月のひびき (徳正寺だより)

“いま”出遇えた一瞬をパチリ
それは仏さまとの日暮らし…

ひとりじゃなかった・・・のはなし

2010年04月16日 23時59分40秒 | ふうわりふわり(坊守日記)
今日は16日の常例法座。
外は4月半ばだというのに冷たい雨が降っていました。

10時開座・・・あれ?どなたもお参りに来られません・・・
もう少し待ってみましょう・・・5分、10分、15分・・・
どなたもお参りに来られません・・・

まあ、遅れてお参りされるかもしれないし、おつとめを始めましょう。

今日はご院さんもご法事に行かれたので、わたし一人のおつとめです。
いつものように『正信偈』をよみ始めました。
前拝のガラス障子は開きません・・・

  みなさん、どうされたのかなあ。
  今日は冷たい雨でさむいからかなあ。
  お参り0人ははじめてだなあ。
  わたしひとりかあ。

なんてことを、思いながらの読経です。
ゆっくりとおつとめをしている間に、余間にお預かりしているたっちゃんのご遺影が目に止まりました。
なつかしいたっちゃんの顔。
常例法座にもよくお参りしてくださっていました。

ふと、思いました。

  ひとりでおつとめしているようだけれども、ひとりじゃなかった。
  有縁無縁の仏さま方々が、わたしといっしょにお参りしてくださっているのですね。
 
これまで、どれだけ大勢の方がこの本堂でお参りされたことでしょう。
そうして、このお念仏のおみのりをつないでくださったのですね。
わたしのこの声も、つながっていくのですね。この先ずっと・・・。

おかげで大切なことを身をもって感じさせていただきました。


でも、やっぱり皆さんといっしょに味わいたいですね。
どうぞ、お参りください。
常例法座は毎月16日朝10時からおつとめいたします。


悲哉問答

2010年04月16日 22時58分34秒 | 仏々相念(住職日記)
もうぅぅぅぅぅ・・・

ほっぺたを膨らませながらも嬉しそうにやってきました。
右手にはかわいい春の花々を持っています。

「おぅ! お帰り! 今日は可愛い花持っていいね! 道草せずにその可愛いお花をナンマンちゃんにお供えしてあげてよ!」
「いや!」・・・聞きません、それどころか、始まります!

「もう、なんで雨が降るのに車洗いよるん?ねえ、なんで・・・?」
「Yちゃんだって汚れた服着るの嫌やろ? 雨でも洗濯するやろ? 車も一緒よ!」
「汚れた服でもいいもん!」
「ウソ言え!!!」

ああだ、こうだ続きます・・・
いろんな事を話しながらニコニコの窓を触ったり、ワイパー触ったりジッとしていません。
おもむろにドアを開けたかと思うと、
「わぁ~、いい匂い! これ何のにおい?」
「それはナンマンちゃんの匂いだよ、いい匂いでしょ!」
それからナンマンちゃんの匂いはお香の匂いであることを話していました。

すると、
「お母さんは、ここの匂いが嫌いなんだって!」
「えっ、ここの匂いってどこ?」
指を指したのは本堂でした・・・
「そうか・・・Yちゃんのお母さんは本堂の匂いが嫌いなのか・・・おっちゃんは大好きだけどなぁ!」
辛いというよりもの凄く寂しい思いがしました。

「Yちゃんは、どうなん? 本堂の香りが嫌い?」
彼女は、今までと違う私の顔に敏感に反応していました。
まずかったのかなぁと幼心にも感じさせるような私の愚かさでありました。
「私はどっちでもいい! おっちゃんの味方してあげてもいいし、お母さんの味方してあげてもいい! 多分、お母さんかな・・・」

「そうか・・・」

暫くして「じゃ、おっちゃん帰るね! バイバイ」
「おぅ、気を付けてお帰りよ! またね・・・」
初めて自分から帰ることを告げ、どことなくつまらなさ気に帰ってしまった。

お母さんの口から「本堂の匂いが嫌い」と言わしめる今の私の有様を慚愧した。
「本堂の匂い」と言いながら、その言葉は僧侶に向けられた言葉ではないのか・・・
私の有様によって、こんな優しく温かな仏さまを否定されると申し訳がない・・・

幼き頃より本堂の薫りに育てられ、母のお線香の匂いがしみ込んだショウルに包まれた何とも言えない温もり・・・
みんなみんな崩れそうになるほど重たく感じた言葉でした・・・

でもこの有様が私なのです・・・どこまでもこのまま・・・
人にどうこう言われようとも、私は本堂の匂いが大好きです。
醜い心しか持ち合わせない私を抱きしめて下る仏さまが大好きです。

Yちゃん、あのお花どうしたかなぁ~・・・