思いつくまま感じるまま。

身辺雑記です。
何でもありの記録
HN天道(てんとう)

ある男の人生

2008年06月11日 | Weblog
彼が問わず語りに私にした話はこうだ。
彼は同じ病室に住んでいる、というのは彼にとっては病室が住処になっているようなものだからだ。

収入は生活保護費だそうだ。
それ以外の収入はないし貯金もない。
妻子はない、というよりも20年前に離婚して以来ひとり住まいだと言っている。
離婚の主因は勤めていた会社の倒産だといってるが真偽のほどは分からない。

年齢は60歳だといっているが、見た目には80歳近い年齢に見える。
糖尿病を患っていて、毎日インシュリンを打っているし、定時に血糖値を測定している。
足が不自由である。
まだ何とか歩けるそうであるが、よろけて転んで左の肩の骨を折ってしまい、その治療のために入院している、以来車椅子で移動しているという。
本が好きだったが、視力があまりにも弱ってしまい本も読めなくなったといっている。

障害者の認定を受けているといっていた。

アパートにひとり住んでいる。
週に5日間ヘルパーさんが来てあらゆる面倒を見てくれるらしい。
病院に入院するとアパート代以外の生活保護費は全額打ち切られるという。

入院中の費用で一番困るのがレンタルテレビの代金だそうだ。
100円硬貨を入れると2時間備え付けのテレビを見ることが出来る。
先日彼の見舞い客のひとりが2500円分硬貨を入れといてあげるといって硬貨を次々に投入していた。

彼はタバコを吸う。
タバコ代はどこから捻出しているのだろうか分からない。

「私はもひとつ病気を持ってるんです、アルコール依存症なんです」
という。

入院してない時期は生活保護費のうち3万円を酒代に費やしていたという。
大きなビンで置いておくと全部飲むまで止められなくなるそうで、小さな缶で買ってもらうようにヘルパーさんに頼むのだそうです。

前に別の病院にいたときは、友人に頼んでペットボトルの中にお茶と酒を混ぜて持ってきてもらっていたそうです。
いつも赤ら顔をしているわけですが、友人が都合で何日間か来れなくなり、酒が切れてしまった途端に青白い顔になってしまい、アル中が医者にバレてしまったと言ってました。
この病院ではそんなことをするとすぐにバレるので出来ないといってました。

彼は1日中テレビに釘付けになっている。
それ以外のことは殆どしない。

先日は9時の消灯時間のころに看護師が
「今夜はオムツしなくて良いですか」と聞いていた。
時々自覚しないままに漏らすみたいだ。

時々見舞い客が来るが、多分彼の担当になっている何人かのヘルパーさんだ。

彼はまだ頭脳は冴えている。
「おにぎりを一口でも食べたかった」などといって死んでいくようなことはない。
しぶとく生きていくような気がする。
やりたい放題ともいえる。


タバコ

2008年06月11日 | Weblog
タバコ代を1箱1000円程度にしようと画策している国会議員集団があるらしい。
一昨年北欧に行ったとき殆どの国はタバコは1箱1000円以上が相場だったことを覚えている。
所得の60%以上を税金で吸い上げられる国々だが、社会保障が充実徹底しているため老後の不安を抱く人はいないというような話も承ったと記憶している。

taspoカードを作っていないので私は自動販売機で買えない。
先日入院中も最後の日の朝にタバコが切れてしまった。
切れると無性に吸いたくなる。
着替えて病院を抜け出して近所のコンビニで1カートン買ってきた。
20個入り3000円だ。

ところで病院内は一切禁煙だ。
唯一吸える場所は玄関を出たところで、灰皿が2個とパイプ椅子が3脚置いてある。
玄関前だからタクシーが出入りするし、多くの人が出入りする。

そこにタバコをやめる事が出来ない意志薄弱なニコチン中毒者が集まってくる。
入院患者の中でも自由に歩ける人は10人程度が常連である。
中には車椅子を押してやってくる人もいる。
話を交わさないまでも奇妙な連帯感のようなものがある。

タバコの害は明白になっている今日、決してタバコをやめようとしない強い意志の持ち主の集まりかもしれない。