工房 十一椿(toi tsubaki)

久留米絣や 大島紬など 着物を使って洋服やバッグなどの製作・販売を行っています。

生徒さんの会話の中で

2012年03月09日 | 日記
生徒さんとの会話の中で

ふっと・・気付かされることがあります。



生徒さん「マチ針ってどうやって刺すんですか?」





私   「・・・・??ん・・??」




生徒さん「どうしても・・生地を持ち上げてしか マチ針をさせないんです。」




あまりにも長い年月 

気にしたことがなかったので

“マチ針”のうちかた?・・考えたことありませんでした。



改めて 自分のマチ針のうち方を意識してみると

左手で生地を押さえ 生地もできるだけ持ち上げないように

マチ針で 生地をすくう・・という感じでしょうか。




その時・・ふと 学生の頃の話しを思い出しました。



それは 先輩が卒業して

私たちが 2年生になってすぐの頃でした。



「○○先輩・・・仕事クビになったらしいよ・・。」


「えぇっ!!なんでっ?」






○○先輩は とても優秀な方で

東京の某有名ブランドのオートクチュールサロンに

就職されました。


それが ほんの数ヶ月足らずで・・??


理由は 仮縫い用・きりびつけの際に

生地を持ち上げて行った・・という理由だったとか・・。




「えぇっ!!それだけで???」



本当のところはわかりません・・でも


今 考えてみれば・・そうかもしれない・・っという気も・・。



なぜなら・・・

私たち 洋裁師の中では


(きりびつけの際)



“生地は 動かすなっ!”



これが・・鉄則だからです。




でも どうしても 手が届かないところや

きりびつけが しにくい部分がでてきますよね。



そんなところは・・どうするの?




それは・・生地は絶対動かさず・・


“自分が 生地の周りを動いて きりびつけをするっ!”


これが・・基本でした・・・




しかし・・


狭い空間の中 そんなことは ほぼ不可能



そこで 私たちは

適度な大きさの板に

生地をのせ 一箇所 きりびつけが終わったら

板を回し そして きりびつけ・・

これを繰り返して作業をすすめていました。





生地を動かすと どうしても 型紙との誤差がでてしまいます。

誤差がでると

お客様の仮縫い後の補正の際に

また 誤差がでてしまうのです。

そして・・最終的に

お客様の体に合わない洋服ができあがってしまうことになります。








なので・・生地を持ち上げること・動かすことは


ご法度!!だったのです。



地方のオーダーサロンでさえ

こうなのですから

世界的有名ブランドの某オートクチュールサロンなら

なおさら・・だったかもしれない・・そういう気もします。






学校では・・そんな細かいところまで

教えません・・・。



卒業した時点で

完璧なんて人は ほとんどいません・・。



すべて・・仕事の中で 経験を積んで学んでいくこと・・。



次世代のために

経験をつませてあげる社会にならないと・・

悲しいですが・・技術者は 減っていく一方ですね。
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