■九州の会員から「西日本新聞」の切り抜きが送られてきました。
アイヌ新法を取り巻く問題が、全国に紹介されることは大変意義が深いと思います。
「十勝の活性化を考える会」事務局
西日本新聞 2019.5.12
「アイヌの人々の誇りが尊重される社会を実現するための施策の推進に関する法律(アイヌ施策推進法)」が先月成立した。「蝦夷地」が日本政府に併合され「北海道」と改称されたのは1869年。以降、アイヌ民族を対象とした法律は三つだけだ。99年の「北海道旧土人保護法(旧土法)」、1997年の「アイヌ文化振興法」、そして今回のアイヌ施策推進法である。
なぜアイヌ民族に独自の法律が必要なのか。北海道には「開拓使」が設置され、多くの移民が送り込まれた。アイヌの土地・資源の収奪、生業の破壊、文化の否定などが広がり、日本人移民との間に大きな経済格差やひどい差別が生じた。
当初、「優勝劣敗」の結果と放置した政府も、福祉思想から旧土法を成立させた。しかし、狩猟・漁労民であるアイヌを、農耕化を通して強制同化させる同法は、保護法ではなく差別法であった。
戦後、政府はアイヌの同化は完成し、日本人と同じ福祉対策があれぱ十分とした。しかし、植民地政策の結果の構造的な格差や差別は解消されず、1974年、北海道は独自に「北海道ウタリ福祉対策」を開始した。
---中略---
民族最大の団体である北海道アイヌ協会は、アイヌ施策推進法の成立に「歓迎」と「感謝」の意を表した。22年ぶりの新法である。国立の施設も建設され、交付金も用意される。一定の規制緩和が実現し、施策も全国で展開される。
他方、批判的なアイヌの視点からすれぱ、「先住民族」の言葉はあるが、22年経てもアイヌ民族の権利はどこにもなく、謝罪を含む政府の歴史検証もない。政府施策の根拠法であっても、国際水準の人権法ではない。率直に書けば、今回の法を心底から喜んでいるアイヌはいないだろう。
むしろ危険なことは、日本の市民が、多文化社会に向けアイヌ政策が順調に前進しているという誤ったメッセージを受け取ることだ。改めて、共生社会の実現を、襟を正し批判的に検討したい。
恵泉女学園大教授 上村英明氏
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