明治13年〜18年の5年間にわたり、北海道の石狩・十勝・日高・胆振地方を中心に、空が真っ暗になるほどのバッタの異常発生がありました。
先日、自宅から約20キロ離れた音更町東士幌で、その痕跡を残している“バッタ塚”を見学してきました。異常発生の原因は、河川の氾濫で生じた川原や草原にバッタが卵を産み付け、それが乾燥した気候のため高率でふ化したためで言われています。
農民たちは、焚火や撲滅などで必死に抵抗したがなす術はなく、やがて開拓使や農商務省が動き出しました。このバッタの異常発生が十勝平野への関心や肥沃な原野であることを知らしめ、また、アイヌの出面(アルバイト)にもなり、開拓が進む契機になったそうです。
また現在、エチオピアを中心に世界中でバッタが大量発生し、食糧危機になっていることを国連が警告しています。
「十勝の活性化を考える会」会長
注) バッタの異常発生
アフリカ東部や南西アジアのインド、パキスタンで大量のバッタが農作物などを食い荒らす被害が深刻化している。群れの規模はケニアでは過去70年で最も大きく、エチオピアやソマリアでも過去25年で最大となった。パキスタンでは食料価格の急騰をもたらした。国連は「対応が遅れれば、食糧不足による人道危機をもたらす」と警鐘を鳴らしている。
国連によると、最も被害が深刻なケニアでは1000億~2000億匹のバッタが約2400平方キロメートルの範囲で農作物を襲っているという。全て食い荒らされた場合は8400万人分の食糧が失われることになる。
国連食糧農業機関(FAO)はエチオピアやケニア、ソマリアでは約1200万人が食糧危機の状態にあると指摘。ソマリア政府は2月に非常事態を宣言した。バッタはタンザニアや南スーダンにも飛来。すでに深刻な食糧不足に追い打ちをかけている。
バッタの被害はアフリカ東部から南西アジアにも波及している。FAOによると、パキスタンとインドの国境に近い地域では2019年8月ごろからバッタの大群が砂漠などに飛来した。これらの地域では100億匹ほどが現在もとどまり、小規模な町の空をほぼ覆うほどの群れをなしているという。
パキスタンでは特にトマト、小麦、綿花に壊滅的な被害が出ている。パキスタンのカーン首相は2月、大量のバッタによる被害を踏まえ、農作物や農家の保護に向けた緊急事態の宣言を出した。インド西部グジャラート州では19年12月、クミンシードなどの種子を栽培する農地約1万700ヘクタールが被害を受けた。
バッタの大量発生の要因としては、近年の異常気象が東アフリカの砂漠に大量の雨をもたらし、良好な繁殖環境をつくったことが指摘されている。
FAOパキスタンのシャキール・カーン専門官は「温暖化に伴いバッタの繁殖期間が長くなり、過去にない大きな被害につながった」と分析する。内戦や資金不足で各国政府の駆除対策が著しく不足していたことも背景にある。
バッタは大群で1日150キロメートルほど移動できるとされ、さらに被害地域が広がる可能性がある。ロイター通信によると、他にもサウジアラビアやイラン、イエメンの紅海沿岸でもバッタ襲来のリスクが高まっている。FAOは「6月までにバッタの数が500倍に増える恐れがある」と警告している。
FAOは殺虫剤の散布や食糧支援などの緊急対策のため、必要な資金1億3800万ドル(約150億円)の拠出を各国に呼びかけている。特にアフリカ東部では近年、大雨や干ばつにも見舞われ、不作が続いていた。
今春以降の収穫時期までにバッタによる被害を抑えられなかった場合、多くの餓死者が出る可能性もある。(加藤彰介、ニューデリー=馬場燃)
(出典:2020年3月3日付け日本経済新聞より)
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