考えさせられたとのコメントがありました。
多分みなさん、読んでくれていると思います。
また訪問しようと思ったとも・・・
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 taizannさん、有難う。年寄りには、何よりの励み... (化石より)
2006-09-19 15:24:31
 taizannさん、有難う。年寄りには、何よりの励みになります。
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横浜H病院で採血時激痛。即激痛を訴えたにも関わら... (神経ふれあい)
2011-05-04 14:17:41
横浜H病院で採血時激痛。即激痛を訴えたにも関わらず反応鈍く採血終了。病院は「湿布して具合見て下さい。痛みとれない場合は連絡下さい」と湿布薬を提供。後日、痛みが引かない為、病院訪問するも「一切責任はない。他の病院で速やかに診察する等、なぜしなかった・・因果関係が明確になれば賠償保険で払ってやろう・・・」との回答。開いた口が塞がらない。他の病院で診察、結果、「左左腕皮神経障害。当分、通院治療を要す」との診断書。H病院の対応は医療事故を垣間見た思い。しかし、病院は事務員が対応するだけでは、医療機関としての存在の自己否定としか思えない。
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採血時に神経を刺された様で、他の病院の診断結果... (神経ふれあい)
2011-05-04 16:45:04
採血時に神経を刺された様で、他の病院の診断結果は「左前腕皮神経障害」で低周波マイナス治療。刺された肘から手首に採血時に激痛を感じたが、最近は手首が痛い。この類の傷害で、後遺症はあるのでしょうか?時間が経過すれば治癒するのか?不安。
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