新・臨床検査の光と影

人の命を測る臨床検査に光を!

「非開示は不当」の判決でる

2006-10-03 11:07:47 | ニュース

 臨床検査に大きく関わる判決公判の結果をお伝えします。

            原告勝訴の判決が下されました。

 国立大学附属病院長会議が2002年にまとめたとされる、国大附属病院合理化案を巡る情報公開請求で、実際に「議事録」が存在しているのに、不存在として開示しなかったのは不当として、元東大病院輸血管理部長柴田洋一教授が、議事録を編纂した事務局である九州大学①および国②を相手に、120万円の賠償請求訴訟をおこした判決公判が、2日午後1時10分から開廷されました。

  東京地裁 荒井勉裁判長は、両被告に重大な過失があったことを認め、慰謝料40万円の支払を命ずる判決を言い渡しました。

   原告側代理人の弁護士によると、情報公開を巡る不手際で自治体に賠償を命ずる判決は過去にもありますが、国が敗訴したのは初めての、画期的判決となります。

 判決文のなかで、病院長会議について「文部科学省が主導し、同省の意図が反映された」と明確に指摘しています。

 おりしも、本日、札幌市において、大学輸血部ー日本輸血・細胞治療学会・秋期シンポジウムが開催されていることは、前回お伝えしましたが、次の2つの演題は、とくに注目されます。

  1、「医学部における輸血教育について」

     文部科学省 高等教育局 医学教育課 HM係官

  2、「卒後初期研修における輸血教育について」

     厚生労働省 医薬食品局 血液対策課 HT係官

 他4名、いずれも、いかに輸血業務・管理体制・教育を強化充実させるかの講演です。

 病院長会議の議事録・提言にあったように、輸血関連検査を外部委託し、輸血専任医を排除するが如き無責任な提言と、今回の裁判の意味するところとの乖離を、どのように埋め、取り作ろうとするのか、避けては通れないだけに、興味津々の演題ではあります。

 判決後、柴田洋一先生は、「正直、ホッとしました、しかし、国はおそらく2週間以内に控訴するのではないでしょうか、なにしろ初めての国敗訴の判決ですからね」といって、いっそう引き締めを強めておられました。

 官僚達が権力を維持し、権限を行使し続け、生きていく上で「国は、けっして瑕疵を犯さない」ことが、守り通さなければならない鉄則だからです。その上、役人としての面子もありますし、裁判費用は、国民の税金で賄えるので使い放題です。

 記者会見やら報道各社との対応やらで、柴田先生は相当な疲労のなか、夜遅く帰宅されたようです。

 提言にある大学病院中検いっそうの合理化、それによる公的病院や一般病院検査室に及ぼす影響、今後、人の命を測る検体検査を、どう充実させ向上させなければならないか、課題は残りますが、輸血業務の重要性に一石を投じたこの裁判は、その後の「輸血」の在り方に、少なからざる影響を与えたことは事実です

 しかし、化石は「先生、おめでとうございます」とは、最後まで云えませんでした。

  原告勝利の判決を聞いて、普段は120~70の化石の血圧が、一気に160~90に上がってしまいました。

 判決文は40ページに及んでいます。

 化石なりに、落ち着いて、よくよく精査しつつ、これからの展開を注目し続けます。

 書き込み、コメント等頂ければ、有り難く思います。

 柴田先生にも、必ずお伝えします。

 


臨床検査に関わる判決公判

2006-10-01 10:40:16 | ニュース

 突然ですが、明日2日(月)午後1時10分、東京地方裁判所712法廷において、臨床検査に関係深い裁判の判決が言い渡されますので、速報します。

 国家賠償請求事件(「国立大学附属病院の医療提供機能強化を目指したマネージメント改革について(提言)」の審議にかかる議事録の情報開示請求に関する)判決公判です。

 原告は、元東京大学医学部附属病院輸血管理部部長教授・柴田洋一先生。当時、日本輸血学会副会長の要職にもありましたが、提訴とともに、原告は東大を辞職されています。

 被告は、国立大学法人九州大学①、及び、国②。

 病院の中検施設、とくに検査部、輸血部、病理部等について、極端な外部委託の徹底と専任医師をなくしてしまう等の提言を、病院長会議なるところで提案され、その議事録を情報開示にもとづいて請求したところ、時の文部大臣はじめ文部官僚たちは、国会委員会質問の中においても「その様な議事録は存在しない」と、嘘の答弁に終始しました。

 実は、A4・三百数十ページ、厚さ20ミリにも及ぶ議事録のあることが判明し、虚偽答弁等の責任で文部官僚が処分を受ける事態に至っています。

 その後、議事録を編集した九州大学から突然、原告の下に、開示には全く触れないまま、存在しないはずの議事録が送られてきました。

 化石のような田舎暮らしの老人の手元にも、現物があり、各地の講演にも持参してご覧に入れています。

 なぜ議事録を入手できたかは別にして、提言の中間発表から重大な疑義のあることを痛感し、黙って看過すことができなかったからです。

 輸血関連業務を外部業者に委託すること。

 疾病の最終診断となる病理部門をはじめ、検体検査を全面的に外注すること。

 生理検査までも派遣労働で賄うことや、当直制で対応するなど、派遣法、臨衛技法、労基法違反など、かなり杜撰な提言に対して、緊急に異議を唱える必要があったからで、直ちに、業界新聞等を通じて糾弾したところ、最終提言では多少の修正がなされていました。

 また、緊急手術の輸血が、外注検査でいいのか、外科医や麻酔医はどう考えるのか、重大な疑問が残りました。

 裁判の争点は次の通りです。

 1、情報公開法の性質と国家賠償訴訟の成否。

 2、議事録の存在を知りながら、意図的に不存在の対応をしたこと。

 3、会議を指導・誘導した国(文科省)の責任は。

 4、損害額(精神的苦痛)など。

 ジャーナリストの桜井よし子氏は、明らかに文部官僚の誘導による提言であったことを、週間新潮の特集で、「秘密議事録が暴く、文科省大学支配の実態」で看破なきまでに明らかにしました。 

  輸血業務の強化、輸血専門技師認定制度、輸血専門医制、輸血管理加算導入など、その後の展開は、提言とは全く逆な進展をたどっています。

 途中、裁判長から和解の提案がありましたが、詳細な裁判記録を残す必要から、原告側は裁判での結審をのぞみました。

   判決については、続報する予定です。

 ちなみに、判決の翌日は札幌で、日本輸血・細胞治療学会・秋季シンポジウムが開催され、文科省・厚労省各係官による、輸血管理業務強化に関する講演が企画されています。

 裁判の傍聴は自由です