今日の1句

いずこより琴の音聞こゆ寒牡丹　　　つゆ草

上野の牡丹苑に行って来ました。毎年この時期には撮りにゆく程、艶やかで素敵なのです。逆光のなかでは薄い花びらが美しく透けて、何とも妖艶な姿なのです。本当なら藁の上に雪でも乗っていれば尚更良いのですが、今年は暖冬と聞いておりますので無理かも知れません。スラリとした外人の女性がある花の前で佇み、暫く見入っていました。琴の調べも流れていて、日本情緒に浸っていた様子でした。それぞれの牡丹の後ろには趣のある俳句も掲げられていて、自由に投句も募集していたので、私も下手な句を気儘に書き、ボードに貼って帰って来ました。丁度見ごろなので、お近くの方は見に行かれたらと思います。

今日の１句

名女優次々消ゆる去年今年　　つゆ草

又一人市原悦子という女優さんが亡くなりました。息子も娘も「日本昔話」で育ち、私はと言えば、家政婦シリーズを楽しませてもらった名女優でした。あの声のトーンは独特のユーモアがあり、自然な演技も魅力的な方でした。このところ、気分転換にと、二子玉川のシネマに行ってます。評判のクイーンのものと、昨日は歌舞伎の玉三郎の「楊貴妃」の映画版を観て来ました。幾つになっても玉三郎は美しく、言葉も綺麗だし雰囲気のある方なので大好きです。映画は元々昔から好きで銀座に良く出かけたものでしたが、最近は近くに一人で見に行くのが密な楽しみとなっています。毎日書いていた書も明日提出、ちょっと疲れた時は映画が一番なのです。暖かな日が続き助かります。

今日の１句

寒紅やさみしき時は少し濃く　　　つゆ草

このところ外出する時はほとんど風邪予防のため、マスクを着用しているので、口紅はつけないのですが、この寒紅という季語は口から入る虫を殺すという薬効的な意味を含んでいるとあります。歳を重ねると顔色もくすんできて余計老けて見えるので、なるべく口紅をさすようにはしています。でも真っ赤な色は私には似合わないので、薄紅色を使います。女の意識が次第に遠のくこの頃ですが、せめて白髪染めと口紅だけは欠かさず、もうしばし、女を捨てずに行きたいものです。

今日の１句

慈悲深き光みなぎり春の空　　　つゆ草

先日皇居での歌会をテレビで見ました。あのろうろうとした声は本当に素晴らしく、聞き惚れてしまいます。陛下のお歌もさながら、皇后様のお歌はしみじみと心打つ内容でした。「今しばし生きなむと思ふ寂光の園の薔薇の美しき」は、陛下と散歩された皇居内の日々を詠まれたとか・・。皇后様というお役目を、陛下の御傍に沿う様にして今日迄過ごされたという、深い思いがにじみ出ている様に思います。あの品格と慈悲深いまなざしは、後光が射している様です。

今日の１句

初雪や手に乗る前に消えゆけり　　つゆ草

先日、朝微かな小雪が舞った日、私の師事する恩師のパネルディスカッションがあり、大学での最後の講演を拝聴して来ました。今年3月に定年退職なさる恩師の講演を大学内で聴くのは、私にとっても最後なのです。お話のとってもお上手な教授は、この日も生き生きとお話をされ、まだまだ続けて頂きたい思いで一杯になりました。その日の朝の消えゆく小雪の如く、もののあわれをこれ程感じた日はありません。時間が足りなくもっともっとお話ししたかったであろう先生に、お疲れ様の感謝状です。

又、昨日は昭和記念公園で、消防の年始の行事の一環として、放水があるというので、撮りに行って来ました。２時間も待っていざ何台もの放水の弧が描かれると期待していたのですが、何と風の向きが途端に変貌し、私も大勢の見学者も水浸しとなって、思うような写真は撮れずじまいでした。でも大きな虹が出て、それはそれで絵にはなり、納得して帰ってきた次第です。今日は成人の日、きっと綺麗な晴れ姿の声が空を飛んでいることでしょう。日の過ぎるのが早い毎日です。