ドラクエ9☆天使ツアーズ

■DQ9ファンブログ■
オリジナルストーリー4コマ漫画を中心に更新中
時々ドラクエ風味ほかゲームプレイ漫画とかとか

オレガノ服飾店

2015年07月28日 | ツアーズ小ネタ

日頃、ミオがお世話になっている皆さんに服作ってみました!のオレガノブランド☆

 

暑いからといって現実逃避してたらかなりマジなお絵かきで3時間ほど…(怖)

ウイが「作って」って言ってたまじゅつしの服は、かなり前に描いたので(;'∀')

ヒロの日常着と、ウイとミオの服を「オレガノさんが作る」体で色々落書きして遊んでいたら

いつの間にか真剣になってきたので色をつけて抜け目なくUP!

(以後、4コマの方でも使いたい)

 

オレガノ服飾店は、主に服を作ってますが布系の雑貨も気まぐれに作っています

村の人たちの日常着はもちろん、ちょっとお値段の張るお洒落着も注文を受付

そうして制作した服や雑貨は自分の村で売るだけではなく、

大きな町のお店に委託販売したり、旅の商隊に卸したりして手広く稼いでいますが

何しろ手元にお金がたまるとついつい珍しい布や新しい流行ものに手を出してしまう職人気質です

ちょっと贅沢をするより、素敵な服をつくる材料を買いたい!

暇があれば遊びに行くより服を作りたい!

若い時から変わらず、服を作ることが何にも勝る喜び、という生き方は変わりません

 

そんなオレガノさんが作ったヒロとウイミオの服

 

素材は主にコットンとリネン

日常着も旅装も、とりあえず丈夫なのが大前提!

ですが、オレガノブランドは、そこからさらに「可愛い」を重要視!

(この丈夫なのに可愛い、っていうのが今までの村にはなかったため、村の乙女男子に大うけ)

フリルとかタックとかレースとか、そういうひらひらふわふわの可愛い系が大得意

男子の服は村や町にいる間はゆったりリラックスできる仕様で、旅に出るときはベルトで締めます

女子の方も普段はフレアパンツですが、旅に出るときは裾をきゅっと絞れるようになってます

 

ってここまで楽しくウイたちの服をお絵かきしてましたが、そういえば

 

 

…戦闘中の装備どうしてるんだよ、

 

 

って我に返る(゜Д゜;)

たのしくオレガノブランドとか描いてる場合じゃない…

(いやでもDQ8もゼシカ以外、皆自前の服着てたしな…)←それはゲームの都合

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ドラクエである必要が一切なくなってきた(いや知ってましたけどね?)

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おまけ

2015年07月27日 | 2部 帰郷の章(ミオ)

ミオ父 「これ…どこからどこが服ですかね」

ミカ 「いや服とかいう以前の問題だ」

 

 

 

 

 

  

ウイの画力は2歳児レベル

守護天使の仕事的に「絵を描く」ということはないと思うので

(もちろん絵を描くお仕事をする守護天使はいると思っていますが、ウイは一切描かない)

一応、左で描いたのですが、ぐじゃぐじゃの絵を描く幼児の気持ちが解りましたよ!!

そして描いては消し、描いては消し、と8回くらい描いてあの絵なんですが…

描くたびに上達してチョー焦る!!

上手くなってどうする…

(思えば一番最初に描いた絵が一番壊滅的で芸術の域を凌駕してたと思う)

特訓すれば左でも右並みに絵が描けるわ私、と思った出来事

 

はい

 

ウイとミカが、ミオのお父さんの家でお世話になっている間のアレコレ

ミカは宿にいると村中の好奇に晒されるので、結局お父さん家に泊まっています

そこで、裁縫職人としての基本知識、布や糸の買い付けやら、原料の話、産地や流通、などなど、

お父さんについて話を聞いて勉強してました(これが有意義だった、って話)

ウイは適当に村をうろついたり、ラン&シバの家に遊びに行ったり、ですね

 

その中でネタとして作ったのが2本あるんですが、4コマに割るのが無理!!でもSSにするほどでもない!

ってとこなのでメモ書きで置いておきます(-_-;)

これが本当のオマケです

 

 

 

■ちょっと描いてみてください

ミオ父 「注文も一段落したことだし、皆さんの服でも作りましょうか」

ウイ 「え?いいの?」

ミオ父 「せっかく村まで来てもらった事ですし、今サイズを測っておけばいつでも作れますしね」

「いつもミオがお世話になっているお礼も兼ねて」

ウイ 「やったあ!ウイね、着たい服あったんだよね」「まじゅつしが来てる服なんだけど作れるかな?」

ミカ 「まじゅつし!?」

ミオ父 「もちろん、描いてもらえばその通りに作りますよ」

(2歳児、画)

ミオ父 「この絵は…どこからどこまでが服でしょうかね…」

ミカ 「いや、絵ですらない」

ウイ 「そんな事いうならミカちゃん描いてよー!」

ミカ 「よし、物差しを持て」

ウイ 「物差し?!」

ミカ 「あとコンパス」

ウイ 「コンパス?!」

ミカ 「分度器」

ウイ 「…」

ミカ 「いや、先におおよその原寸大の予想を立てて縮尺値を割り出す計算をするからちょっと待て」

ウイ 「…そこからなの?」

 

*長さが中途半端で4コマに収まらず、しかし2話に伸ばすほどには中身が足りず…

(これぞ帯に短し襷に長し)

 

 

 

■いりません1

ミオ父 「じゃあウイちゃんはこの服でいいとして。ミカさんは何か希望がありますか?」

ミカ 「あ、俺はいりません」

ミオ父 「えっ、いりません?!」

ウイ 「ミカちゃん…」(突く)

ミカ 「…せっかくのご厚意ですが、うちには専属の職人がいますので」

ウイ 「あのねー、ミカちゃん家、その人が作った服しか着ちゃいけないしきたりなんだよ」

ミカ 「いや、しきたり、ってほどじゃ…」

ミオ父 「そうですか、しきたりは大事ですね…それは残念ですが、じゃあヒロくんに二枚作りましょう」

ウイ 「あ、それはイイネ!ヒロだったら強引にミカちゃんに着せるよ!」

ミカ 「いらねえ、っつってんだろ…」

 

*ヒロなら喜んでミカとペアルック♪

 

 

 

■いりません2

ミオ父 「しかし専属の職人がいるとは、なかなかのお家柄ですね」

ウイ 「なかなかって解るお父さんもなかなかだね?」

ミカ 「…」

ミオ父 「いや、私も若い頃は野望に溢れていましたからね、専属職人にあこがれたものですよ」

ウイ 「えー、お父さん、専属職人になりたかったの?どうして?」

ミオ父 「実家は町のしがない仕立て屋でしたから、日々、細々と安い服を作っていましたが」

「名家の専属になれば、布も仕立ても上物を扱えるでしょう。ふんだんに布を使って豪奢な服を作ってみたかったのですよ」

「そのために、名家が専属職人を募っていると聞けば、その競技会に自作の服を出展して、ほかの職人と競い合ってもみましたが」

「やはり若い頃は資金も技術も乏しかったので思い切った挑戦ができず、一度も選ばれませんでしたねえ」

ウイ 「厳しい世界だね」

ミオ父 「そうでなくてはね、名家や王室の御用達という一級品は」

ミオ父 「でもそうですねえ…、こうして老いを重ね若かりし日の情熱を思うと…」

ウイ 「うん」

ミカ 「…」

ミオ父 「ここでミカさんに出会ったのも何かの縁かもしれません!」

「どうでしょう?!今の私の服が御用達にかなうかどうか挑戦する意味でも、ミカさんの服を作らせてもらえませんかね?!」

ミカ 「…迷惑です」

 

*ミオ父のエピソードを入れたくて作ったけど、4コマ向きじゃないなと思って断念(長台詞はわが天敵)

それに付き合わされたミカの方は、服はいらないのは勿論、ミオ父の過去のリベンジに付き合わされるのがメンドクサイな、っていうところ

 

 

 

 

以上、オマケでした

多分描こうと思えば描けるネタではありますが、最近あまりにも暑くて何事もやる気が起きません!!

とりあえず、「やる気が起こるネタだけ描いていこうぜ、夏」ってことで

次回からミカん家に遊びに行きます

ミオのファミリーネタは出来上がっていて、早く描かないとまた端から忘れていく!っていう焦燥感が積もりつつあるんですが

ほぼSSになりそうな気もしないでもない長さ(セリフが)なので

涼しくなったころにちょっと考えます

 

 

 

 

 

 

 

まあそうこうしてる間に、「やる気が起こる時だけ描いてみようぜ、冬」がくるんですけど

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色々ありました5

2015年07月23日 | 2部 帰郷の章(ミオ)

ウイ 「つけ襟流行る勢いで王子が大流行したよ」

ヒロ 「乙女村の威力こええええ…っ」

 

 

 

 

 

 

 

乙女男子たちの真骨頂

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コメントにお返事のコーナー

■貴沙羅サン

ずっきゅーんなってもらえたのなら、ミカのあのくそメンドクサイ台詞をひねり出した

苦労も報われるというものですアリガトウ

そうそう、設定から考えたキャラは二転三転しますね~解っていただけますか!

…私の場合は「設定メモしとけよ!」の一言で大方片付く問題なんですけどね


色々ありました4

2015年07月22日 | 2部 帰郷の章(ミオ)

ヒロ 「ミカはウイのいう事に乗せられすぎ…」

ミカ 「俺のせいだってのかよ?!」

 

 

 

 

 

 

  

ミカのせいとはいいませんが

コハナの女傑たちはあまり乙女扱いされたことがないので、そういう場面に免疫がないです

多分ミカがうまく立ち回れば、上の村の女性たちもめろめろにできたはずなんですが

ミカにそういうスキルはありません!残念!!

 

…ってのを書いていて、まさに今思い出した事があります

 

シバは元々、「浮気癖が治らなくて常に妻のランシーと喧嘩している」設定が脳内にあったのですが

いざキャラを描いてみると浮気しそうにない弱腰なキャラになってしまったので

もう浮気癖設定どうでもいいわ、と思って抹消したんですよね昔…

 

が、今描いてるこの話

ランシーがミカの発言にぽーっっとなって嫉妬したシバが大決闘!

そんなシバをみてランシーが惚れ直す

夫婦ラブラブ、図らずもミカがキューピッド!っていう…

珍しくミカがいい役(?)をこなすはずの話だったよ、そう言えば!!

 

…てことで今更シバを浮気男にするわけにもいかないので新たなオチを用意したんですが(次回がオチ)

 

時の流れに流されまくっているウイたちを描いていると

おばあさんに拾ってもらえなかった桃が鬼ヶ島についちゃった!

っていうCM見てて、うんまさにあんな感じだよな、ってちょっと身につまされてます

 

 

 

 

 

 

 

こっちも何かっていうとすぐ決闘!?

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色々ありました2

2015年07月18日 | 2部 帰郷の章(ミオ)

ミオ 「穴…穴があったら入りたい…いっそ穴になりたい…」

ウイ 「じゃウイがそこに入ってあげるよ☆」

 

 

 

 

  

ミオはちょっと帰省ハイ

思いがけずお姉さんと絡んだり、なぜだか村の女性に絡まれたりして

楽しかったり大変だったりしたけれど、無我夢中で乗り切った帰省祭り

もちろん村の女性たちも全面的な好意だけではなく、一部反感や反発も招いたりするので

そこはヒロがいい塩梅を見極めて、さくっと切り上げてきました

三日ほど滞在してた感じです

 

てことで、ここまで前置き

次から下の村のウイとミカの色々ありました、が始まります

 

 

 

 

 

 

 

 

もちろん、有名なあのセリフを拝借

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色々ありまして

2015年07月15日 | 2部 帰郷の章(ミオ)

ウイ 「ウイたちの特訓の成果だよね!」

ミカ 「俺だって学習するんだよ!」

ヒロ 「うんうん、俺たちの特訓で学習した成果な!」

 

 

 

 

 

 

   

ああー、これは人によって分かれるだろうな、と悩んだネタ

今までのミカなら「楽しくなかった」「でも有意義だった」っていう順序での会話能力でしたが

(まず率直に自分の中で大部分を占めている感情を言ってしまう)

ミオにそれをやってしまうと、「楽しくなかった」っていう一言目でミオは

がーん!!!Σ(゜д゜lll)

となってしまって、その後の「有意義なこともあった」っていう部分は全く心に響きません

これを何度も繰り返して失敗しているので、「俺だって学習するんだよ!」のミカは今回

「有意義だった」「でも楽しくなかった」っていう風にミオに対応した会話能力を発揮してます

ポジティブな情報を先に出してミオを上げておいて、ネガティブな自分の意見もちゃっかり言う、って感じです

 

でも

 

相手がヒロの場合だと、「有意義だった」「でも楽しくなかった」っていう風に言っちゃうと

「え?結局楽しくなかったのかよ?!」ってすんごい気にしてしまうので、ヒロには今まで通り

「楽しくなかった」「でも有意義だった」で、正解

ウイは守護天使なのでそのあたりはどっちでもいいです(本質が大事)

 

これ、人に注意をしたり叱ったりするときにもどっちが先かって、すごく難しいですよね?

注意をしてから褒める、が有効な人と、褒めてから注意をする、が有効な人と…

私はミオタイプなので、褒められてから注意されたい、…かな?(;'∀')

「いつも品出し速くて凄いね!でも伝票雑だから気を付けてね」って感じでミオはオッケー

「伝票雑だから気を付けてね!品出し速くて凄く助かってるからね」でヒロはオッケー

些細な違いだけど、これで二人とも「はい気を付けます!」って機嫌よく仕事してくれそう

しかしミカの場合だと「伝票の注意が目的なら、品出しの件で持ち上げるのがうざい!」ってキレられる

…とかいう状況を想像して、こいつら部下だったらくそ面倒くせえなあ~、っていう一人妄想でした

 

 

 

 

 

 

まあ言ってくる相手がどうか、っていう場合でも違うんでしょうけども

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コメントにお返事のコーナー

■貴沙羅サン

娘を持つ父親共通の「気になる」ですよね(笑)

ヒロとミカをお兄ちゃん的存在に見てもらってるようなので、あまり阿呆な事はさせないように…

手遅れか…あほな兄ちゃんズをどうぞよろしく

髪型は少しでも参考になれば幸いです

「女には女の闘いがある」毎日を乗り切ってくださいませませ


ミオの家族に乾杯38

2015年07月13日 | 2部 帰郷の章(ミオ)

ウイ 「ミオちゃんとこは男女感覚逆だよ?」

ヒロ 「あ、俺がお姉さんって扱いか」

 

 

 

 

 

  

ミオの帰省中の家族ネタは4コマ仕立てにするのがむつかしかったのでSSに詰め込みました!

もちろん内容的には漫画に影響しないので、文章がお好きな方だけどうぞカテゴリーです

で、「お世話になりました(色々な意味で)」の「色々」の方をこの後、漫画でお届けします

ざっくりギャグです

 

 

 

 

 

ウイちゃんはお父さんですッ

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コメントにお返事のコーナー

■貴沙羅サン

シオ姉にコメントありがとうございます!

絵の引き出しが少ないので「頑張って描いてるのにレンレンになる」とさめざめしてた私です

外見はともかく内面は非常に作りこんだキャラになりました(脇なのに)

ペンダントにも気付いてくれてたんですね、素晴らしい着眼点!

母との絡みも無駄に気合入れて作ってあるので、お待ちいただければとおもいまする

そしてシオの髪型ですが、それほど難しくはないんですが多分、現実だと地味かと…

 

A 髪をうなじでひとつに縛ります

  縛った髪を三分割にします(均等か不均等かはお好みで)

  真ん中の1本を小さな輪を作って毛先を縛ります(上向き)

  残りの二本を交差させて、両方とも輪を作って毛先を縛ります(下向き)

  縛った部分をシュシュやリボンで隠します(できあがり♪)

 

B 前髪から耳の上あたり、両サイドの髪をとって後ろで一つに縛ります

  小さい輪をつくって縛ります

  残った髪を一つに縛って、ねじりながら輪を作り、毛先を縛ります

  縛った部分をシュシュやリボンで隠します(出来上がり♪)

 

これと同じやり方でアップだったりサイドで縛ってるのがトールとトーリの髪型です

(慣れてきたら三つ編みにしてから縛ったりするとちょっとは華やかになるかも?)

文字だけで参考になるかは不安ですが、暇を持て余してる時にでも結い結いしてみてくださいませ


シオ

2015年07月09日 | ツアーズ小ネタ

オレガノさん家の四姉妹、長女のシオ(26)です。

彼女の事は、女傑!って感じで描いてますが、他人(特に妹たち)には絶対弱みを見せてはいけない!

っていう本人の覚悟がそうさせているだけで、中身は結構繊細なキャラです。

それを解っているのは今のところ父親だけということもあって、かなりのファザコン。

結婚相手も、父さんみたいな人がいいわ!って思ってるので、なかなか妥協できずにいます。

そういうわけで、若い頃から男性たちにはちやほやされていましたが、典型的な高嶺の花扱いで

いまだ独身。(本人も少しは気にしている。少しは。ええ、繊細なのでw)

冒険者としては、強敵と闘って名を上げるのが目的の武力派。

それに加えて、放浪している母の消息を掴みたい、という思いから各地に出かけて情報収集。

 

服ももちろん、父の手作り。

今、向かう所敵なし状態なので、髪はアップをやめて下ろしてます。(ちょっと薄毛が気になる年頃)

あ、双子とシオと、ペンダントを付けていますが、これは冒険者として一人前になったお祝いに、母が贈ってくれたもの。

(ミオはまだ母に会っていないので、次に再会したら贈ってもらうはず)

漢字のイメージは、志桜。ミオの漢字のイメージが美桜、なのは、シオが名前を付けたから。

 

女性社会の村のイメージは、宝塚。(と言っても私詳しくはないんですが)

それぞれの派閥があって、トップスターがいて、日々切磋琢磨している、という所でしょう。

シオは実力的にも年齢的にも、押しも押されもせぬトップスターとして君臨して長いので、お局様敵存在。

他のお局様は伴侶を見つけて村を出たり、村に戻って子供や若手の育成に忙しかったりしている中、

シオは頑なに、ミオが一人前になるまでは!(むしろ妹になら座を譲ってもいいというか)と

バリバリトップ張ってます。

 

実は、ミオの事が大事で大事で仕方ないのです。

母親不在がちの家で、双子と仲良くやってはいたのですが、やはり双子のもつシンクロ具合には

姉とはいえシオには太刀打ちできません。

双子のラブラブ状態である仲に入っていけなくて、疎外感をこれでもかと感じていたところにミオが生まれたので、

「私にはミオがいるもん!」と、ミオ一筋に愛情を注いでしまったのが、裏目に出てしまった感じです。

良かれと思ってミオにばかり構っていると、スパルタ教育に耐えられなかったミオには逃げ回られ、

それを追いかけ倒して双子には嫉妬され、嫉妬した双子がミオを苛め、苛められるミオは逃げ…の悪循環。

そういう頑迷なところを、父親は甘やかすばかりで、双子はからかうだけで、誰もいさめてくれません。

という意味では、シオのSSは、せっかくの年上キャラなのでウイたちを子供扱いする視点を書きたい!っていうのと

シオというキャラクターの内面の、欠点部分を書きたかっただけなのですが。

 

詰め込みすぎてめっちゃ長くなって、書いていて訳わかんなくなりました(゜Д゜;)アチャー

 

ので、もうこの際、志高くの話をさくっと1話で終わらせるために、父親との交流を書き足して完結。

で、完全にオマケの遊びとして、HeroicWomanを書き直しました。こっちは、とっちらかっていてまだ惨敗状態です。

惨敗ではあるんですが、今の私じゃ力不足だな、と思ったのでこのまま寝かせておきます(;'∀')

いつか構成しなおして引き算してスッキリさせたい!!という無念さを残しつつ。

シオにガツン!と言ってくれる人は、母親しかないので、母親が帰ってくるころまでには何とか

シオというキャラクターを手懐けておきたいなと思う次第であります!

 

 

 

 

 

 

 

 

完全脇キャラなのに手懐けないといけないとはこれいかに…

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Heroic Woman

2015年07月08日 | ツアーズ SS

(なんだか疲れた…)

シオはつい今しがたの父とのやりとりを反芻しながら、上の村に戻る。

自分は確かに、母の強さを追いかけ、それに追いつきたいと思い、ひたすら武を極めてきた。

母の名に恥じぬように、村の中でも、外でも、一切の妥協を自分に許すことなく高みを目指した。

その自分をミオが追いかけてきているというなら、なぜ、どうして、こんな状況になるのだろう?

と、その光景を目の当たりにして、シオは苦いものをかみ殺した。

 

「あ、シオ姉!今、チョー面白いことやってんだわ!」

 

見ればわかる。

面白いかどうかは別として、と、シオは村の闘技場で馬鹿騒ぎを繰り広げている有様を見て、その中心にいるらしき人物に苛立つ。

紛うことなき末妹と、弱腰おべっか上手の下僕である。

またあいつが口先三寸、周囲を丸め込んでくだらない騒ぎを起こしているのかと思えば。

それに口出しできない脆弱な妹の不甲斐なさを目の当たりにさせられているようで、イライラする。どっちが下僕なんだか!という所か。

闘技場では、4対4で入れ代わり立ち代わり、対戦が行われている。

それが、普段とはまるで違う光景であるのは、まるで対戦ごっこのようだということ。

いったい何をやっているのか、とそれを見守っていれば、延々とレベルの低い戦いが繰り広げられている。

「ねえねえ、シオ姉もやらない?」

と声をかけてきたトーリに、何をやっているのか尋ねれば、トールも駆け寄ってくる。

「すごいよ、賢者って!ダーマのさとり、とかいうのが使えるんだってさ!」

なんだその聞きなれない呪文は。そんな思いは言わずとも心得たように、トーリが続ける。

「転職の呪文なんだって。みそ子が使えるのよ。だから、今あたし、魔法使いなの」

あたしは僧侶、とトールが笑う。

「全員、レベル1の職業になって、その場でやっつけのパーティ組んで対戦してるのよ」

ミオの呪文だけで転職ができるという。なんだそれは、出張ダーマ神殿か。そんなことができるなんて…。

と、にわかには信じがたいが。

なるほど事の次第を見ていれば、誰もが未経験の職業に転職し、村の派閥の垣根も越えて、直感でパーティを組んでいる。

名乗りを上げたら、ヒロが対戦表を作って戦闘開始。勝っても負けても、再び対戦したいなら、またレベル1の職業に転職。

「何それ、つまんなそう!って思ったんだけど」

やってみたら意外と面白くて、皆いつの間にか転職を繰り返しているのだ、と説明を受けているうちに。

「はーい、終了~、終了でーす!」

と、ヒロが闘技場の向こうで声を張り上げているのが聞こえた。

「あーん、あたしまだリベンジしてないのに」

「よっし、抗議に行こう!」

と、双子も、周りの人間も、ヒロとミオのいる場所へ集まっていく。

人の波が好き勝手動く中、その場を離れ自宅に戻ろうと足を運ぶシオにも、様々な声がかかる。

「シオさんの妹、面白い冒険者になったよね」

「変な男引き連れてきちゃってさ、ま私たちにはいい退屈しのぎになってるけどね」

なんて声をかけてくるのも、冷やかし半分、おちょくり半分、決してシオを愉快な気分にさせるものではない。

面白い冒険者じゃなく、強い冒険者として戻ってくるのが筋じゃないのか。

従えるにしたって、「変な男」とか言われるのでなく、なんかこう、もっとこう、…絶対あんな下僕なんかじゃないことは確かだ。

というシオの不満をよそに、妹たちと変な男は、ついさっき戻った家の中で今日の成果を話題にしている。

それぞれにテーブルについて、ミオがお茶を淹れて回って。

何なのあんたたち。夕べは、下僕は納戸で寝ろ、寝室があると思うなとか言ってたんじゃないの。

何仲良く一つのテーブル囲んで、和気あいあいとしちゃってるのよ。

…シオにしてみれば、半日下の村に姿を消していただけで、「どうしてこうなった」である。

この男は油断ならない。口が軽い。そして場の雰囲気を作るのが天才的だ。

昨日から思っていたことだが、外の人間には反発心しかない村の女性が一斉にこの男の口車に乗せられたのだ。

それは初日の、ただ自分たちに取り入るための苦肉の策かと思い、それなりに見逃していたことではあったが。

今日の、村を巻き込んでのお祭り騒ぎには、何の狙いがあっての事か、と警戒心すら覚える。

普段、双子である自分たち以外には心を許さないトールとトーリが懐いているのも解せないが、

それ以上に普段からかかわりのあるミオに至っては、都合のいいように洗脳でもされているのかと不安になる。

実はこいつがパーティの黒幕なのでは…、と目を光らせているシオには構わず、話は盛り上がっている。

「いーじゃん、明日またやろうよ!ミオの魔力回復したら、また転職し放題なんでしょ?」

よほど未経験の職での対戦が面白かったらしい。

トールが乗り気になっていることで、村の誰もが興奮しているのは想像にたやすい。

「うーん、でももう、みんな一通り職を経験しちゃったんだよなー」

と、何かをたくらむ黒幕野郎、と目を付けられているのを知る由もないヒロが、手元の紙を広げる。

名簿と、転職の履歴、パーティメンバーの記録と、対戦表。

それらをミオと二人で管理して、この対戦を主催していたらしいことは解った。だが。

「別にそれくらい、どうでもいいでしょ?今日の続き、っていうだけじゃないの」

そういうトーリに、シオは今日の対戦を外から観戦していて思うことを、胸のうちにつぶやく。

それじゃ、だめだ。今日のはただのお遊びだから。だから純粋に楽しめただけで。

このやり方じゃ続けても…、そう考えたのと、ヒロが言葉を発したのとが同時だった。

「このやり方じゃ続けるだけで、すぐに飽きられてしまうよ」

その言葉に、トールとトーリがきょとんとヒロを見る。それを受けて、ヒロがミオと顔を見合わせた。

「今日の対戦が盛り上がったのは、全員が初めて、ってところが肝だったんだけど」

「はい、そうですね」

隣同士に座るヒロとミオ、トールとトーリが向かい合う。

「どういうこと?初めてだから、皆、手探りだったわけじゃん?」

「もう大体わかったんだから、次から戦略練ったり構成が決まったりして、より面白くなるんじゃないの」

「うん、それは中身の話で。中身が成熟していくなら、外側はそれよりももっと精巧に頑強に作り上げないとだめだって事」

そう言ったヒロが、テーブルの上に両手で輪を作って見せる。名簿をぐるりと囲むように。

「外側っていうのは、つまり主催のことね。中身は、姉さんたち。姉さんたちは対人戦をよくわかってるから」

次からこうすればうまく行くだとか、この敵にはこんな戦法が相性がいいだとか、構成の弱点だとか、

きっともう解ってきているだろう、とヒロは言う。

「そうなってくると、それは単に職が低レベルだってだけで、普段姉さんたちがやってることと変わらないよ」

「そうかしら?」

「職が違うと、やることは全然違うんだけど」

トールとトーリはまだ解らないようだが、ヒロはよく解っている、とシオは思った。

この村の習性、戦うことに頭脳と肉体の全てを捧げてきたからこそ、小手先のだましは一度しか効かない。

未経験の職、という制限があったからこそ、未知の体験として脳も体も最高の興奮状態になったのだろうけれど。

それは、所詮、お遊びの範疇でしかない。

「姉さんたちは勝つことにすべてを賭けてるから、職が違うことくらい大した制限にはならないでしょ」

だから、これを続けるなら、外側を強化していかなくてはならない、とヒロが続ける。

レベルの制限でもいいし、対戦者の制限でもいい。武器を制限してもいいし、とにかく戦い辛い!という方向にして、

中身である人間がさらに成長する仕組みを作ってこそ、この遊びは、競技として成り立つ。

「と、俺は思ったんだけど」

と、ヒロがミオの意見を聞くように、そちらを見れば、ミオもそれにただ頷く。

それを見ているだけで、やはり、とシオは不安を拭い去れない。ミオはただヒロの言いなりになっているだけじゃないか。

それを、下の村に身を引いたあの二人の言葉を借りれば、「自分を殺して、一歩引いた立ち位置にいる」ということ。

二人の言葉には確かに心ひかれたが、しかしシオの目にはそれほど理想的な関係には見えない。

「うーん?そうかなあ…、制限されて面白いかなあ…」

「レベル10の戦士が、レベル1の魔法使い倒しても面白くならないっしょ?」

「え?それは面白いじゃん」

「え?面白いんだ?!」

「弱者は徹底的に叩きのめす!二度と這い上がれないくらいに!」

「…ははぁ…そうですか…」

そういう村ですか、とやりあっているこっちも、あまり建設的な話はできていそうもないが。

ヒロが頭を抱えたのを見て、ミオがトールを見た。

「お姉さんが、レベル1の魔法使いです」

「は?」

「わ、私がレベル10の戦士です」

「なんだと、この野郎」

「私がお姉さんを徹底的に叩きのめしますけど、…面白いですか?」

「面白いわけないだろ!」

そんな状況になったら、後で絶対ぼっこぼこにする!というトールに、あの、例え話ですから…、と気弱な面を見せて。

「あ、あの、それで、武器使用は禁止、っていう制限を付けます」

「んん?」

レベル10の戦士と、レベル1の魔法使いが、丸腰で対戦。

「どっちが勝つか、それはもうレベルとか関係なくて、純粋な強さだと思うんです」

「でも魔法使い、防御すんごいザルじゃん?素手で殴っても倒せると思うけど」

というトールに、でも、と黙って聞いていたトーリが口を出す。

「魔法は遠距離イケルわよ?」

開幕早々、遠距離でぶっぱされたらちょっとわかんないかも、と言って、あたし今日魔法使いだったから、とトーリは笑う。

そうなると、レベル10の戦士がレベル1の魔法使いを徹底的に叩きのめすよりも、レベル1が10に辛勝する方が。

「何倍も爽快感があるような気はするわ」

そういう事いいたいんでしょ?と、確認するトーリに、ミオが頷く。

その隣で、ええー?あたしは絶対上からぼこぼこにする方が楽しいな、というトール。

長年妹たちの面倒を引き受けてきたシオにとっては、双子の意見が割れることも驚きだったが、

その双子と末妹が普通に普通の会話をしている光景も、信じられない思いで見やる。

それは、考えなかったことがないわけじゃない。

ミオが成長して、自分たちに物怖じしなくなれば、いつかこんな日が来るのではないかと思っていた。

4姉妹でテーブルを囲んで、明日はどこへ行こうか、と夜ごと冒険者としての議論を白熱させる。

その足で世界を巡り、母の足跡をたどり姉妹揃って再会を果たす。母はきっと喜んでくれるだろう。

そんな、子供のような夢物語を大事にしていたなんて、妹たちには口が裂けても言えないけれど。

「制限を付けることで、逆に戦い方が何億通りにも変化するってことだよね」

と、ヒロが言えば、あ!そうです!と、ミオが声を上げる。

「私、昨日戦ったとき、3人だったのでいつもと全然違うって思いました」

「あー確かに!最初ミカが前にいないから賢者がすごく自由になってたな、ってのは解る」

「はい」

「ミオちゃんに言われたから、俺は後ろに下がったけど、視界がすっげえ広くて何にでも対応できそうだったもん」

「できてなかったじゃん」

「負けてたじゃん」

「へい、ま、そうなんですけど。それはほら、まだ未熟ってことで」

へら、と笑って双子をかわすヒロを助けるように、それに、とミオが口を開く。

「ヒロ君は前衛だから、いつもなら後衛を補佐する前衛の動きが後衛の役割を前衛として奪ってしまったんだと思います」

「…何言ってんの、この子」

「いや、ちょっと解んないわ」

「ごめん、俺もわかんない」

と、三者に困惑の視線を向けられて、あああスミマセン!と赤面したミオが、ひたすら困窮している。

ミオの言いたいことはわかる。多分それは、戦ったシオも感じていたことだから、戦闘に対する感覚は近いものがあるのだろう。

だが、それにどう助け船を出してやろうか、と考えあぐねた時。

「あの」

と、ミオが顔を上げた。

「私、今、戦闘の指揮をとる勉強をしています」

今までは回復要員として戦闘の流れには口を出さず、前衛が戦闘の流れを組み立てて、それを補佐しているだけだった、と言う。

「後衛って、そういうもんじゃないの?回復が重要でしょ?」

「そうよ、前衛として、後衛に戦闘組み立てられちゃ、やりにくくて仕方ないわ」

「私も、そう思ってました」

しかし、それではパーティ全体の力量がそこで打ち止めになってしまうのだと、気づいたから。

「今では私が戦闘の指示を出しています。あ、あの、もちろん、まだ全然、全然満足のいくようにはできないですけど」

前衛が純粋に自分の力だけを発揮することに没頭できるように、いちいち周りの状況を確認しなくても動けるように、

全体を見通せる場所から、ミオが全員の動きを把握して、戦闘の流れを読んで、一つの戦局を操る。

それは、パーティにおいて、シオがこなしている役割と同じことだ。

リーダーであるシオと同じことを、後衛に控えているミオがやってのけているということに、シオも双子も驚く。

「そうすることで、パーティ全体の力と速さが、もう全然違うくらい、変わったんです」

だから、後衛は必ずしも統率力が無用な立ち位置ではない、とわかった。

「ふうん?で?だから何?」

今一つ実感できていないようなトーリの言葉に、ミオが再び窮地に立たされているように口ごもると、トールが手を叩く。

「あー、解ったかも!あたし今日、僧侶をやってみて思ったんだけど」

前衛が戦士と武闘家だったのね、でその武闘家はいつも盗賊やってる子なんだけどさ、と言えばトーリがトールを見る。

「…あたしのこと?」

「違うよ、トーリ別の子と組んでたじゃん、そうじゃなくってさ」

どっちも動きがもたもたしててイラついたから指示出したわけ、と、その場の全員を見渡す。

「なんで僧侶がそんなことしなきゃなんないのよ、って思ったんだけどさ、あたしの方が適役だった、ってことでしょ?」

で、それからは僧侶に従え、というやり方を通していて気づいたこと。

一度僧侶を経験していた子は、こちらの指示を難なく理解する、ということ。

「その戦士と盗賊、盗賊の方が年上で冒険者としても格は上なんだけどさ、戦士やってる子の方が上手いわけ!」

あとで聞いてみたら、僧侶からの視点がよく解ったから指示の意図がすんなり飲み込めた、と言った。

「そういうことでしょ?」

「え?ええー…と、えーと?」

「なによ、違うの?どういう事よ?!」

それには、すかさずヒロが助け舟を出す。

「いやいやうん、そういうことだと思うよ?前衛も後衛も、互いの視野を持つことで動き方が全然違ってくるって事っしょ?」

「は、はい」

「うんそおね」

「そういうのさ、外の世界だと何が起こるかわからないから常に変化し続けていくよね」

と言ったヒロが、机の上の名簿を指さす。

「でもこの村は、闘技場では、そういう変化には乏しいからいずれ戦い方は定石が確立されて、ただの作業になるよ」

それが、今のこの村の現状だ、とシオは思う。

力と力、人と人のぶつかり合いという単純明快な戦いの末の勝敗で決着する。

その風潮に誰もが、どこかで飽いていたのだ。だから、ミオとヒロが企画したこの斬新なお祭り騒ぎに沸き立った。

もちろんそれはそれで、一時の遊戯として終わるならそれもいいけど、とヒロが双子を見る。

「村の定期的な起爆剤としてずっと続けていける祭りにしたいんだったら、もっと企画練らないとね、ってこと」

「うーん、あたしは今が面白いからそれでいいんだけど」

「そうよね、そんな見もしない先の話されてもね」

あまり乗り気でない双子に、シオは苦笑する。何事にもほどほどの現状で満足している双子にはそういうものだろう。

それを惜しむのは、この男の勝手だが。

「えー、勿体ねえ…、定期的に開催して近隣からも人呼び込んで、参加費用とかとったらすごい儲け出そうなのに」

などと不届きなことを言う。

なんなのだ、こいつらは。と、もう何度目かわからないこの言葉だったが、さらに目が点になる妹の一声に。

「あ、世界大会とか開くようになると良いですよねっ」

「世界大会?!」

と、その場の全員が声をそろえたのは無理もない。

「おー、世界大会か。そっか世界中の猛者が、一斉に集まるわけだ。そりゃすげえ儲かるね」

「は、はい、上級職の人もいっぱい来て、もっと複雑にできると思うんですけど」

「なるほど、うん、いいかも。姉さんたち乗り気じゃないなら、俺の村でやろうかなあ…」

「あ、私お手伝いします!ヒロ君の村も有名になっていいと思います」

などと言って、ミオとヒロが盛り上がっている所に、双子たちが参戦する。

「ちょっと待てい!あんたの村はここに負けないくらいの武の村だっての!?」

「え?いや全然」

「それで武の世界大会とか、ちゃんちゃら可笑しいってのよ!」

「…なんで姉さんたち怒ってんの、どーでもいいんじゃねーの?」

「どうでもいいけどうちの村の十八番を横取りされると腹立つわ!」

「そうよ、だてに村の猛者が世界中に散ってるわけじゃないのよ!舐めんじゃないわ!」

その双子の言葉には、シオも思わず目を見張る。

こんな双子なりにも、この村に対する愛着と誇りがあったわけか。あまりにも意外すぎて、どう考えればいいかわからない。

と、完全に傍観しているシオに、双子が噛みついてくる。

「ちょっとシオ姉、こんな暴挙許されて言い訳?!」

暴挙も何も、まずあんたたちはまだ何も起こしてないでしょうに。

「ここで立ち上がらないと、シオ姉の、コハナの誉れとしての名が廃るわよ?」

そうやってすぐ人任せにしないで自分たちで何とかすることを覚えなさいよ。

鼻息の荒い双子の弁は軽く内心であしらって、それでもその場の全員の視線を受け止める。

それぞれに何かを期待するかのような目は何なのだ。

「双子。まずアンタたちはそれを任されて、やれるわけ?」

「もちろん、シオ姉の一声で村中大賛成よ」

「そうよ、シオ姉の一声は偉大なのよ?」

だめだわ、これは。

「ミオ、あんたは?」

「わ、私?私はー…」

「世界大会とか言ってたのは、何なのよ」

「私、は、…そういう場所が村にあったらいいな、って思っただけで…」

そういう、とは、どういう場所だ。

「あの、仲間を統率する戦士、っていうのはできないけれど、戦闘を統率する僧侶だったらできる、とか」

カリスマある武闘家にはなれないけれど、仲間の窮地によって攻守どちらでもこなせる旅芸人にはなれる、とか。

と、いくつかたとえを上げて、ミオは顔を上げる。

そんなふうに、自分が得意なことを発見できる機会なんて、狭い世界では簡単に訪れることはないから。

「自分で自分の可能性を広げられるような、そういう制限のある場所が村にあったらいいな、って思ったんです」

それは世界中を見てきた今だからこそ、この村にあることが相応しいような気がして、とミオは言うけれど。

「え?これそんな複雑な話だっけ?」

「みそ子、あんた一人、なんか違う方向に行ってるわよ?」

そう双子に突っ込まれて、スミマセン、と恐縮している姿に。

ああ、そうか。と思う。

思慮深い。自分を殺して、一歩引いた立ち位置にいる。…あの二人が言っていたことが、解ってくる。

シオは今、ただひたすら内向的で人との争いごとを苦手としている妹の、内なるものを見ているのだと思った。

「でもそれがヒロ君の村興しにもなるなら、それが実現出来るように私、武の育成に頑張りますから」

ミオにも闘争心がないわけではないのだ。

ただ、シオの持つそれとは全く違った形で、シオには思いもよらない方向へと、発揮されている。

だから、だれも気付かない。

「うん、頼りにしてます」

と言うヒロと顔を見合わせて、ほのぼの笑いあっている姿からは想像もできないけれど、確かにある。

確かに息づいている、それが今やっと、成長を始めているのだ。

だからこそ、今目を離すことは得策ではない。

「ミオちゃんは経験者だから、俺なんかより良く解ってるだろうし」

「だーかーら、それを許さないって言ってるの」

「どーなのよ、シオ姉!」

双子の抗議に、ヒロがまたへらっと笑顔を見せる。

「いやー俺の村、開催以前にまず道つくったり橋かけたりしないと人これねー村だから」

お先にどうぞ、などとたわけたことを言うのには呆れるしかない。

まったくろくでもない仲間を捕まえたものだ。

シオは夕飯前、妹たちとヒロが離れ一人になった隙を狙い、何を企んでいるのよ、と問い詰める。

今日の村中を巻き込んでのお祭り騒ぎ、あれにミオを言いくるめて何の理があるのか。

そういえば、ヒロはまるで悪びれもせず、口を割った。企みなら二つ、と。

「姉さんたちの、意識改革、ができたらな、ってとこで」

この村では後衛の地位は割と軽んじられているようだったので、回復要員はただおとなしく控えているだけの職ではない、

ということを出来れば全員に経験してもらいたかった、と言う。

武の村だから、前衛が至上の職だと言われるのは良い。

だが思い込みだけで後衛の立ち位置を、パーティのオマケのように認識されているのではミオが報われないと思った。

「あとは、まあミオちゃんが村に戻りやすいように」

遊びでも、お祭りでも、これが定期的に開催されるなら、ミオの賢者としての能力は重宝されるだろう。

村を離れても居場所がある、乞われて歓迎される、そういう役割をミオが旅の間にでも心のどこかで意識していることで、

もっと頻繁に、気楽に、村に戻れるのではないかと考えた。

「そんなとこ、ですかね」

というヒロの言葉は、そのちゃらけた見かけによらず、一途に真摯で、普段からミオのことを思いやっているのは明白だった。

自分たちが理解しあっていれば解ってもらわなくても良い、と言っていた二人と。

自分が解っているからこそ、理解してもらいたい、と言うヒロと。

まるで違う考え方なのに、どちらもミオと言う個人を尊重している姿勢は違えることのない現実。

姉として、自分はそれを出来ていただろうか。いや、血のつながりがそれをさせなかったのではないか。

姉と妹、という関係がミオを、自分とは別の、独立したただ一人の人間として見れていなかったのではないか。

そんな思いを味わわされ、ますますこの仲間たちが嫌いになりそうだ、と唇をかみしめるシオに、ヒロがおどける。

「あとは、村興しが現実になれば、主催報酬として何らかのゴールドが懐に入れば尚良し!」

その笑顔には、ただ呆れるしかない。後悔が馬鹿馬鹿しくなるほどの悩みのない能天気さにどうでもよくなる。

冒険者として名乗りを上げて、その目的が村興しだなんて、いい笑いものでしかないわ、とため息をつくが。

村中に笑われても、それでもミオはもう泣いて逃げ帰ったりはしないだろう。

ろくでもない仲間がいて、ろくでもないことをしでかして、それで満ちたりるというならそれもいい。

あの父ですら安心しているのだから、間違いない。

そうさせてくれる仲間たちと世界中のどこへでも行って、好きなように名を上げてくればいい。

情けなくても、みっともないことでも、シオだけがそれを叱ってやれるのだから、問題ない。

そうか、困った妹たちを叱り飛ばすために、自分はまだまだ上を目指していかなければならないのか。

(それでいい)

はるか高みを、その孤独を、妹たちの成長が埋め合わせてくれる。

この村は、始まりの地。

試練の旅から戻ってきて、また新たな始まりの世界へと旅立っていく。

それぞれの、志をもって。

 

 

 

 

 

見送りの日。

「どうでもいいけど、もっと頻繁に顔見せなさいよ」

と、シオが言えば、驚いて飛び上がる勢いで、ミオが返事をする。

「ス、スミマセン!!」

気を付けます、とまで言われて、別に叱ってるわけじゃないんだけど、と知らず苦笑する。

それにもまた、スミマセン、と返してくる。条件反射なのか頭まで下げるのを、片手で無理やり上向かせ。

「ほんと、出てったら出ていきっぱなし、ってね。母さんそっくりね」

そんなところは似なくてもいいのよ。

「え、…っと」

「父さんが寂しがるから」

近くに寄ったら顔くらい出しなさい、と言ってやれば、はい!と笑顔を見せた。

そうして待ち構えている仲間の元へ一目散に駆け寄っていく後姿に、胸が突かれるような痛みを覚える。

寂しいのは、父よりも自分なのか。と考えて、即座に首を振る。

「いやだ、歳かしら」

などとつぶやいた背後から。

「独り言いうようになったら、そりゃもう立派な歳だよ」

「だから早くお婿さん捕まえないと、ますます老化の一途よ?」

と、哀愁の一幕さえも吹っ飛ばす憎たらしさで、双子がからかいの声を投げる。

「うるさいのよ、アンタたちは!さっさと旅に出なさいよ!」

「やーよう、シオ姉がちょっと感傷的になってるもん!」

「そーよう、あたしたちはまだもうちょっといてあげるから安心してよ!」

ありがた迷惑!

ただひたすら、ありがた迷惑!!

「シオ姉、父さんとこでご飯食べて帰ろうよ」

「今ならシオ姉の好物作ってくれるわよ」

なんなの、なんで皆してちょっとかわいそうな姉、とかいう扱いになってんの!

腹立たしい!と踵を返す。

小生意気な双子が手招く、父の待つ家へと向かって。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ハチャメチャ若草物語…ちゃんちゃん♪

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現実は志高く

2015年07月07日 | ツアーズ SS

長い間、村を留守にしていた末の妹が戻ってきた。

放浪癖のある母親に代わって、長姉である自分が育ててきた妹だ。

いや、姉の厳しい扱きに四六時中弱音を吐き父親のもとに逃げ隠れしていたような妹だから、

自分が育てたというより、父が育てた、というほうが正しいのか。

いやいや、それは語弊があるな、とシオは一人眉をひそめる。

 

ここは下の村にある父の家だ。シオも幼少期はここで父に甘やかされて育った。

よくあるように、蝶よ花よと可愛がられ、お姫様扱いという言葉通りに大事に大事に育ててもらった。

だが、コハナの武は大輪より勇ましい、と近隣の村にも知れ渡るほどに、武勇に明け暮れる女性たちの村だ。

シオも物心ついたころには、母に習い、周囲の女性たちを打ち負かし、武でもってその地位を確立した。

今では後輩でシオに逆らう者はおらず、同期にも一目置かれている。

いや、年頃の女性たちはほどよく所帯を持ち、子供の育成に力を割いているという事情もあるのだが…

 

それは置いておいて

 

と、面白くない思考から意識をそらすように、シオは窓から外を見た。

あまりにも父が庇いだてし、それに甘えてすっかり敗者としての癖がついてしまった妹の将来を案じて、

「一人前になるまで帰ってくるな」と言い置いて、無理やり村の外に出した。

シオもよく世話になった顔なじみの冒険者の酒場に預けたので、心配することもなかったが。

(そう、私じゃなくて、父さんが心配するから)

時折、身を隠して様子を見に酒場を訪ねれば、そこの女主人は、「うーん、ちょっと今ね」と言葉を濁した。

対人関係が苦手で、争い事に向かない、内向的な妹だ。

村から出して、強引に冒険者として紹介させても、そうそううまく行くはずがないことは解っていたので、

女主人の言葉にはそれほど落胆はしなかった。

おそらく、宿の下働きでもして日を稼いでいるのだろう、と考えれば、そのまま酒場に乗り込んで引っ叩いてやろうかと

何度思ったことか。

この場合、シオが落胆しないのは、達観しているからではない。単に、落胆するより激昂してしまう性格だというだけだ。

…それを女主人になだめられて、村に戻る。

そんな往復を、幾度繰り返しただろうか。

「僧侶として他の冒険者に求められて旅に出た」…と酒場の女主人に聞かされた時は、にわかには信じられなかったものだ。

もちろん、それを望んでいた。

一人の冒険者として見知らぬ人間たちと関わり、揉まれ扱かれ、切磋琢磨しながら闘争心を目覚めさせられれば全て、思惑通り。

妹の性格を鑑みれば高望みであるような気もしていたし、周囲からはやりすぎだと非難されるのも仕方がないと思っていた。

思っていたけれど、現実に、ミオが旅に出たと聞かされて一番に思ったことは。

 

「よりによって僧侶かよ!!」

 

だった。

…うん、思ったというか、実際、その場で叫んだことなのだが。

目的や旅の工程にもよるけれど、大体においてパーティに回復役は必須だ。

僧侶などは多少腕が悪くても、宿に引き返す手間や回復薬で荷物が嵩張ることを思えば、(そう多少腕が悪くても)優先して雇われる。

雇われて、あまりの腕の悪さに解雇されたりすることもあるだろうが。

あの子はどっちだろう、と旅に出た妹を思う。

腕の悪さと効率を秤にかけ、この程度は仕方ない、と、誰かの旅に引き回されているだろうか。

それとも頻繁に解雇されて、酒場に戻ってくるという事を繰り返しているのだろうか。

どちらにしても情けない状況に、手放しでは喜べなかった、というのが親代わりとしての自分の感想だったが。

 

旅の仲間を引き連れて、末妹のミオが戻ってきている。

 

快活で口は達者そうな小娘と、へらへら弱腰でおべっか上手の男が一人、なぜか始終極限まで偉そうな男が一人。

なんだ、このパーティ。

どういう意図で集められたのか皆目見当もつかない上に、普段の交流も成り立つとは思えないちぐはぐさが気持ち悪い。

しかも、どの人間ともミオがうまく付き合えている気がしない。

村にいた頃のミオの交流関係といえば、自分と、父と、レンリという同世代の子が一人。

家族を除けば、唯一付き合えていたのがレンリという事になるが、さすが類は友を呼ぶ、というだけあって

ミオとレンリ、どちらも村では後ろ指をさされ嘲笑されるほどの、出来の悪さだった。

それを思えば、このパーティでのミオの立ち回りなどは、とうてい望ましいものではないだろう。

おそらく誰にも何も言い返せず唯々諾々と従い、体のいい回復要員として下っ端同然なのだろう事は、容易に想像がつく。

これでは、あまりにも情けなさすぎる。

村を出したのは、そんな事をさせるためじゃない。

シオは、自分の失態をこれでもかというほど、突きつけられたのだと、思った。

父にも、母にも合わせる顔がない。やはり、どんな嘲笑があってもミオは手元で育てるべきだった。

それが、一人前になるまで戻ってくるな、と突き放した妹の結末だと思っていたのに。

 

「あいつにあるものは、責任感と正確さだ」

 

と、仲間の一人が言った。

 

ミオが戻ってきた初日、武の村で行われた対人戦、長姉対末妹、という布陣で決着をつけた時の事。

掟に従って、敗者として村の外に追い出されたミオの仲間の様子を見に行ってみれば、二人してのんきに野宿をしていた。

その二人に、ミオが縄を解きにきた、と聞かされて驚く。

あの妹なら、勝者の女性たちに萎縮して行動を起こせないだろうとふんで、自分が縄をほどきにきたのだが、それも無駄になった。

ミオにそうさせる仲間、というものに興味があったので家に招いてみたが、拒絶された。

まあ、この年頃は虚勢をはって上等、と思ったので手を変えてみる。

下の村に行くという情報を与えてやれば、シオの思惑通り、勝手についてきた。扱いやすさでいえば、単純だ。

だからこの際、ミオと引き離してしまおうと思った。このままミオを村にとどめ置いて、仲間たちは勝手に村を出ていけばいい。

彼らが多少ごねても、力尽くならいくらでもやり様はある。現に、今彼らは敗者であるということ。

それが。

シオの真意を聞いた瞬間、彼らは敗者らしからぬ不遜さで、シオに牙をむいた。

ミオのもつ真価を解らない人間にミオを引き渡すつもりはない、そう堂々と宣告する。

ミオの真価?なんだそれは、と訝しむ間もなく、示された答え。

責任感と、正確さ。

「ミオちゃんはどんな時でも最後まで自分のやるべきことをやり遂げようとするんだよ」

「そんなこと…」

それは当然の事。それが出来ないというのは、まず人としての起点に立てていないも同然ではないか?

「それが出来ないこともあるんだよ。自分の行動で、誰かが失われる、最悪の事態になる、全てが終わる」

そんな状況を目の当たりにして竦まない人なんていないよ、と仲間の少女が言う。

それは月明かりのない道で聞かされたこともあって、ひどく、寒々しい響きに感じられる。

ミオは、このパーティは、どんな旅をしてきたというのだろう?

「誰だって失うのは怖いし、最悪を引き起こした責任を一人で背負うのは恐ろしいよ」

だから躊躇する。少しでも楽になれる方法を考えあぐね、その判断を他者に委ねることで平静を保とうとする。

無意識に、誰かに、何かに救いを求めて慟哭する究極の戦慄。それでも。

「ミオちゃんは答えを出せるんだよ。ウイたちが迷った一瞬で、答えを出してくれるの」

「しかも、それが恐ろしく精確だ」

そういった二人が、カンテラの炎に互いの姿を確認して、うなずき合ったように見えた。

「ミオちゃんはいっつも自分以外の誰かを優先するっていうか、一歩引いた立ち位置にいるっていうか」

「自分を消して常に全体を見ることができる視野の広さは、衆において何よりも貴重だ」

「お喋りだって、ゆっくりだけど、ウイたちが思いもよらないこと言ってくれたりするし」

「思慮深いのは良い。普段の何気ない状況にでも意味や意義を考えることで、緊急時に思考が停止することがない」

そういうのがミオちゃんだって解ってるから、とウイがシオのそばに駆け寄る。

「ウイたちは心底ミオちゃんを信頼してるし、すごいんだって尊敬してるよ」

だから村に連れ戻すなんて言わないで、という声は真剣そのものだ。

なるほど、ミオはないがしろにされているわけではないようだけれど、とシオはやや気圧されている自分に気付く。

こんな、10ほども年の離れた子供たちに。

「それでも」

と、シオはかるく咳払いをして、気圧されていた自分をはらい落とすように、語気を強める。

「この村では、後衛なんて地位が低いものとみなされてしまうのよ」

姉として、ミオをそんな処遇のまま預けておく気にはならない、と嘯く。

自分たちの方がよほどミオを理解している、と主張する彼らへのせめてもの抵抗だ。

解っている。しみったれたプライドだという事も。

だがそれを気にすることなく、ウイが、なーんだ、と笑った。続けて、背後から低い声が。

「そんなもの、あいつがその気になればいくらでも前衛でやれるだろ」

それは、まるでこのパーティでは当然の事であるように、「そうだよね」と、ウイもそれに同意する。

このパーティに必要なのは僧侶ではなく、ミオなのだ、という事を示すように、その後に続く会話は淀みない。

「ミオちゃんが前衛やるんだったら、ウイが僧侶になってもいいし」

「あほか!お前にだけは命預ける気にならねえよ!」

「ええー?じゃあミカちゃんが僧侶やる?ウイはそれでもいいけど」

「やれるわけないだろ、俺が!」

「え?じゃあどーする?」

「ヒロがいるだろ。あいつ、意外と僧侶に向いてると思うけどな」

「あ、それはウイも思ったことがある!なんでヒロは武闘家やってるんだろうね?」

「…盾買わなくていいからだろ…」

「あ、そっか、そういえばそんなこと言ってたよね…」

今はお金あるし頼んだらやってくれるかも、なんていう会話を背中で聞いて、シオは。

(脱力感が半端ないわ…)

と、夜道を進む。

(なんなの、この子たち)

それは、今日はもう何度目か解らないほどだけど、あきれ返るしかない。

ミオが冒険者として強く立派に振る舞えること、共に旅をしてきた自分たちが一番解っているという。

だから、今日の敗戦も自分たちにはどうでもいいことなのだ、と主張されては、ただのインチキ集団なのかと感じたり。

ミオは自分たちに絶対必要なのだ、と乞われては、たちの悪い詐欺集団のようにも思えたり。

(したけれど)

村に戻ってきたミオの成長の具合は、結果ではなく、過程なのかも知れないと思う。

不覚にも、こんな奇妙な仲間の証言で、そう思ってしまった。

村から出したこと、妹と見ず知らずの他人の手に委ねたこと、間違ってはいないと思いたいのは自己弁護ではないと言えるだろうか?

そんな複雑な思いを、唯一話せる相手、父親が戻ってきてシオは愚痴を吐く。

上の村にはミオともう一人の男を残してきている。それは自分が見張っているからいいとして。

下の村に連れてきたウイとミカの二人の様子を見張っておいてね、と、昨夜に言い置いたことを、今再び確認しに来たのだ。

「あの二人、どう?」

と、今日の様子を尋ねれば、父親はお茶を淹れてくれながら、穏やかにほほ笑む。

「いい子たちですよ。今から、シバ君のところでお昼をごちそうになるんだそうです」

気になるならシオも行ってきたらどうです?とからかわれて、「い や で す」 と一言一言区切るようにして返す。

あの家とは昔から仲が悪い。シオ自身の世代から、ミオとレンリの世代にまで一貫して、友好的関係にはない。

それにただ笑って答える父に、よく知ってるくせに、と内心で毒づいて。

あれだけミオを甘やかして、庇いだてしてきた父にしては、随分、どうでもいいように見える、とシオは父を観察する。

「ミオがリーダーなんですって」

どう思う?

「ああ、だからミオはあんなに張り切ってたんですねえ」

「それだけ?!心配じゃないの、父さん!」

ミオが村にいた時は、あれやこれやと様子を見に来ては大丈夫かと心配し、やりすぎてないかと口出ししてきたくせに。

それをシオがいうと、父は困ったように笑う。

「あの頃はミオが毎日べそかいてましたからね」

でも今のミオはとても楽しそうですよ、と言われて言葉を失う。

楽しそうだから、生き生きしているから、何も問題はないと思っていると言われたら、…返す言葉もない。

はいはいスミマセンね、毎日泣かせてたのは私ですよ。と、シオは投げやりにお茶を飲む。

「その毎日があったからこそ、ミオは村の外でも頑張れたのでしょう」

と、へそを曲げた娘に気を遣う風でもなく、自然に穏やかな声で父が続けた。

「君が、お母さんを追いかけているように、ミオも君を追いかけて強くなっていくんですよ」

そういわれて、シオは年中家を空けている母の面影を脳裏に描く。

その面影は、シオには理想だった。身近な母の強さに憧れ、母を理想像として常に意識を高く持ち続けている。

母のように世界で通用する冒険者になるために、その後姿を追ってどこへでも行ったけれど。

「そうかしら」

ミオが、この自分にそんな憧憬を抱いているようには思えない。

「毎日怒鳴られて、嫌々稽古をつけられて、無理やり冒険に連れ出されて、揚句、たった一人村を追い出されて」

と指折り数え、父を見る。

「どこにあこがれの要素がある姉でしょうね?」

その何に対する嫌味だか解らないシオの言い様に、父は破顔一笑だ。

「そういえば、ただの鬼婆ですね」

「ちょっと!婆はないでしょ、婆は!」

年頃の、いや年頃をちょっと上回っていることは認めるが、年頃の娘に対しての気遣いがない言葉に、傷つく。

それでなくても、お互い以外の人間に容赦のない双子から、行き遅れだの骨董品だの惨憺たる悪口雑言を食らうのだ。

父親ならそこのところ、ちょっと慮ってくれてもいいんじゃないの?と抗議すれば、

「いやいや、あの子たちも悪気はないんですよ」

と、毒にも薬にもならない言葉が返ってくる。

「どこが!悪意の塊でしょ?魔界から生まれ出でたる悪意の権化が奴らだ、って言われても驚きゃしないわよ」

「君もなかなか言いますねえ…」

「それだけ割りを食ってるのよ、長女なんて」

母親は常に不在で子供たちを放任し、双子はまるでいう事を聞かず好き勝手、末妹は顔を見れば逃げ回る。

それでも、この気苦労を誰かに肩代わりして欲しいと思ったことはない。それはきっと。

「わかっていますよ」

と、いつでもシオに寄り添ってくれる父の存在があるからだ。

「あの子たちも、長姉の偉大さを感じているからこそ、君に期待するんですよ」

姉を追いかけたいけれど、その高みには到底かなわないことを知って、自分たちの理想をシオに託すのだ、という。

村での名声、世界への覇権、それをもつ姉に、誰もが羨む伴侶と、子孫繁栄という完璧な理想を手に入れてほしいのだ。

「一般では優秀な姉を妬んだり仲違いすることもあるような中で、あの子たちの思いは純粋ですよ」

「…いや、ちょっと待って…」

だから悪意はないのだと言われても。

「よっぽど質が悪いようにしか思えないけど」

というシオの言葉にはただ笑って、父は穏やかにシオを見る。

「ミオも、やっとそこに到達したばかりなんでしょう」

村にいた頃は、偉大すぎる姉の影にただ隠れていれば良かったけれど、村を出たことでわかる事がある。

自身を覆っていた影、その全形を捕らえることで初めて姉を認識することになるだろう。 

姉の影、それがミオにとってこれからどんな存在になるかは、まだ解らない。

「あの子は人よりちょっと遅かっただけです」

これから急成長するのかもしれないし、ここが成長の打ち止めなのかもしれないけれど。

これからです、と、シオに理解させるように放たれた言葉。

いつでも娘たちに心を砕き、それぞれの立場に寄り添ってくれる父の言葉が素直に響く。

母の代わりに家を守り、妹たちを導き、村の先頭にたって全力疾走してきたシオの、孤高にも。

いつも寄り添ってくれているのだ。

「じゃあ、うかうかしてられないわね」

と、立ち上がるシオに、父は首を傾げた。

「急成長することもあるんでしょ?」

信じがたいけれど、と、知らず笑ってしまったのは自虐なのか、優越か。

「油断していて末妹に追いつかれた、なんて笑い話にもならないわ」

それは姉として妹の潜在能力を見誤ることに他ならない。そんな失態を、己に許すわけにはいかない。

そのシオの意思をくみ取って、父は苦笑する。

「君はそろそろ、妹より自身に目を向けてもいいかと思いますよ」

「?」

自身に?もちろん、いつでも目を向けている。厳しく、妥協を許さない目を向けられるのは、自分しかいない。

「そうではなくて。…ああ、でも、そうだから結婚相手にも一切譲ることがないんですかねえ」

その発言には、あるまじきことだが、思いっきり動揺させられる。

「村にも、妹にも、自分にも、その志の高さは父としては愛おしいばかりですが」

結婚に対してまでも、そう志高くある必要はないと思いますよ、なんて言われても。

「なっ、何よ、何を言ってるのよ、私はミオに対する責任を言ってるのであって…」

そうだ。ミオがどう成長するかというこの一大事に、行き遅れだの骨董品だの関係ないではないか。

と、焦って退散しようするシオとは真逆に、座ったままの父はのんびりと振り返る。

「今では月一でくる商隊の彼くらいでしょう、随分長い間シオを気にかけてくれるのは」

ちょっとー!!シオ、心の中で、大絶叫。

どうして父が彼を知っているのか。いや、父も商隊とは懇意なのでそりゃ知っているだろうが!

いや待て、どうして自分は彼とか呼んでいるのか、あのどうでもいい朴訥とした男の事を!!! 

「何それ何それ!知らないわよ、勝手に父さんの都合で話を進めないで!」

「おや、そうですか?」

「そ う で す !!」

と、話を断ち切るように一音一音渾身の力を込めて発し、それ以上会話が続かないように家を出た。

何か父の声がした気がしたが、もう扉を閉めていた。

おそるべし、父。

何もかもを見透かされ、それでもシオの望むように、とただ見守ってくれているのは知っている。

知っているからこそ、母の面影にも、妹たちにも、常に高みからの自分を見せることができる。

それ以外の自分なんていらない。

いらないのだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

綺麗に完結、でもオマケでヒロの「面白いこと思いついた」やっちゃいます

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理想は美しく2

2015年07月06日 | ツアーズ SS

ヒロにおやすみなさいと告げた後、自室に戻ろうとしていたミオを呼ぶ声。

「みそ子ーッ、ちょっと来なさーい!!」

この声は、双子の姉のトールだろうか?トーリだろうか?

ともあれ、ミオは急いで引き換えし、皆で食事をとる部屋へと駆け込む。

「はいっ、何でしょう!」

その部屋のテーブルには姉3人がそろっていて、ミオが顔を出したのと同時に一斉に振り返る。

知らず気おされて入り口で立ち止まるミオに、トールが手にしていた紙を突き出す。

「これこれ、どういうことよ?あんたが書いたの?!」

これこれ、が何なのかわからなくて、ミオは恐る恐る3人が囲んでいるテーブルへと近づき、その上に広げられている紙の束を見た。

「シオ姉が、モモタロちゃんから預かってきたんだって。アンタの荷物でしょ?」

と、トーリがミオのカバンを椅子から取り上げて、ミオに見えるように示す。

それは確かにミオのカバンで、テーブルの上の紙の束は、ミオが書き記してきた旅の記録だった。

 

「これを見てもらったらいいんだよ」

 

家に戻る前日、ウイがそう言ってミオの荷物にいれたものだ。

冒険者として成し遂げてきたこと、これから成さなければならないこと、それを姉にうまく説明する自信がない。

どうしても姉の前では萎縮してしまうであろうミオの不安に、ウイが提案してくれたことだ。

数々の村を訪れ多くの事件を解決した事だとか、天界の危機や地上の壊滅を救った事だとか。

それはミオの冒険者としての功績というにはおこがましく、それそのものがどのように説明していいのか解らないほどの壮大さ。

村を離れていた間の事を父や姉にどう伝えようかと悩んでいたミオに、ウイが笑った。

「ミオちゃんは、ただいま、って言うために帰るんでしょ」

そしてお土産には、この記録があればいい、と言う。

 

旅の間に戦ってきたモンスターたちの記録。

 

出没地域、外見の特徴、戦闘の特性や注意点、強さのしるし。

ヒロやミカの意見も取り入れて書き上げた記録は、今やちょっとした図鑑のようにもなった。

その出来には、「これ、どこかの書店に持ち込んで製本してもらったらベストセラー狙えるんじゃねえ?!」と

ヒロが興奮し、また何を言ってるんだかとミカがあきれ返っていたものだが。

そうか、これを見てもらえば、何を説明するまでもなく、ミオの旅路は理解されるだろう。

今の自分にはまだ、村の役に立ったとか、誰かを救ってきたとか、胸を張って言える強さはないけれど

世界をその足でめぐり、この目で確かめてきたことは間違いなく自分の力になったのだ。

ミオが恐れることなく認めてもらえる真実。

それを、ウイがシオに預けてくれた。

三人の姉が視線を向けてくる中、深呼吸を一つ、ミオはしっかりと頷いた。

「はい、皆で旅をして実際に戦ってきたモンスターの記録です!」

そのミオの返事を、長姉は無言で、双子の姉は疑わしげに声をあげて、それぞれに受け止めた。

「あ、ま、まだ完全じゃないですけど…、でも一度でも戦ったモンスターは漏らさず記録してます」

「ええー?ほんとに?ほんとにコレ、あんたら全部の地域を旅してたって事?」

前のめりにミオに食って掛かるトールを横目に、そうね、とシオが手にしていた束を机の上で綺麗に揃える。

「私が行った砂漠の島と、草原と、雪原、…確かに記憶とそう相違はないわね」

揃えた束をトールに渡せば、それを受け取って椅子に座りなおしたトールが、不満そうにそれを眺める。

「けど、シオ姉が行ったことない地域もあるんでしょ?」

と、トーリが手にしていた束をシオに差し出せば、それを受け取ったシオがミオを見る。

「竜の門を超えたの?」

火山地域の紙束を示し、どうやって?と問うてくる視線に、そうか、とミオは息をのんだ。

ウイは、世界中の事件を解決したことや人々を救ってきたことを、誰にも解ってもらえなくていいんだよ、と言っていた。

誰に話しても信じてもらえない事は、ある。ただ、自分たちが関わってきた人たちとの絆があればそれでいい。

それにそういう武勇伝は自然と伝え継がれていくものだ。「吟遊詩人さんのお仕事とっちゃかわいそうでしょ」…と。

そんな話をしていた時は、ウイらしい、軽やかにおどけた捉え方だ、とほほえましかったものだが。

この記録を見せるだけで、その地域へ入った証になる。自力で道を切り開いて来たことの、証になるのだ。

「え、っと、…話せば、長く長くなるんですが…、何から、話せば…」

壮絶だった旅路を、あの厳しかった時間を、共有していない人に解って欲しいと思うことがもう途方もない願い。

ウイのいうことは正しい。

と、思ったと同時に、トーリが「長いのいらなーい!」と声を上げる。

その声に姉たちを見れば、それはこの場の総意なのだと解った。

そんなこと言われても。手短に要点だけ、話下手な自分には難易度が高すぎる。いやそもそも要点ってなんだ。

要点。閉ざされた地域に足を踏み入れたこと。どうやって?

 

「じっ、自力で!実力を認められて、行ってきました!!」

 

その瞬間、部屋に張りつめたような沈黙。

うわー言っちゃったー…、と固まったものの、それ以上の言葉は出てこない。

三人の無言の威圧を感じながら、居心地の悪さをどれくらい味わっていただろうか。

ああそう、とシオが再び紙の束を机の上で揃えて、それを中央に置いた。

「えー、シオ姉、信じちゃう?今日の、あの戦い方見ても?」

「あれはアンタたちも十分ひどかったわよ」

後から混戦になったから有耶無耶になっただけよ、と言い放つシオに、双子の猛抗議。

「それはシオ姉があたしたちの戦い方を理解してないからだと思う!」

「そうよー、だから普段からあたしたちを旅に連れてけって言ってるでしょ?」

「まったくだよ、普段から連携できてたらあんなの瞬殺だよ」

「てことで戦犯は身勝手なシオ姉よね」

 

「あんたらに身勝手とか言われたくないわ!!」

 

長姉と双子の姉とのやり取りを見ることは稀だ。

小さい頃は姉たちといるより父といる方が多かったし、上の村で過ごすようになってもほぼ下の村に逃げ帰っていた。

そうしている間にも双子の姉たちは連れだって旅に出ていることが当たり前だったのだ。

双子の姉たちにはからかわれ苛められていた思い出しかなかったが、自分だけでなくシオにもそういう態度なのか、と

ミオが目を丸くしていると。

「まあ、いいわよ、シオ姉はいつも勝手に旅に行っちゃうんだし」

「そーよね、たまーに連れてってくれても口うるさいったらなかったし」

「アンタたち、追い出すわよ」

いいよーだ、とシオに笑ってみせると、トールがミオの方に身を乗り出した。

「もー、みそ子がいるもんねー」

え?とミオが驚くのもお構いなしに、トーリが身を寄せてくる。

「そーね、まあ昔よりは全然使える子になったわねー」

と、双子の姉にがっつり左右を固められて、ミオ自身、硬直するしかない状況で。

「攻守いけるんでしょ?賢者?いいじゃん、次はあたしらと行こうよ」

「そうよ、あたしたちが行ったことないところに、みそ子が連れてってくれるのよね?」

期待してるわよ、とニコニコ笑顔で取り入ってくる二人には言葉もない。

これはどういう状況だろう?

「いえ、あの、えっと」

と、目が泳いでいるミオを知ってか知らずか、シオが、盛大な溜息をつく。

「やめなさい」

ぴし、っとした一声に、何かを言いかけた双子を遮るように、さらに厳しい一言。

「今のアンタたちじゃ、ミオの足手まといになるだけよ」

その言葉には、双子の抗議とミオの戦慄の絶叫とが重なった。

「えええー!!!」

それに対しても、うるさい、と一言で返しておいて、アンタたちは、と続ける。

「自分の思い通りに動かない人間とはうまくやれないでしょう」

「そりゃそうでしょ!」

「勝手なことされちゃ、たまんないわよ」

その言葉に頭痛でも覚えるかのようなしぐさを見せて、シオがいうことに。

「…あのね、普通の人間は、アンタたちの思い通りになんて動かないのよ」

「そんなことないわよ?」

「私たち、息ぴったりよ?」

ととぼけた返事をして、トールとトーリは再びミオの両腕を捕まえる。

「みそ子は、当然!あたしたちの言うことは何でも聞くでしょ?」

「聞くよね、あたしたちには逆らえないもんねえ?」

「アンタたちのそれは、ミオを奴隷扱いしてるだけよ!」

「えー?下っ端はそういう扱いでしょーよ?」

「アンタたちのそういうのが、上達を妨げてるって言ってるでしょう」

「もー、またシオ姉の口うるさいのが始まったー」

そんなやり取りの合間にも、ミオはトールとトーリの言葉を考える。

それは、どうあれ、二人がミオを認めて旅の仲間に誘ってくれているということ。

そのこと自体は、信じられないほど嬉しいという思いがある。涙が出そうなほど、嬉しい。

ずっと思い描いていたこと、弱い自分が嫌いだった頃。いつか強くなって、冒険者になれるはずの未来。

シオがリーダーとしてトールとトーリを従え、世界中で名をはせる冒険者の一団に、いつか自分も加わる。

それがミオの思い描いていた、理想。

シオはきっと褒めてくれる。トールとトーリにも苛められたりせず、もう父にも心配をかけることはない。

理想、完全に完璧で最高の状況。

それは思い描くだけで素晴らしく、苦もなく労せず、望む全てが手に入る美しいもの。

けれど、どこかで思っていた。

美しくて、あまりにも美しすぎて、まるで叶うとは思えなかった。

理想とは、手に入らないもののことをいうのだと、どこかで思っていたのだ。

それを。

 

「ミオちゃんは、両方手に入れられたね」

 

ウイが、そういってくれたことがある。

村の一員として恥ずかしくない、一人前になって、世界のどこにでも行けるような冒険者になること。

それが理想だけど、できるなら静かな家の中で日がな一日布を織ったり服を縫ったりしていたいのもまた事実だ。

名立たる冒険者になるには自分の力が及ばない事、裁縫職人になるには姉たちの手前許されないこと。

どちらの理想も、対立しあっていてどっちを捨てても、きっとどちらかは叶わない気がする。

そう思っていた幼い日の頃の事を打ち明けた時、どちらも捨てなくてよかったね、とウイが言った。

「だって今、ウイたちと一緒に冒険者になれたでしょ」

世界のどこにでも行った。誰も踏み込まない土地に、土地とは言えない天界に、…想像もしなかった冒険者になった。

そして村を出てきたからこそ、自由になって。

「冒険者の合間に、好きなだけお裁縫しててもウイたち怒ったりしないでしょ」

むしろミオちゃんに色々作ってもらえてウイたち大助かり!ね?と、言ったウイは、皆が幸せだよ、と笑った。

完璧で完全で最高の理想、とは少し違っているけれど。

それが、現実。

そうだ、さっきヒロが言っていたことも、同じだ。

理想と現実は違うのだということ。理想に囚われるあまり、現実をおろそかにしてしまってはいけない。

理想を現実に近づけるのではなく、理想は高く、美しいまま。

現実を、理想に近づけるのだ。

そうすることで、見えてくるものがある。

「私…」

ミオの現実は、まだ始まったばかり。

「私、まだお姉さんたちと一緒にいけません」

「ええー?何よー、断るとかー?」

「生意気ー、なんでよー?」

「だってまだお姉さんたちをぶっ倒してないですから!」

「はあ?」

シオと、トールとトーリ、三人と一緒に世界を旅することは美しい。

コハナ村の四姉妹として一目置かれる一団になる、父には孝行ができ、村中に絶賛されるだろう。

けれど。

「私、今一緒に旅をしている人たちを尊敬してます。だから皆の力になりたいし、頼られたいです」

そんな仲間が、ミオの立場を思って、村の女性たちに下ってくれた。

まだミオがこの村では未熟で力がない、という現実を受け入れ、今はそれでいいと許してくれた結果だ。

許し、受け入れるという心は、どんな力よりも強いと思う。だからこそ、全員でこの旅を続けてこられたのだ。

「そんな人たちを、皆に強いって認めてもらいたいんです」

そのためには、ぶっ倒すしかない。この村では。

「でも今の私じゃ、まだまだだから…、だから、まだお姉さんたちと一緒に行けません」

自分の言葉は、姉たちにどれだけ心を伝えられただろう。

どんな形を選べば、この思いは届くだろう。

姉たちに認められた嬉しさと、それを断らなくてはならない痛みと。

そこに続く沈黙、それを最初に破ったのはシオだった。

「アンタは、それを私たちに認めさせて、…どうしたいの?」

「え?」

どうしたい?

それはミオも考えていなかった事。村の皆が認めてくれて、それで、自分はどうしたんだろう?

またもや言葉を失うミオを見て、シオが、下に送っていった二人は、と言葉をつづけた。

「ミオの強さは自分たちが十分わかっているから、誰に解ってもらえなくてもいい、って言ってたわよ」

他の人間は解らなくていい。それは、自分たちの功績を解ってもらわなくていい、と言っていたウイの真意に通じる。

あの二人はそう思っているのだ。それもまた、強さの表れだと思う。

では、自分は。

ゆっくりと自分の思いに向き合う。どうしたいわけじゃない。ミオも、仲間のもつ様々な形の強さはわかっている。

わかっているからこそ。

「…私の、ただの意地です」

そう、告白する。

それは少しの情けなさを含んだ感情を吐き出した言葉であったのだが。

「いいねえ!」と、トールがテーブルを叩いた。

「え?」

と、驚いてトールを見れば、そういうの好き!と、快活な笑顔を見せる。

「いいじゃん、意地。みそ子、アンタは昔っからそういうの無かったじゃん?」

それにトーリが続く。

「そうね、少なくとも昔みたいにめそめそしないで話できるんだもん」

あたしも今の方が好きよ、と、にやり、と笑ってから、意味深に続けた。

「誘いを断るくそ生意気なとことかね」

「ほんとだよ、みそ子のくせに生意気だよ」

生意気で、意地っぱりで、めそめそしない子なんて。

「もう、みそ子とか呼べないね!」

と、トールが思いっきりミオの背中をひっぱたく。

ねえ、ミオ!、という力強い声と。

ひゃあっ、という情けない悲鳴が重なった。

平手打ち一発とはいえ、旅で鳴らしてきた剛腕にくらわされた背中の痛みに、声も出ず床に這いつくばる。

それを面白そうにのぞき込んで、トーリが笑う。

「あたし達の誘いを断ったこと、後悔すればいいわ。アンタが強くなるよりあたし達が強くなるから」

「そーねー、お土産ありがとねー」

と、トールも上機嫌でモンスターの記録を、ひらひらと振って見せる。「こういうのって、後続が有利だよね?」

「…は、はい」

と、答えるしかないミオに、シオが一枚の紙を差し出した。

何だろう?とそれを受け取る。

「渡せ、って言ってたわ」

何あれ?なんであんなに偉そうなわけ?というシオの言葉で、ミカの事だとわかってしまう。

四つ折りにされた紙を開けば。

<呼び戻し不要!!>

と、美しく整っている見慣れた文字が、紙いっぱいに書かれていた。

つまり、どういうことだろう。

いや、どういうも何も、下の村で勝手にやっているからお前たちはお前たちで勝手にやれ、という事だろう。

そうか、ミカはとりあえず下の村に不満はないらしい。

それは良かった。と思いながらも、ミカとウイがいないことが気にかかることが一つ。

ヒロが思いついた「良い事」は、ミカたちがいなくて不都合ないだろうか、と考えて。

(ミカさんの分まで、私がやれば良いんだ)

それだけのことだ、と気づく。

ミカは女性と戦うことを苦手としているらしいから。

この村でそれを当たり前のこととして育ってきた自分が、ミカの分まで活躍すればいい。

皆が、そうしている。

少しずつ、助け合っている。

ミオは、その短い手紙を丁寧に折りたたんで、お守りのように手の中に包み込む。

シオがそれを見ている。トールとトーリも、ミオが何か言うのを待っている。

目線が、違う。

あの昔、見上げているばかりだった姉たちは、今ミオが並んで立つことを認めている。

理想にばかり目を向けていた小さな自分は、世界に出て、そこからやっとこの村を直視する。

村を、姉を、自分を、真正面から見て。

「ただいま帰りました」

向き合うことで、言える言葉がある。

3人の姉は、それぞれの笑顔を見せてくれた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

多分、そのあと、ぼこられた

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理想は美しく1

2015年07月02日 | ツアーズ SS

故郷の村に戻って、仲間たちと一泊。

父に親しい仲間を紹介して、姉に冒険者としての自覚ができたことを報告する。

ただそれだけの簡単な帰省のはずだったが、現実はそうそううまくいかないものだ。

いつも、だいたいそう。

ミオが自分の中で思い描いている通りに事が進んだことなんてない。

あまりの不甲斐なさに、ひたすら落ち込むしかない。…今までなら。

そう、今までなら無力を嘆いて、背を向けて、家の中に閉じこもっていれば良かったけれど。

今の自分には、守りたい人たちがいて、その人たちの役に立ちたいという願望があって、落ち込んでいる暇なんてないのだ。

と、ミオが一人で自身を奮い立たせていると、「まあまあ、力を抜いて」と、ヒロにやんわり両肩を揉まれた。

そんな肩ひじ張ってると疲れちゃうよ、と笑われて赤面する。

 

姉たちとその取り巻きの女性陣を相手に、対戦を挑んで惨敗した。

ミカは村の外に出され、ウイとは、はぐれてしまった。

ミカの方には「絶対戻らねえ!」と拒否されてしまったので、致し方なく、はぐれてしまったウイの方を探して村を訪ね歩く。

その最中に、ミオはすれ違う女性たちに声をかけられては立ち止まり、また声をかけられては立ち止まり…

という状況になってしまっていて、一向にウイと合流できそうにない。

どこかにいるのだろうけれど、お互いすれ違ってやしないだろうか?そう思っていた矢先、また一人の女性に声をかけられる。

「あ、あんたさ、さっきボロックソに負けてたでしょ」

と、からかうように声をかけてきた女性は、姉たちの派閥ではない。

だから対戦には加わっていなかったけれど、村の闘技場での対戦は日常でそれを観戦するのもまた当たり前のことだったから。

ミオとヒロは、さっきからそうしているように、彼女に応えるため足を止める。

「混戦になる前も思ってたけどさ、おっ上品すぎて見ていらんなかったわ、ひどすぎ!」

と、あからさまに攻撃的なその口調に、昔の自分なら泣き出すか、逃げ出すかしていただろうな、と思う。

だが今は。

不思議なことに、村の女性たちの厳しい物言いや上から目線の態度にも、ひるむことなく向き合える。

ヒロがそばにいてくれる、という安心感もあるが、ミオにはそれ以上に、自分の変化がわかっていた。

「は、はい、私たち対人での戦闘が初めてだったので、守りに入ってしまって気が付いたら身動き取れなくて…」

私の判断ミスです、と返事を返すと、あーなるほどねー、とその女性はうなずいた。

ただそれだけの事。ちゃんと人に向き合えば、相手は話をしたがっているのだ、ということが解る。

言葉は荒くても、口調はきつくても、ミオが返事をすれば女性たちはちゃんと話を聞いてくれた。

「やっぱり対人は一歩でも引いたらダメよ、礼儀正しく、相手を尊重して、とかやってたら馬鹿みるわよ?」

攻めて攻めて攻めて、卑劣だって言われるくらい攻めるのよ、とこぶしを振り上げられて、思わず身を引くと。

「ほら、それが駄目だっつってんの!」

と、即座に説教されてヒロと二人で、はあスミマセン、と身を寄せ合う。

そんな様子を呆れたように見て、まあでもさ、と彼女はミオを見て笑った。

「ああいう戦い方、村じゃちょっと見ないじゃない?面白そうだな、と思ってさ」

そう言われ、思いがけない言葉に戸惑っていると、いつまでいるの?と、聞かれる。

「あ、明日には、発とうかと思ってるんですけど…」

「ええー?つまんないわね、ちょっとやりあってみたかったのに」

もう少しいなさいよ、と言って、ね?今度はあたしとやろうよ!と、ミオとヒロの肩を叩く。

「味方でも敵でもいいけどさ、ま、考えといて!」

そういって、今から酒盛りだけど一緒に行く?と誘われたのを、仲間を探しているので、と断る。

それにも気分を害することなく、あ!そう、じゃあね!と笑って彼女は村の西側へと消えていった。

「いい酒のつまみにされてるんだろうなー、あれ」

という声に、え?と顔をあげると、ヒロが笑う。

「俺たちのさ、対戦。それをみんなであーだこーだ言って、酒飲んで盛り上がる」

そういわれれば、確かに村のあちこちで盛り上がっているのは想像にたやすい。

今の女性以外にも、賢者が珍しいから仲間になれ、とか、話を聞かせろ、とか、次は私の指示で闘ってみてよ、とか。

すれ違う女性たちにはとても好意的に、…いや好戦的に、声をかけられてきたのだ。

「お上品、って言われちゃいましたね」

その感想も、ほぼ全員の思うところだったようなので、今更意外には思わないが。

話をきちんと聞かなければ、好意的解釈だ、とは思えなかっただろうな、とミオは考える。

「まあ、ミカのやり方を実践してるんだから…、宮廷式だと姉さんたちにはそう見えるんだろうなぁ」

「そうですね」

否定されて傷つく。そこで心を閉ざして、人から逃げてばかりいた昔の自分。

今ならわかる、言葉はただの形で、その形におおわれている中身の方が大事だということ。

思えば出会ったばかりのミカの言葉が恐ろしくて、ミカという存在そのものを怖がっていたけれど、

ウイとヒロが傍で、「そういう意味で言ってるんじゃないんだよ」と、一つ一つ、拙いミオの受け取り方を補佐してくれた。

そんなやりとりがあって、ミカという人柄を理解して、今では彼と他愛ない会話をすることもできるようになった。

大事に積み重ねてきた日々が、今、村の中にあっても、自分をしっかりと支えている。

村の女性たちの気性や言葉は荒いけれど、恐れ逃げ出すような悪意を持ってはいないのだ。

(どうして、あんなに皆が怖かったんだろう)

ミオがそう考えてしまうくらい、女性陣は気のいい人たちに見える。

決して過去がなかったことにはならないけれど、それでも今この村は、目を背け逃げ出すような場所ではない。

そう思ったとき、ヒロが勿体ないな、というのが聞こえ、ミオは一人の思考に閉じこもっていたことを知る。

慌てて、ごめんなさい何ですか?とヒロを見上げれば、ミオではなく、村を見まわしていたヒロが、うん、と振り返った。

「明日、帰っちゃうんだ?」

「あ、はい、そう思ってたんですけど」

ミカにはもちろん、下僕扱いのヒロにも、遊ばれているらしいウイにも、なんだか申し訳ないな、と思う。

ヒロの村に遊びに行ったときには、総出であんなにも手厚く歓待してもらったというのに。

やっぱり、今の自分ではまだこの村での地位は低すぎて、皆をもてなすことができない。

それを素直に告げると、ヒロは、そんなことか、と笑った。

「俺はねー、村中総出で、めちゃくちゃ手厚く歓待されてると思ってるけど」

と言われ、ありえないヒロの言葉に、ええー?!と、大声をあげて立ち止まる。

「え、そんな驚く?」

「だって、だって…、ど、どこが?どうして?」

「だってミオちゃんの村って、武の村でしょ?武をもって全を制す…?」

「あ、えーと、はい」

「その村で、姉さんたちがめっちゃ戦え戦え、言ってくるのって、この村流の歓待でしょ」

「…え?そ、そうですか?」

うん、この村らしい流儀だと思う、と村外のヒロが難なくそう理解を示す。そのことも驚きだったが。

「ミオちゃんも一人前って認めてもらえたみたいだし」

そういわれて、さらに固まる。

「え?」

「さっきから、いろんな姉さんたちが声かけてくれるじゃん」

良かったね、と言われ、どう返したらいいのか解らないでいると、ヒロが先に立って振り返り、歩くように促す。

それに、黙ってついていく。

「だからさ、明日帰るの勿体ないな、って思って。こんな機会、そうないでしょ」

ヒロは、この事態を楽しんでいる?

じゃあウイは?ミカは?

二人にもこれは受け入れられることだろうか。

「あー、ミオちゃんは俺の村が気に入ってくれたみたいだけど」

「はい、すごく!」

「うん、それは嬉しいけど、ミカにとってはここの村より俺の村の方がストレスだったと思うよ?」

「えっ」

「ミカにとって耐えがたいのって、環境が粗悪なのと他人に構われることだから」

俺の村は風呂トイレ共同だし寝床はほぼ雑魚寝だし、チビたちまとわりついて離れないし大人も寄ってくるし。

それに比べると、下の村に小奇麗な宿があって個室で泊まれて、姉さんたちには追い払われて一人ぼっち、って

超快適!な状況じゃねえ?と、二つの村を比較されて、なるほどあのミカにとっては尤もだ…と思ったが、

それを口に出すのもヒロに失礼な気がする、と悩んでいると。

「まあ、ミオちゃんが気になるならウイ見つけた後で、俺はミカと一緒のとこで野宿しても良いし」

二人くっついてたらミオちゃんもそんなに不安じゃないでしょ、と確認されて、じゃあ私も、…と

ミオも、その野宿に加わろうかと口を開きかけた時。

「その必要はないわよ」

と、背後からいきなり声をかけられ、驚いてよろめいたところヒロとぶつかる。

ひゃーごめんなさい、いやいや大丈夫?とやりあっている自分たちを、呆れたように姉が見ていた。

「あ、お姉さん」

「今、二人を下の村まで送ってきたわ」

そう言われて、ミオとヒロは顔を見合わせる。

「え?今?ウイとミカを?あの道を?」

と、ヒロが確認しているのに、ええそうだけど?と事もなげに、長姉、…シオが答える。

この姉ならば月の光も乏しい下の村への道も、明かり一つで往復するくらい、たやすいことなのだろう。

本当なら、それをミオがやらなくてはならなかった。

「あ、あの、お姉さん、ありがとうございました」

慌ててミオがそれを言えば、あんたも早く戻りなさい、とだけ言って家の方へ戻っていく。

「姉さん、優しいな」

とヒロが感心したようにつぶやくのにも、ただ黙ってうなずく。

村で一人前と認められたようにヒロは言ってくれたが、それでもまだ力が及ばない。

まだまだ、姉のようにはいかない。

どれだけの努力を積み重ねれば、姉のようになれるだろう。

姉はどれだけの努力を積み重ねてきたのだろう。

力のみが義とされるこの村で。

そんなことを考えながら、姉の家にもどる。

元々は、母の家だ。その前は祖母の、そのまた祖母の。そうして代々、女で家を守ってきた。

今、この家を守るのは長姉。

そこに小さいミオの部屋がある。

あるけれど、いつも下の村にある父の家に逃げて暮らしていたので、自分の部屋に戻ったという感じはあまりしない。

そのどこか他人行儀な部屋をヒロにお披露目すると、入り口から中を覗いてヒロが言ったことは。

「でもちゃんと掃除してあるんだね」

いつ戻ってもいいように、とヒロに言われて、改めてそのことにも気づく。

シオも村では名立たる冒険者だ。家を空けることも多い。それでも、こうして整っている。

村を出なければわからなかったことが、そこここにあって、ただただ姉の偉大さに圧倒される。

「えっと、じゃあヒロくんが泊まってもらう部屋を…」

用意してもらってるか確認しよう、とミオがヒロを促して部屋を出る。

それを待ち構えていたのは、双子の姉。トールと、トーリ。

「よう下僕!」「やあ下僕!」

と、見事なハモリでヒロをからかう。

「あんたの泊まるとこは納戸よ、な・ん・ど!」

「下僕なんだから、私たちと同格に泊まれると思ったらダメよねー」

そう言った二人がヒロを連れて行ったのは、普段使わない家具や衣類を整頓してある部屋だ。

かろうじてソファーはあるがヒロには小さいだろう。

「ええ?そんなあんまりです!」

いわば物置部屋だ、お客様を泊める部屋では断じてない。というミオの抗議を、二人はせせら笑う。

「あれだけ大口叩いて負けといて、不満とか?」

「感謝して欲しいわ、本当は外の納屋だったのを格上げしてあげたのよ?」

下僕には納屋で十分だが、料理が意外に美味しかった功績を考慮して納戸に待遇改善してやったのだ、という。

それを聞いて、ははあ、なるほど、なんてヒロは感心しているけれど。

あんまりだ。…あんまりだが、今の自分にはそれを覆せるほどの権力はない。

まさかこんなことにも「力が欲しい」、と切実に思うようなことがあるなんて、昔の自分には想像することさえもなかっただろう。

「ごめんなさい、ヒロくん」

姉たちが寝静まったら、ミオと部屋を交換すればいい。…というか、それくらいしかできないことが申し訳ない。

わざわざ家に招いておいてこれだ。もう謝るしかない状況だが、ヒロはあっけらかんと部屋を見渡す。

「いやいや、料理つくっただけで待遇改善してくれるんだから良心的だよ」

「だって、それは…」

それはただの詭弁だ。双子の姉たちは単純にいやがらせで、ヒロをここに押し込めたのだと思う。

それは、ヒロにだってわかっているはずなのに。

「双子の姉さんは、可愛いよね」

どっちがどっちか見分けつかないけど、と言われて、もう何度目かわからないけれど絶句する。

可愛い?可愛いって、なに?

「いやさ、嫌がらせなのか、からかわれてるのか、…どっちでも良いんだけど」

俺こういう状況、別に苦じゃないんだよね、とヒロはミオが持ってきた毛布を受けとっていう。

「金ないとき、宿屋のかび臭い地下室とかで寝かせてもらったりしてたし」

冷えるしじめじめしてるし床は水とか染み出して来てるし、それに比べたら天国、と笑う。

しかし、それと今の状況と、比べられることだろうか?

いつでも優しいヒロの心遣いは、今、素直に受け入れられそうにない、と落ち込んでいるミオにヒロが続ける。

「それに宿がない村で泊まり交渉するとさ、納戸とかもう高待遇、納屋でも有難いくらいだし」

名もない旅人をそんなに信用する方が珍しい。

家畜小屋でも雨風がしのげるだけで十分、場合によれば軒下を借りられるだけでも御の字、そういうものだ。

「俺はそういう旅をずっと経験してきたから」

この程度じゃ嫌がらせの域には入らない。

だから、これを本気で嫌がらせのつもりでとった行動なら世間知らずで可愛いな、と思うし、

ただからかっているだけなら、洒落が効いていて可愛いと思う。

 「シャレ?」

「だって普通に部屋に泊るよりさ、会話は広がるわけじゃん?」

夕べの寝心地はいかがでしたか?はいおかげさまで、なんて味もそっけもないやり取りなんかより。

「姉さんひでえよ!とか言えるし、それを言うことでまた何らかの交渉とかもできるわけだし」

他人行儀な関係を覆すことができるし、連泊することに対する引け目も面白おかしく駆け引きできる。

少なくとも、何らかの行動が起こしやすく、受け入れられているのを感じられる。

そうヒロはいうけれど、それはヒロがそうできる人だからだ。

自分にはとてもそんな発想はない。

「じゃ、じゃあただの意地悪だったら?」

「ただの意地悪だったら、あれだよね、子供みたいだなって思えるよね」

自分たちがどう思われようとも嫌いな人は嫌い、好きな人には好き、まっすぐな感情は子供の素直さ。

「俺の村のチビたちみたいだな、って思って」

チビたち相手なら慣れてるし、本気でムカついたりしないし、と笑われて、本当にヒロはこの状況を苦にしていないのだと分かった。

なぜだろう。

負けたからアンタは下僕ね、と上段に構えているはずの姉たちを見るヒロの方が、優位に立っているようなこの感じ。

目に見えない力関係では、実は、ヒロの方が姉たちを軽くあしらっているようにも思えるから不思議だ。

「あ、もちろん、一番上の姉さんはすげえな、って思うよ?」

「お姉さん?」

「上に立つ人なんだな、ってのが解る。あの姉さんにはちょっと頭上がらないな」

ということは、やはりヒロも双子の姉は取るに足りない相手だ、と思っているのだ。

まーそれはそれとして、とヒロがそれまでの軽い口調から、真剣な面持ちに切り替わったのを見て、ミオも思わず居住まいを正す。

「俺の村に先に遊びにきちゃったから、ミオちゃんはあれが理想だって思ってしまってるんだよ」

「理想…」

そうだ。精一杯の心づくし。笑顔で接してくれて、細やかに世話を焼いてくれて、不便がないようにいつも気にかけてくれて。

そういうのが、ミオの理想とする「おもてなし」だ。ヒロたちにもそうしなければ、と思っていたのだが。

「それはミオちゃんの理想であって、この村の現実とは違うんだよ」

理想と、…現実。

「ミオちゃんがそういうおもてなしをしたいって思ったら、それはミオちゃんが自分の家を持った時にそうしたらいいだけで」

この村や、姉さんたちがそうしてくれないからと言って、ミオが落ち込むことはないのだ。

「だって、ようやく冒険者として村に戻ってきたばかりじゃん?ミオちゃんはさ」

そして俺たちは新顔だ、とヒロが自分を指す。

「さっきの対戦は負けちゃったけど、ほら、初陣としてはかなりの印象を残せたと思うんだよね」

そう言われて、ミオは自分の身の回りの変化を思わずにはいられない。

道行く人に声をかけられ、戦ってみない?と興味を持たれていた。

村に戻ってきて、今やっとミオは、村の女性たちとの抗争に名乗りをあげた。

「あとはここからのし上がっていけばいいだけでしょ」

それがミオの現実だ、と言われて、あ、だから…、とミオはつぶやく。それにヒロが頷いた。

だからヒロは、「勿体ない」と、言っていたのか。

負けたからと言って、敗者は去れ!と言われて、素直に去る愚があるだろうか。

ここは、武の村なのだ。

何度でも挑戦することを、この村の女性たちは拒まない。

「ミカは乗り気じゃないみたいだけど、それは俺たちが勝手にやってればいいことで」

あの負けず嫌いなら、俺たち対人戦得意になった、って言ったら俺にもやらせろって参戦してくるよ、

と、さも当たり前のように言われて、ミオも笑った。

「そうですね」

「そうそう」

だから今はこれでいい。初めの一歩としては、申し分ない。

そんな話をされて、ミオは、納戸と自分の部屋を交換しようとしていた自分の過ちを知る。

ヒロは自力で姉たちに認められ、その部屋を確保した。この村では、それは当然の報奨だ。

そしてこの村で、パーティのリーダーはミオだと認識されているのだから、ミオは堂々と自室のベッドで眠らなければ、

そういう構図を作ってくれたヒロたちの心遣いを無下にすることになる。

ここから這い上がっていく。ミオがその力でもって、皆の待遇を改善していくことの、はじまり。

「それが今の私の、おもてなしなんですね」

「うん、そういうの、俺も、ミカもウイも、嫌いじゃないと思うよ」

だってそうやって少しづつ力を付けて、高みを目指して、世界中を旅してきたんだから。

だから大丈夫、とヒロが背中を押してくれる。

ミオがしっかりと頷くと、それを見たヒロが。

「それに俺、ちょっと面白いこと思いついたんだよね」

と言って、笑った。

「面白い、こと?」

「うまくいけば、姉さんたちを引っ掻き回せる」

「え、ええ?!」

それにはミオの賢者の力が必要だ、という。

「だから、すぐ帰るとか言わないで」

もう少し楽しんでいこうよ、と言われて、それまでの自分たちの置かれている状況が全て、

楽しむべきものだったのか、とミオが驚けばヒロが苦笑する。

「ミカはさ、いつも負けたくせにへらへらして、って俺に怒るんだけど」

もちろんそれは、真剣に戦った相手に対して無礼だ、というミカの主張もわかるのだけど。

「俺そういうの苦手なんで」

負けて畜生くやしいぜ、って思うのはミカに任せて、俺は俺にできることをするよ、というヒロ。

敗者であることを優位に変えて、楽しむという、…それは確かにヒロにしか持ちえない視点。

そしてそれが周囲を変えていくことも、ミオにはもう解っている。

「わかりました!じゃあ今日はしっかり休んで、明日に備えます!」

「うん、完璧に回復しといて」

親指をたてて、よろしく!というヒロに、ミオも親指を立てて、お任せください!と返す。

お休み、といういつもの笑顔に送られて、納戸の扉を閉めた。

双子の姉たちに連れられて、この扉を開けた時とはまるで違う気持ちで、おやすみなさいと言えた。

ミオを取り巻くこの村の全てが、変わっていく。

それを恐れることなく受け入れることで、自分も確かに変わっていくのだ。

良い方にも、悪い方にも変わるけれど。

(大丈夫)

今日の敗北は、終了宣言ではない。

 

ただの前哨戦だ

 

今ここにいない二人が、そういった気がした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

俺たちの戦いはこれからだ!

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コメントにお返事のコーナー

■貴沙羅サン

他愛ない二人の掛け合いを楽しんでもらえているようで何よりでございます

そうそう、マント!マント!私自身、幼少期にはシーツをマントに見立ててごっこ遊びを

していたくらいマント好きなので、マントに反応してもらえると、よっしゃー!!です(笑)

書きたいネタはたくさんあれどいかんせん手が遅いのが最大の悩みどころ…ですが

楽しみにしててもらえるとほんと励みになりますアリガトウ

私も言いたいことはついつい長文になってしまうので解ります解ります全然オッケーです

愛です、愛


天使御一行様

 

愁(ウレイ)
…愛称はウイ

天界から落っこちた、元ウォルロ村の守護天使。
旅の目的は、天界の救出でも女神の果実集めでもなく
ただひたすら!お師匠様探し!

魔法使い
得意技は
バックダンサー呼び

 

緋色(ヒイロ)
…愛称はヒロ

身一つで放浪する、善人の皮を2枚かぶった金の亡者。
究極に節約し、どんな小銭も見逃さない筋金入りの貧乏。
旅の目的は、腕試しでも名声上げでもなく、金稼ぎ。

武闘家
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ゴッドスマッシュ

 

三日月
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…愛称はミカ

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各方面で人間関係を破綻させる俺様ぶりに半勘当状態。
旅の目的は、冒険でも宝の地図でもなく、人格修行。

戦士
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美桜(ミオウ)
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冒険者とは最も遠い生態でありながら、無謀に放浪。
臆病・内向・繊細、の3拍子揃った取扱注意物件。
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