
ウィルス禍の最中、旧知のO君と花見酒に興じた。
ぽかぽか陽気の川縁に酒席を設け、呑みかわす昼酒はよく廻る。
川面の光の煌めきや渡る風の梵(そよぎ)に目を細める。
何度も繰り言のように「気持ちいいなぁ」が吐息と共に洩れていた。
つい先ごろ観た「三島由紀夫VS東大全共闘」が俎上に上がり、
O君は「豊饒の海」三部作を朗々と語っていた。
言葉の力が辛うじて残っていた最後の時代だったのかもしれない。
右も左も関係ない真摯な言葉の応酬の中で自然に湧き上がるお互いをリスペクトする心情。
自分の信じたいものしか見ようとしない分断化の時代だからこそ、
観てほしいドキュメンタリー映画だった。
O君との待ち合わせは、お互いの家から等距離の橋のたもと。
お互い自転車愛好家なので咲き始めた桜を愛でながら、
道後温泉方面へ移動した。
私は、今はもうない道後温泉本館近くにあった道後小学校の出身である。
お互い還暦過ぎの爺さんが、懐かしい風景を巡るように温泉街から、
川縁の桜並木を自転車を押しながら歩いた。
しかし、この世界的なウィルス禍の最中、
世界の主要都市がゴーストタウンのように息を顰めているのに、
長閑に春を謳歌する、この日本の風景は何なのだろう?
そういえば、カミュの「ペスト」がAmazonで売れているらしい。
正確な予見で有名な疫学者Larry BrilliantがCOVID19で最大1億6千5百万人程度の人が死ぬだろうと述べている。
もっと徹底的に検査しなければ大量に人が死ぬことになる、というのは他の実績がある疫学者と同じ意見。
経済損失も1〜3兆ドルに上るだろうと述べている。
人口の6割以上が感染(ウィルスに対する免疫を獲得)しないと収束に向かわないと云われる新型ウイルス。
1億3千万の日本だと7千万人の感染と云うことか。
その内、8割が軽症だとしても、残り2割から1割としても700万人が重症化なのだろうか?
アメリカ有数のシンクタンクが日本の死者を13万人と予測していて、驚いた記憶がある。
いやはや何を信じていいのか分からないが、こういう数字が出ていることも忘れないでいよう。
世界中が戦々恐々とウィルス対策を矢継ぎ早に繰り出す現状を見ていると、
(ロックダウンを見越しての生活費としての現金支給や人工呼吸器の量産化、隔離病床の確保、等々)
それに対して安倍政権の旅行券だの和牛券だの商品券支給の発表が、
完全に現状認識から浮いてしまい、狂気さへ感じる。
いろいろな国が現金を配っているのは、お金の保証はするから家から出ないでくれということだと僕は理解していたのですが、
日本の政治家と役所は商品券を配ってみんな街に出てお買い物してウィルスの感染を拡大しようぜというメッセージを発信していて
想像を絶する知能の持ち主だなあと思いました。
何処までも、この人たちは自分たちの利権を最優先に考える。
もちろん、その最右翼が東京オリンピックの開催。
そしてIOCのバッハ会長に足元を見られ、開催延期分の費用を全部日本が負う羽目に。
開催延期が決まった途端、東京都の感染者が急激に増え、なお空き病床が118しかないという恐ろしい数字まで露出。
このウィルス禍の中、目先ばかりの失策を続ける安倍内閣を支持する人が40%以上いるという耳を疑うアンケート結果。
花見酒に興じる阿呆から、こんな言葉を聞きたくないでしょうが、
やっぱり日本だけが、この世界で浮いている。
ぞれは東日本大震災の時も、ずっと感じていたことです。
今回のウィルス禍で、それは余計に鮮明になりました。
もっと云えば、近現代史の本を読み漁った読後感にも共通する、なんとも後味の悪い思いです。
それを内田樹が「日本人の集合的な病」として指摘しています。
僕たち日本人は最悪の場合に備えて準備しておくということが嫌いなのです。
「嫌い」のなのか、「できない」のか知りませんが、これはある種の国民的な「病」だと思います。
戦争や恐慌や自然災害はどんな国にも起こります。
その意味では「よくあること」です。
でも、「危機が高い確率で予測されても何の手立ても講じない国民性格」というのは「よくあること」ではありません。
それは一つ次数の高い危機です。
「リスク」はこちらの意思にかかわりなく外部から到来しますが、
「リスクの到来が予測されているのに何も手立てを講じない」という集合的な無能は日本人が自分で選んだものだからです。
「選んだもの」が言い過ぎなら、「自分に許しているもの」です。
あきれ果てる。
今は何をすべきか、政治家どもはわかっていない。
期待もできない中、我々庶民の自己防疫対策をどうするかが一番だと思う。
2006年にNHKスペシャルで「新型ウィルス」の特集と「感染爆発」のドラマが・・・
2008年には「感染列島」の映画が上映された。
警鐘はそのときにも出ていたのだが、収束を待つだけだったようだ。
閑散とした中での花見、そして友人との会話、よかったですね。
人通りのない道後温泉街も新鮮に映るのは私だけかもしれない。
雨の予報でしたが、幸い持ち堪えて半年分の落ち葉や団栗、枯れ枝を搔き集める大仕事。
3ヶ所の墓所から45ℓのゴミ袋4個を出すことに。
宇和島の開花宣言が早かったので満開の桜墓参を期待していました。
残念。まだほとんど咲いていませんでした。
3番目の画像が岩松川沿いの山桜です。
帰路のバス待ちで宇和島城に登りましたが、こちらも咲いているのは山桜だけでした。
ここのところウィルス禍のせいか、仕事が暇になりました。
松山方面も先日、桜の開花宣言が出て、ピンクの濃い陽光桜や早咲きのソメイヨシノがチラホラ。
道後の旅館で料理人として働いいるO君も暇なようで、
二人で誘い合って飲む機会が多くなりました。
お互い本の虫であることや自転車や美術のことと、話題には事欠きません。
しかし、ここに来て日本のウィルス禍に対する無策ぶりが諸外国と比べて際立ってきました。
自粛要請ばかりで、後は国民の自己責任では何も事が進みません。
月収の8割とか20万とか30万という実効性のある数字を示して国民の生活を守ることから始めないと。
それとPCR検査のハードルが相変わらず高すぎる。
和歌山県方式が、現在の日本における唯一の成功例ですね。
近い将来、確実に起こる爆発的感染に備える医療体制も相変わらず脆弱です。
人工呼吸器は確実に必要になるし、病床の確保が急がれます。
そんな時に旅行券や和牛券の支給ですから、開いた口が塞がらない。
提案した政治家がそれぞれの業界の利権を担っているという分かりやすい構図です(笑)
安倍内閣の危機管理能力は最低。
官僚も公文書改ざんやデータ偽造の忖度したものが出世するという現状ですから。
最悪の内閣が最悪の厄災に対処するというジレンマ。
一日でも早く、安倍内閣に退陣していただき、与野党合同の危機管理体制を確立してほしい。