以下は財団法人日本賃貸住宅管理協会が発行するメールマガジンから引用させていただきました。
ニュースやインターネット等で大きく採り上げられていますので皆様ご存知と思いますが、昨日、「消費者契約法により更新料は無効」との判決が京都地裁でありました。
取り急ぎ、この判決をどのように受け止めたらよいかについて、以下、事情に詳しい方のコメントを紹介します。
<A氏コメント>
地裁レベルでは更新料を認める判決が繰り返されていましたが、今回は認めない判決があった。それだけのことです。
同じような訴訟でも主張の仕方で判決は異なりますし、同種の主張がなされても同じ裁判所で異なる判決が出ます。司法は案件を個別に判断します。原状回復の訴訟などは良い例でしょう。
「貸主が勝ったから今後は通常損耗負担特約は有効だ」とか「借主が勝ったからもう特約は無効だ」などと、皆様は考えていないはずです。
更新料訴訟の判例は、まだ確立されているとはいえない状況にあります。
更新料の今後の流れを左右する判決として注目すべきは、今年8月27日に大阪高裁の判決が予定されている訴訟です(昨年1月30日、京都地裁では貸主が勝訴)。
この大阪高裁の訴訟は貸主側・借主側とも弁護団を組織し、裁判官の求めに応じて双方が著名な学者等の意見書を提出していますので、多くの論点について考察した判決が出るでしょう。
最終的には最高裁まで争われるとも言われており、8月27日を以て更新料の判例が確立されることにはならないかもしれませんが、当面の流れを大きく左右するのはこの判決といえるでしょう。
<参考:以下、昨年1月30日のメールマガジン>---
京都地裁で争われていた更新料の是非をめぐる訴訟は本日、貸主側が勝訴しました(借主側の請求は棄却)。
以下に判決要旨を紹介します。
(なお、借主側は控訴する考えのようです)
<概要、昨年10月12日のメールマガジンより>
賃貸借契約の更新時に更新料を課すのは消費者契約法に違反するとして、京都市の男性が貸主に更新料等61万5千円の返還を求めた訴訟(4月13日)は、簡易裁判所から地方裁判所に移管された。
この男性は賃料4万5千円で平成12年8月に賃貸借契約を締結して京都市のマンションに入居。契約書の約定に従って毎年10万円の更新料を支払っていたが、部屋ごとに更新料の金額が違うことを知って18年に更新料の支払いを拒否。
京都の弁護士会が開設した「更新料110番」に相談をして、今回の訴訟に至ったとのこと。
<判決要旨>
第1 結論・・・請求棄却
第2 事案の概要
被告との間で賃貸借契約を締結し、被告の所有する物件 に居住していた原告が、更新料支払いの約定が消費者契約法10条又は民法90条に反して無効であると主張して、既払いの更新料の返還等を求めた事案
第3 判決理由の要旨
1 更新料の法的性質について
(1)更新拒絶権放棄の対価(紛争解決金)・賃借権強化の対価の性質について
ア 更新料が授受され合意更新が行われる場合、賃貸人は、更新拒絶の通知をしないで、契約を更新するのであるから、更新料は、更新拒絶権放棄の対価の性質を有する。
また、法定更新の場合(更新後は、期間の定めのない賃貸借となり、賃貸人からいつでも解約申し入れが可能となる。)とは異なり、合意更新により更新後も期間の定めのある賃貸借となる場合には、賃借人は、期間満了まで明渡しを求められることがない上、賃貸人が将来、更新を拒絶した場合の正当事由の存否の判断にあたり、従前の更新料の授受が考慮されるものと考えられるから、更新料は、賃借権強化の性質を有する。
イ もっとも、常に更新拒絶や解約申入れの正当事由があると認められるものではなく、特に、本件のように専ら賃貸目的で建築された居住用物件の賃貸借契約においては、正当事由が認められる場合は多くはないと考えられるし、本件賃貸借契約の期間は1年間と比較的短期間であり賃借権が強化される程度は限られたものであるから、本件更新料の有する、更新拒絶権放棄の対価・賃借権強化の対価と しての性質は希薄である。
(2)賃料の補充の性質について
ア 上記のとおり、本件更新料の有する、更新拒絶権放棄の対価及び賃借権強化の対価として性質は希薄であるにもかかわらず、原告と被告は、更新料支払の約定のある本件賃貸借契約を締結している。
このような契約当事者の意思を合理的に解釈すると、賃貸人は、1年目は、礼金と家賃を加算した金額の売り上げを、2年目以降は、更新料と家賃を加算した金額の売り上げを期待しているものと考えられ、他方、賃借人は、更新料を含む経済的な出損を比較検討した上で、物件を選択しているとみることができる。そして、原告又は被告が、これと異なる意思を有していたことを認めるに足りる証拠はない。
イ このように、本件更新料は、本件物件の賃貸借に伴い約束された経済的な出損であり、本件約定は、1年間の賃料の一部を更新時に支払うこと(いわば賃料の前払い)を取り決めたものであるというべきである。
2 本件約定が民法90条により無効といえるか
本件更新料は、その金額、契約期間や月払いの賃料の金額に照らし、直ちに相当性を欠くとまではいえないから、本件約定が民法90条により無効であるということはできない。
3 本件約定が、消費者契約法10条により無効といえるか
(1)消費者契約法10条前段の要件(「民法、商法その他の法律の公の秩序に関しない規定の適用による場合に比し、消費者の義務を加重する消費者契約の条項」)を満たすか。
本件更新料が、主として賃料の補充(賃料の前払い)としての性質を有していることからすると、本件約定は、「賃料は、建物については毎月末に支払わなければならない」と定める民法614条本文と比べ、賃借人の義務を加重しているものと考えられるから、本件約定は、上記要件を満たす。
(2)消費者契約法10条後段の要件(「民法第1条第2項に規定する基本原則に反して消費者の利益を一方的に害するもの」)を満たすか。
・本件更新料の金額は、契約期間や賃料の月額に照らし、過大なものではないこと
・本件更新料約定の内容は明確である上、その存在及び更新料の金額について原告は説明を受けていることからすると、本件約定が原告に不測の損害、不利益をもたらすものではないこと等を併せ考慮すると、本件約定が上記要件を満たすもの とはいえない。
(3)結論
以上より、本件約定が消費者契約法10条により無効であるということはできない。
以上
<参考>-----
・民法90条(公序良俗)
公の秩序又は善良の風俗に反する事項を目的とする法律行為は、無効とする。
・更新料問題を考える会のホームページはこちら
(アクセスが集中し、つながりにくくなっているようです)
http://www.koushinryou.net/
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以上、財団法人日本賃貸住宅管理協会が発行するメールマガジン(会員専用)から、参考にさせていただきました。