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2011.6.1~。大津波、宮古市、鍬ヶ崎復興計画。陸中宮古への硬派のオマージュ。 藤田幸右(ふじたこうすけ) 管理人

岩手県議会へ陳情 閉伊川水門

2014年11月01日 | 鍬ヶ崎の防潮堤を考える会

資 料

以下は「鍬ヶ崎の防潮堤を考える会」が、10/14、岩手県議会宛に提出した「閉伊川水門についての」陳情書である。先き、9/20、には同様に「鍬ヶ崎の防潮堤についての」陳情書を提出している。いずれも県議会9月定例会向け─


 ☆

(閉伊川水門についての陳情書)

岩手県議会議長  千葉 伝 様

 平成26年10月14日

 陳情書

  岩手県議会に「岩手県は宮古市閉伊川の水門建設計画について地区住民に十分な説明を行う事」の決議を陳情いたします。


趣旨

  岩手県は宮古市と共催で平成26年8月6日に「閉伊川水門」の現地説明会を行った。これは、先きに当「鍬ヶ崎の防潮堤を考える会」(準備会)が宮古市議会に陳情した「整備計画の詳細な説明を求める決議」が6月定例会で可決されたのを受けてこの日開催されたもので市役所ホールに宮古市民40人ほどが出席した。しかし主催者の「始めに工事ありき」の姿勢が前面に出て説明会の準備不足や質問への理解不足も重なり意味のある説明会とはならなかった。

 「(復興の)どういう計画が地元に望ましいか十分に話し合いながら進めることが大切だ」(安倍総理大臣)という政府全体の現在の流れや「話し合って(防潮堤の)計画を変更する事はあり得る」(達増知事)と断言した岩手県知事自らの精神に沿っているものとは到底思えなかった。「閉伊川水門について岩手県は十分な説明を宮古地区住民に行うよう」そして、真剣に住民の意見に耳を傾けるよう、県議会においても議論を尽くし表題の決議を行っていただきたい。


 理由

 上記8月6日の現地説明会の質疑応答のエッセンスを述べて陳情の理由にしたいと思います。


 (1)閉伊川水門の経過

  3年近く前の2012年の始めに水門問題は宮古市議会でとりあげられ、直接市民集会ももたれた。しかしそれ以来市民に対する工事設計等の経過説明は一切なくこの日の説明会になったものである。3年近く前「水門」は「堤防かさあげ」との比較で決まっただけであって、その後の具体的設計計画など詳しい説明は当然行なわれるべきものであった。しかし当日まで行われて来なかった。


 (2)白紙的変更

  この2年以上の空白の期間に、右岸藤原側の地質調査が不十分で設計変更が行われ、予算も当初から40億円、30%以上も増加、更に平成27年度完成予定が2年遅れの29年度になった。説明会では、イメージ図と根拠のない積算の結果オーライ的説明に納得は得られず、これほどの変更は、「堤防かさ上げ」の復活も視野に、事業自体の白紙撤回、再検討を求める意見が多数をしめた。「堤防」に比べて建設費が安いからといわれた水門事業であったがこれから経費がどのくらいかかるかは計り知れない。


 (3)水門の開閉はだれが?

  会場からの質問が集中したのは「水門を誰がどのタイミングで閉めるのか」の問題であった。当初説明では市内消防団が遠隔操作で開閉するという事であったが納得は得られず、これから開閉の専門委員会を立ち上げて全面的に検討することになった。閉伊川に係留する漁船の平時の運航や有事の安全避難は見えていない。事実、いまだに地元漁業者の賛同は得られていない。


 (4)水門の強度不足

  空白の2年の間に、船舶の航路のために水門そのものの大きな設計変更があった事も忘れてはならない。航路の変更のために設計上今度は強度に大きな弱さが生じたと言われている。陸上に建造される10.4mの防潮堤と、左右のバランスの悪い水門の高さ10.4mが同じ強度であるとはいえない。合わせて、この巨大水門の津波越流による浸水や水門決壊による市中被害のシミュレーションさえ出来ていないという杜撰さであった。


 (5)前例のない「航路付き防災」水門

  岩手県は閉伊川の「航路付き防災水門」は県内初と言っているが、実際は国内にこのような「航路付き」「津波防災用」の「二級河川水門」はない。徹底調査して内外の前例を市民に示すべきだ。「航路付き」「津波防災用」「二級河川水門」の少なくともこの三要素の安全検証が示されるべきである。自然環境も含めそのように複雑に要素の絡み合う閉伊川水門建設自体が大きな疑問である。進行が拙速すぎると宮古市民に印象づけた説明会であった。


 (6)コンクリートが問題。水門デザイン

  水門が都心にコンクリートの汚い景観を作るという批判があって岩手県はコンビュータの絵を何枚かつくって来た。会場では水門自体の是非が熱く焦点になっており、外観デザインについて出席者は関心を向ける余裕はなかった。デザインがコンクリートから離れていないからでもある。


 (7)急ぐ、仮締切工事の中止

  左岸の「仮締め切り等の仮設工事=仮締切工事」がはじまっている。専門用語で、しかも「仮」のように言うが本格工事である事に変わりがない。説明会では「直ちに工事を中止するべきである」の声があがったが当然である。ここまで述べてきたように独断専行、不確定要素、説明不足、が多すぎた。遅かれ早かれ住民投票等可否の正道に戻る事案である。今この時点でこれ以上の行き過ぎがあってはならないから、工事は直ちに中止するべきである。


 (8)百年の大計

  2~3年ぶりに説明会は行われたが、地元民に正面から語っていないという岩手県に対する不信感は修正がきかないところまできている。県庁だけが理解していないようであるが地元にとっては子々孫々の数百年の大計である。説明で適不適を言うだけではなく巾広くしっかり地元住民の要望・意見を取り入れる必要がある。地元委員会なり、諮問組織がなければ身動きがとれない事案となっている。


 (9)準備に10年の覚悟

  2時間かそこらの説明会で毎回追われるように表面の理解を求める岩手県人らしくない官僚の考え方そのものが時代遅れなのだ。宮沢賢治的県民性からどんどん離れている。地元民と膝を交えて準備に少なくとも10年はかかる覚悟が必要なのではないか。年度会計動機の工事事業者やメーカーの主導による表面的小手先の説明は止めなければならない。内容がなく国の予算の都合や外部業者の都合を表に立てて地域に理解を迫ってくるのは驚きである。


 (10)今、水門に市民の理解はない

  先きに水門の開閉について述べたが宮古市民の本当に分かっていない事はこの水門の動きそのものからである。市民が水門事業からはね去っているのはそもそも遮断トラップの動き一つ分からないからである。トラップという言葉さえ分からない。少なくとも航路部、非航路部連動のゲート開閉装置付き詳細アナログ模型を造って、長く、少なくとも一年や二年や三年、復興庁、岩手県庁、宮古市役所の玄関ロビーに展示しなければ国民、県民、市民の納得は得られないだろう。


 (11)説明会のプログラムを市民に再提出するべきである

  説明会でよく分かった事はこの巨大建造物の完成後の維持管理費メンテナンス料は岩手県が賄う、という事くらいで、そもそもの目的である津波防災に対する効果や安心、安全については不透明であった。諮問委員会や、地区委員会等地元市民の意見を吸い上げるシステムを含めて、説明会のプログラムを再構築するべきである。

 

以上


 

資 料(2)

 以下は「鍬ヶ崎防潮堤についての」陳情書 ─

 

 (鍬ヶ崎防潮堤についての陳情書)

岩手県議会議長  千葉 伝 様

 平成26年9月20日

 陳情書

 

 岩手県議会に「岩手県は宮古市鍬ヶ崎の防潮堤計画について地区住民に十分な説明を行う事」の決議を陳情いたします。

 

趣旨

 

 岩手県は宮古市と共催で平成25年11月22日に現地説明会を行い初めて直立式防潮堤の図面を示したがその場で理解を得られたといえなかった。しかし、その後一年になろうとしている今現在も積極的に追加説明を行う様子がなく、この現地大規模工事の地元住民への説明責任を果たさないまま工事を強行しようとしているとしか思えない状態です。「(復興の)どういう計画が地元に望ましいか十分に話し合いながら進めることが大切だ」(安倍総理大臣)という現在の流れに反しているとしか思えません。「宮古市鍬ヶ崎防潮堤について岩手県は十分な説明会を地区住民に対して行うよう」そして真剣に住民の意見に耳を傾けるよう県議会での議論と決議を行っていただきたい。

 

理由

 

(1)岩手県は平成25年11月22日の説明会で当直立式(逆T字型)の図面と宮古市日立浜の船揚場の前出し図面を示して説明したが、時間や資料に限りがあり、出席した70名ほどの市民(ほとんどが鍬ヶ崎の地区住民・地元漁師)の理解を得られたとはいえなかった。

 

 (2)私たちの調べでは、25年11月22日までは岩手県から地元への直立式(逆T字型)防潮堤の設計図等の発表はなく、したがってその説明もなく、その後においてさえただの1度の追加説明というものはなかった。住民はそのような状態であるが宮古市議会議員、宮古市職員等、市政リーダーすらも説明を受けていない。

 

 (3)現在時点の鍬ヶ崎防潮堤の説明といえば、依然として計画の初期段階の説明で、防潮堤の10.4メートルという高さや建設位置図(線引き)にかぎられている。直立式(逆T字型)については、繰り返しますが昨年11月22日にA4の貧しい紙一枚の説明で終わっている。

 

 (4)直立式(逆T字型)の防潮堤は今次震災前の防潮堤と明らかに異なり、近隣集落でこれまで実績のない構造である。この構造での効果の検証、安全性の検証結果も説明されていない。平成26年5月には現地海底地盤調査で作業員の死亡事故を起こすなど設計未熟、環境調査不備のままである。岩手県はただただ工事着工を急いでおり地元住民には不満、不安が蔓延し、ある日こつ然と不認知の防潮堤が出現する事を恐れている。

 

 (5)やむにやまれず宮古市鍬ヶ崎地区の有志によって本年春から当「鍬ヶ崎の防潮堤を考える会」が発足し鍬ヶ崎の防潮堤、閉伊川水門について宮古市議会への陳情や自主的勉強会を行っている。勉強会については7月27日第一回を12名参加で発足、第二回は8月17日35名の参加、ただ今第三回を100名規模で計画している。

  なお、宮古市議会や、宮古市への要望等の証として別紙宮古市議会への陳情書を参考までに添付します。

 

 (6)宮古市や鍬ヶ崎地元地区へのこのような経過で本当に岩手県は説明責任は果たしているといえるのでしょうか? 岩手県はなぜ拙速に防潮堤建設を急ぐのでしょうか?

  防潮堤に賛成の人もいます、反対の人もいますが、どちらにせよ住民にとっては深刻な問題です。くわしい説明なしに意見がまとまる事はないと思われます。主催者の説明責任は意見集約の前提です。説明責任を回避しようとする岩手県の横暴を指摘できるのはまず岩手県議会の総意です。審議の件よろしくお願い申し上げます。

 

 

 ●添付資料:宮古市議会への陳情書

 

 以上  

 

 

 

 

 

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