過日同じ町内に住む知人宅に届け物があって、徒歩で2kmばかりのそのお宅を訪ねた。町内といっても、7,000世帯、15,000人を擁する大きな町である。広い団地の、似たような住宅で埋め尽くされた中心部に、そのお宅はある。
暫く訪問していなかったせいか、大通りから曲がる角をひとつ間違え、見慣れない住宅街の中に迷い込んでしまった。
スマホの地図アプリの出番と思ったが、数100メートルの圏内に在る目的地の方向は分かっているので、当てずっぽうで起伏の多い団地内に深く入り込んだ。
見慣れない家並みの路を歩くうち、自分の居る位置が不確かになり、目標地点との相対的な位置感覚も怪しくなって来た。
丁度自宅のドアの鍵を掛け、路に出ようとしていたご婦人に、訪問先近くの医院名を告げ、其処に行く順路をお訊ねした。
医院は既に廃業していて駐車場になっているということで、その方はご親切にも「これから行く方向だから」と、先導してくださることになった。
危うく、見知らぬ住宅地の真っ只中で、老人が彷徨う破目に陥るところだった。始めからスマホを使っていれば、人様に迷惑をかけないで済んだのだが・・・幸運にも人様の親切に触れ、立春の寒さにも拘らず心が温まった。
贈り物を届けた後は、来た道でなく、丘をひと越えして橋を渡り、またもうふたつ丘を越して我が家に戻る、遠回り道を歩く気になった。
道案内をして下さったご婦人が、老生の足取りが軽いと褒めてくれたことに気を快くしたに違いない。豚もおだてりゃ木に登る・・・
帰途は迷うことなく、無事帰還した。
既に免許は返納した身だが、車の運転ができていたとしても私たち老人は安心はできない。加齢現象は、あらゆる方面から押し寄せてくる。まったく油断できない。
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