砲塔の後ろについている張り出しで、車内空間がつながっているものを
バスル(バッスル)と言います。
元々は19世紀ごろ女性のスカートの中に入れて張り出したヒップラインを作った
ちょうちんの骨組みのような器具のことらしいのですが、砲塔の後ろに突出した感じ
がよく似ているところから着いた名称と思われます。
ドイツの戦車にはバスルが無いものが多く、Ⅳ号戦車の場合にもF型以降から
外つけの雑具箱を設置したので、バスルは無かったと言う事になります。
● バスルの付いたⅣ号?
写真トレスの絵です。解説に、「歩兵とともにソ連の村を攻撃する4号D型戦車」
とあります。Ⅳ号にバスルらしきものがついた写真はこれ以外見たことがありません。
D型はソ連戦以前に生産が終了していますので、この張り出しは後から付けたもの
と考えられます。また、内部で車内とつながっているかどうかは分りません。
想像で描いてみましたが、ひょっとするとフタすらついていないオープントップの
雑具箱かもしれません。
ここで一つ疑問に感じたのは、このようなものが出来るのですから私の考えた
ここに車長を移動させる案があっても良いと思うのです。しかし、それはなされずに
後の型ではバランスウェイトをかねた雑具箱が外付けで設置されています。
その理由として考えられるのが砲塔の強度です。
ご覧のようにⅣ号の砲塔の両側にはドアがありますが、これほど大きな開口部があれば、
砲塔の構造的な強度がかなり落ちる事が予測されます。
雑具箱とキューポラの重量を実質的に支えているのは砲塔背面の湾曲した板
と言う事になります。さらに長砲身の主砲を装備すれば、かなりの応力が働いて
無理がかかることになります。
バスルを設置するために背面版を撤去すれば、後部にも開口部ができて砲塔の
強度は大幅に落ちてしまいます。これがⅣ号にバスルを設置できない理由のようです。
砲塔側面のドアを撤去して開口部を封鎖する事が砲塔の強度を上げることになり、
バスルの設置を可能にすることになるのではないか、と思われます。