臨床検査に大きく関わる判決公判の結果をお伝えします。
原告勝訴の判決が下されました。
国立大学附属病院長会議が2002年にまとめたとされる、国大附属病院合理化案を巡る情報公開請求で、実際に「議事録」が存在しているのに、不存在として開示しなかったのは不当として、元東大病院輸血管理部長柴田洋一教授が、議事録を編纂した事務局である九州大学①および国②を相手に、120万円の賠償請求訴訟をおこした判決公判が、2日午後1時10分から開廷されました。
東京地裁 荒井勉裁判長は、両被告に重大な過失があったことを認め、慰謝料40万円の支払を命ずる判決を言い渡しました。
原告側代理人の弁護士によると、情報公開を巡る不手際で自治体に賠償を命ずる判決は過去にもありますが、国が敗訴したのは初めての、画期的判決となります。
判決文のなかで、病院長会議について「文部科学省が主導し、同省の意図が反映された」と明確に指摘しています。
おりしも、本日、札幌市において、大学輸血部ー日本輸血・細胞治療学会・秋期シンポジウムが開催されていることは、前回お伝えしましたが、次の2つの演題は、とくに注目されます。
1、「医学部における輸血教育について」
文部科学省 高等教育局 医学教育課 HM係官
2、「卒後初期研修における輸血教育について」
厚生労働省 医薬食品局 血液対策課 HT係官
他4名、いずれも、いかに輸血業務・管理体制・教育を強化充実させるかの講演です。
病院長会議の議事録・提言にあったように、輸血関連検査を外部委託し、輸血専任医を排除するが如き無責任な提言と、今回の裁判の意味するところとの乖離を、どのように埋め、取り作ろうとするのか、避けては通れないだけに、興味津々の演題ではあります。
判決後、柴田洋一先生は、「正直、ホッとしました、しかし、国はおそらく2週間以内に控訴するのではないでしょうか、なにしろ初めての国敗訴の判決ですからね」といって、いっそう引き締めを強めておられました。
官僚達が権力を維持し、権限を行使し続け、生きていく上で「国は、けっして瑕疵を犯さない」ことが、守り通さなければならない鉄則だからです。その上、役人としての面子もありますし、裁判費用は、国民の税金で賄えるので使い放題です。
記者会見やら報道各社との対応やらで、柴田先生は相当な疲労のなか、夜遅く帰宅されたようです。
提言にある大学病院中検いっそうの合理化、それによる公的病院や一般病院検査室に及ぼす影響、今後、人の命を測る検体検査を、どう充実させ向上させなければならないか、課題は残りますが、輸血業務の重要性に一石を投じたこの裁判は、その後の「輸血」の在り方に、少なからざる影響を与えたことは事実です。
しかし、化石は「先生、おめでとうございます」とは、最後まで云えませんでした。
原告勝利の判決を聞いて、普段は120~70の化石の血圧が、一気に160~90に上がってしまいました。
判決文は40ページに及んでいます。
化石なりに、落ち着いて、よくよく精査しつつ、これからの展開を注目し続けます。
書き込み、コメント等頂ければ、有り難く思います。
柴田先生にも、必ずお伝えします。