3月22日のエントリー「江戸の地理」で、江戸時代の街並みや地名への関心を述べたら、有り難いことに友人が好適な参考書を紹介してくれた。
人文社の古地図ライブラリー別冊「切絵図・現代図で歩く江戸東京散歩」ISBN978-4-7959-1290-8がそれで、ページの見開きを古地図と現代図で対照させている。そのうえ、江戸に触れるための特選散歩コースの案内が幾つかある。嬉しいことにこの古地図ライブラリー別冊は、「明治大正東京散歩」「戦前昭和東京散歩」「昭和三十年代東京散歩」とシリーズが続く。旧時代の小説を読むときなどこれほど重宝なものもない。
ヨーロッパの都市は、中世、近世の街並みがそのまま現代に遺っていたり復元されていることもあるが、東京という都市は、江戸から現在に至るまで、火災、震災、戦災、都市計画によって比較的短期間にその様相を大きく変えてきた。江戸、明治大正、昭和、戦後と、それぞれの時代の東京が積み重なっている。
東京に限らず、ほとんどの日本の都市がそれに近い特質をもつことは、日本の家屋と都市の構造の災害への脆さ弱さと、急な近代化の果ての歴史的大敗戦に由って来たったもの。その特質に着目すれば、大方の日本の都市というものは、時間軸で立体化することで初めて、その全容を理解できる存在のだろう。
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