まずその前に
麹も大豆も用意できた。明日は味噌をつくる。でもまずその前に、甘酒を仕込まなければ。
牛乳、豆乳、甘酒。昔から色の白い飲み物が好きだった。とりわけ甘酒は大好物で、子供の頃は母によく作ってもらった。
さて私の母の実家は、農家の傍ら酒の小売店もやっており、店番は祖母の仕事だった。祖母はどっしりと太った人で、愛想はあまりよくなかった。
ある時なぜか祖母と私が、店にいたことがあった。その時ちょうど酒屋から配達あり、一升瓶が木箱に入れられて配達された。その中に白い色をしたお酒があった。例えて言うならポカリスエットみたいな色をしていた。
もちろん当時はポカリスなんてなかったので、なんだか色の薄い甘酒みたいなものだと思った。見るほどに甘酒のように見えて、これはきっと甘くておいしいものだと思った。飲んでみたい。という願望にかられ、祖母に謎をかけてみた。
「祖母ちゃんこれ何?おいしいんかい?」
「これはどぶろくちゅうて、貧乏人が飲む酒じゃ。うまいことも何もありゃせん」
祖母は怒ったような口調で言った。
「どぶろくか。飲ましてくれそうにないなぁ。大人になったら絶対あれを飲んでやる」
私は子供心に決心をした。だが未だにどぶろくは飲んだことはない。
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