十勝の活性化を考える会

     
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「セーラー服の歌人」 鳥居

2020-04-02 05:00:00 | 投稿

 

 そこは1階にラーメン店が入った、古いアパートでした。
「そうだ、ここだ!」
西東京市にある西武柳沢駅で待ち合わせ、大きな街道沿いを歩いてそのアパートの前まで来ると、彼女はふいに声を上げて立ち止まりました。
その2階にある部屋で小学4年生の時から1年あまり、今はもういない母と2人で暮らしていたといいます。
彼女は「鳥居」と名乗る歌人(短歌、つまりは五・七・五・七・七の三十一の文字数からなる詩を作る人)です。きれいな黒髪で肌はすき通るような白さ。
人をまっすぐに射ぬくような黒い瞳が意思の強さを感じさせます。
いつもセーラー服を着ていて、この日もそうでした。

昔、母と暮らしたという部屋の集合ポストには郵便物が入っていて、今は別の誰かが住んでいるようでした。
鳥居はその部屋に向かって手を合わせ、母の霊をなぐさめるようにしばらく黙とうしました。
それから記憶を確かめるように近所を少し歩きました。
学校帰りによく道草して屋上にのぼったというマンション、緑に囲まれた静かな神社……。
そして、再びアパートの前まで来て、なごり惜しそうに2階の部屋を何度も見上げ、もと来た道を帰ろうとした時。鳥居はすっとしゃがみ込んで地面に短歌を書きつけました。

岩岡千景 株式会社KADOKAWA

§

殺伐とした世のなかで「生きること」を誰にも肯定されないけれど、歌うことで生き延び、ようやくたどり着いたこの世界は・・・・・・また大きく崩れかけようとしている

人々の憤懣や、やるせなさが、いつも「最も弱き者」へしわ寄せされる繰り返しに、最初は小さな声で、やがて人々の魂をえぐる、研ぎ澄まされた歌として、私たちに鋭く問いかけてくる

「十勝の活性化を考える会」会員 K

「セーラー服の歌人」 鳥居

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