完成イメージにはウツギを描きたかったところ
念のため調べたら(たまに悲哀なのとかあるので)花言葉は「古風な女性」だった
古風な女性…
古風…かなあ?
ってなったのでクレマチス(精神の美、旅人の喜び)
もう少しの間、イラストでお茶にごします
デッサンの狂いと死ぬほど闘って屍になったので
おのれぇ!花を配置して狂いを隠してくれるわ!!
ってな姑息な勿忘草
仕上げの色塗りはクリスタペイント先生にお願いしたら
花を透過して白日の元に晒してくださるさすがのクリスタペイント先生です
厳しい愛が沁みますね!
て事で色がめっちゃ綺麗にのったので世に出してみる
この花乙女シリーズ(勝手に命名)は絵の描けない私の絵を
どれだけカバーできるかというクリスタペイント先生(自動彩色機能)の
果てなき挑戦である
(つまりまだある)
ヒロ 「えー?だってミカがこれなら飲める、っつったじゃん!」
ミカ 「これならまだ飲める、だ!」
先生に玉ねぎの皮飲ますんじゃねえ!
なミカの衝撃ですが
ゴボウ茶とか玉ねぎの皮茶とかもろもろ健康志向が広まってるリアルでは、あまり衝撃はない、かな?
(ゴボウ茶は飲んでた。可もなく不可もなく飲めないことはないけど土臭っ!て感じ。ごぼうは好物だけど、これはごぼうの旨さを殺してる!って思ったので半年くらいでやめたです。あ、好きな人にはごめんなさい、あくまで個人的感想です)
ヒロの村では普通クラス
お客様用には大豆(食べるにはちょっと身入りがな、っていう劣化豆を茶にする)茶
蕎麦湯とかも飲む(アレルギー問題で人を選ぶ)
なんとなく昔のお茶は高級品、っていうイメージ
ミカのお茶は何だろなジャスミンとかあの辺かな…スパイス系でも良いんだけど
私がハーブティに詳しくないのであまりイメージできない痛恨のミス
実際は単純にアールグレイを好んでると思ってます
この優雅シリーズは、オシエル先生の甥っ子たちで作ってたネタ
ポッと出のキャラ(若様ハブられる3)とは言え、
せっかく授業に出張してきてくれたんだし描いとくか、って思ったけど
画面に6人も出てくるのが辛かったのでなしの方向で…
画力さえあればバンバン描く!!って思ってるのでちょっと補足
甥っ子二人にとって子供の時のオシエル先生は、小うるさい叔父さん
礼儀作法だけじゃなく全てに細かくうるさいし考えが古めかしいけど
逆らったら余計に面倒だから一応言うこと聞いとくか、ってところ
それが成人して社会に出たら、「さすがオシエル先生の甥っ子さんですな!」
って各方面で褒められたり感嘆されたりするのを経験して
「叔父さん煩くしてくれて有難う」って感謝できるようになって
今、良い関係です
先生としても小生意気な甥っ子たちでしたが成人した二人は頼りになる存在
若い子の感覚とか、時代の流れとかを彼らから直に聞けるので重宝してます
あと彼らは公私の分別がしっかりしているというのもポイント
親戚同士の付き合いでは、「叔父さんは頭硬いからダメなんだよ」「今の子にそれは通用しないよ」と言いたい放題ですがそれを公の場では絶対口にしないという分別があります
どれだけ砕けた席でも(今回はヒロの授業でも)先生に軽口をきいたり、扱き下ろしたりしません
叔父さんではなく先生の立場を尊重してます
それをオシエル先生もわかっているので、普段はどれだけ言いたい放題でも甘んじて受け入れています
そんな関係があっての、今回ヒロの授業に出張出演でした
先生と熱く意気投合してしまい、ミカを放って置くこと三日。
な、ぜ、か、今日は自習になったということで、久しぶりに気兼ねなくおバカ発言を連発し、それにいちいち「くだらねー」と突っ込ませてやっているうちに、ここ数日のミカの鬱憤は晴れた様だ。
大体ミカは機嫌が悪いと一人になりたがる。機嫌が悪いのを悟られたくないのと周囲に当たってしまうのを避けているのではないかな、とヒロは推測している。なので気の済むまで一人にしてやると、自分から「構え」と出てくる。普段ならそれで問題ないのだが、今はちょっと違う。
大体ミカは機嫌が悪いと一人になりたがる。機嫌が悪いのを悟られたくないのと周囲に当たってしまうのを避けているのではないかな、とヒロは推測している。なので気の済むまで一人にしてやると、自分から「構え」と出てくる。普段ならそれで問題ないのだが、今はちょっと違う。
ヒロと先生から「手出し無用!」と言われているので、自分から近づいてくる手段を封じられているのだ。今夜あたりちょっと様子を見ておくかな、とヒロが思っていた矢先の「自主学習」という先生のお気遣いなので、ここは有難く気分転換といこう。
自主学習という名目で、古典文学の短編集をミカが読み聞かせに徹し、それに対してヒロが所々疑問をあげたりするうちに、逆にミカが自分の疑問にヒロの解釈を求めたてきたりして、「古典文学から貴族社会の成り立ちを学ぶ様に」という先生の狙いは抑えていると思う。
だからは話はそのまま古典から、現代へ、自分たちの現在へと変わる。
ヒロのこだわり、「貴族になりたいわけじゃないのに貴族の授業を受けている状況」について先生が細やかに話を聞いてくれて、ヒロが引っかかっている些細なところを一つ一つ解消してくれた結果の意気投合、である事をミカに伝えておく必要がある。
決してミカが邪魔なのではなくて、という意味合いで。
「そんで先生が、俺が貴族になるにはいくつか手段があるっつって」
ヒロと先生の二人の話、にはミカも興味がある様で、すぐに反応が返って来た。
「ああ、あるけどな」
と本を閉じ、寄りかかっていたソファーから身を起こしたミカが、手段について説明してくれるのをヒロはただ素直に受け止める。
と本を閉じ、寄りかかっていたソファーから身を起こしたミカが、手段について説明してくれるのをヒロはただ素直に受け止める。
先生から聞かされるのと、ミカから聞かされるのとでは大分印象が違う。
先生は歳も離れていて、威厳もあって、まあ話は堅いし長いし所々言葉遣いは難解だし、であまり現実味は無かったが、ミカから貴族社会の仕組みを聞かされるのは純粋に面白い。
貴族になりたいわけではないが、そうやって自分の知らない世界が知れるというのは先生の言うところの『己を知る』に繋がるのではないかと思える。
「お前が領地と称号を貰えば家族もそこに住まわせられるけど、貴族の称号はお前の代からだな」
社交界に出るのも権力を持つのも政治的に関わるのも、全て自分から始まるわけか、と考えて、それが永久に続いていく事に考えが至る。ミカの手にある、古典文学の本。
あの中の世界が何百年と続いて今がある。今の、ミカの家が。
「俺の子供は必然的に御貴族様、ってこと?」
「俺の子供は必然的に御貴族様、ってこと?」
と問えば、ミカは「それは褒賞による」と教えてくれたが、それには事務的な説明であまり興味がなさそうだった。
ヒロとしては、自分が貴族の称号をもらったとしてそれが受け継がれていくなら、未来には、自分の子孫とミカの子孫が身分差のない対等な付き合いに、それこそ誰の目も気にしない友達になれるのかが気にかかったのだが。
その話にはミカも、うーん、と唸る。
お互いまだ結婚だの後継だの言われても実感がないのだから、子孫がどうこうというところまでは現実味がない、とのミカの困惑にはヒロも同意する。
「それはまあ確かに」
「身分差以上に位格の問題もあるしな」
そうだった。
「それもややこしいよなあ」
先生の授業は礼儀作法だけに留まらない。
「形だけ真似をしても無様な醜態を晒すだけです。そこにある所作にどの様な心があるのか、どの様な習慣からそうあるべきなのか、仕草の一つ一つが貴族社会のあり方から生み出されたものであることを理解しなければどの様な所作も所詮真似事でしかないのです」
と言った先生はヒロの授業を多彩な方面から組み込んでいる。
そのため授業の間は貴族の生活を身で感じる様に、と執事のライダスからも「ヒロ様」と実に恭しく扱われて(尻がむず痒いぜー)とも言えず妙な居心地を味わっているのが今のヒロなのだが。
そんなヒロの困惑に、ミカが「そうだな」と、思いついた様に口を開く。
「今お前が貴族になったとして」
「おお」
「男爵か子爵あたりの称号を頂ければ、俺との仲は問題ない。連れ立ってどこに行くにも、互いの家を行き来するにも、上からの苦言はない」
少なくとも今の状況よりはないはずだ、と言うミカの口ぶりには、そこそこ苦言はあるんだろうなと感じ、ただ頷く。
「社交界にも出る事になるし、そこで他の子息たちとの交流も必然になる」
「無視はされねーって事な」
以前にミカの家が開いた月見の宴で、自分たちはほぼ空気で、上からの許しがあるまで発言もできなかったことを思い出す。
「そうなるとどうなるか、だ」
「交流すると?お友達、ってわけには行かねーんだろ?」
俺とミカみたいな、と言うヒロにミカも頷く。
「例えば同年代だけで集まって遊興施設に出向いたりする」
「ユーキョーシセツ」
「観劇とか、音楽観賞とか、なんでも良いんだが、…じゃあ音楽鑑賞で歌劇場に行く。鑑賞すれば当然、それぞれに感想や講評とかの意見を交わしたりするだろ。そこに教養を求められる」
出た。教養。
ミカが生まれながらに躾けられ、今までのヒロには無縁のもの、という認識の。
「だから今の先生の授業は無駄じゃねえってこと?」
「違う。授業の話は今どうでもいい。位格の話だ。音楽鑑賞の後に意見を求められて、お前がそれに何かを言う、あるいは何かを言えないでいる、どっちにしても周囲はお前を見下げる」
「え?…言えない、のはまあ教養がないとしてわかるけど、正しく言っても見下げられるって?」
「うん。しっかり教養を身につけて、他の子息たちと遜色ない意見を言えたとしても、そこは関係ない。お前の格が、下だからだ」
すごい世界だ。とヒロが言いかけるのを押し止める様に、ミカの言葉が続く。
「これが俺だと、興味がない、つまらない、くだらない、と適当にあしらったとしても何の問題もない。逆に、彼らは追従するか、作品をこき下ろして俺の機嫌をとるか、ぐらいはするだろう」
「…あー」
それが格か。
そう言えばミカが閉じこもって部屋から出てこない、と執事が心配した時も、先生は当たり前の様に「機嫌をとってきなさい」と言って『自習』という名目をくれたのだ。
それが当たり前の世界。
「実際、学生時代にはそういうのが繰り返されて飽き飽きしてたからな」
それにまともに付き合うより一人を選んだミカの心情はわかった。
(面倒くさがったな…)
ヒロにわがままを言って喧嘩になったり、ウイは遠慮なく反対意見を言ったり、困った時には一緒に悩んでくれるミオがいたり、そんな関係はミカにとって新鮮だったのだろうとも思う。
だからミカがそれを貴族社会でも求めるのもわかる。ミカが背負うものは貴方の背負うべきものではないのですよ、と言った先生の言葉も、…わかる気がする。
「そういった遊興方面だけじゃなく、政治や社交界でも同じことが起こるのは想像できる。外から貴族社会に入るのはそういうことだ。周囲にまともに認められるには百年単位でかかると思う」
「百年か…。でも俺が百年経っても、ミカたちも百年経つわけじゃん?」
「差は埋まらないな」
「うーん」
だからか。ヒロたちにそんな思いをさせたくなくて、貴族社会との関わりを極力避ける様であるのは。
大丈夫。分かってる。ミカはいくつかの手段があるとしてもそれを行使しない。貴族になれとは言わないだろう事も、言えないのだと分かっている。だから自分たちは、ミカの友達でいられる様に、できる限りのことをする。多くを学び、経験し、社会的地位を確立する。それが冒険者クランを立ち上げた時の総意だ。
先生にはこれを説明すれば良かったのかな?と思う。
どうして貴族になりたくないと考えたか、その経緯はどこにあるのか、誰の影響か、思想か信条か諦念か厭世か、と先生は詰問の手を休める事なく、ヒロの中にあるものを言葉という形にさせようとする。そして「これは授業の最終まで続けます」と言った。
責められている様に感じる、というヒロに、考えることを癖づけるためだ、と言い、常に身を取り巻くありとあらゆる事に対して疑問を持ち考えろと指示されている。
おかげで最近では先生に対する苦手意識もどうでもよくなり、自分の中から出てくる曖昧な言葉を逆に先生が解説してくれるのが何かしらの面白い遊びの様だと感じてしまうまでになった。
それでも、やはり一人で考えるのは苦手だ。今の様にミカと他愛無い話をしながら、詰問に縛られる事なく自然体でいる方が考えはまとまる様な気がする。
貴族になりたく無いのは、ミカに負担をかけたく無いからだ。
貴方の感情はどこにありますか、と聞かれ悩んで考えた答えと、今の湧き上がる思いは違う。
多分、自分の感情で言えば、今の思いが答えだ、とはっきり言える。
そんなことを考えていたから、ミカとの会話に集中し切れていなくて、不意にミカから投げられた質問で我に返った。
「先生は、どうしてそんなことを言ったんだと思う?」
「え?どうして、って?俺が阿呆だから?」
「え?どうして、って?俺が阿呆だから?」
咄嗟に反応したには余りにも間抜けな返しだったか、ミカが「違う」と渋面で古典の短編集を示してきた。
心証を学ぶ様に、と言われ先生から渡されたその本。
ミカがそれを読みながら、「なんでこいつは唐突に裏切ったんだ」とか「こいつとこいつのつながりはどっからきたんだ」とか主役から端役に至るまで登場人物の行動に事細かく突っ込んでくる事に、それは多分こう、これは伏線がここ、とヒロなりに文章で描かれていない心理描写や人間関係の背景を解説してやっていたのはつい先ほどまでの事。
ミカがそれを読みながら、「なんでこいつは唐突に裏切ったんだ」とか「こいつとこいつのつながりはどっからきたんだ」とか主役から端役に至るまで登場人物の行動に事細かく突っ込んでくる事に、それは多分こう、これは伏線がここ、とヒロなりに文章で描かれていない心理描写や人間関係の背景を解説してやっていたのはつい先ほどまでの事。
それと同じで、先生の真意をヒロはどう読み解いているのか、ということが聞きたいのだろう。
それはやっぱりー、と言いかけ、ミカは先生との関係に戸惑いを感じているのでは無いか、と思い直した。
それはやっぱりー、と言いかけ、ミカは先生との関係に戸惑いを感じているのでは無いか、と思い直した。
幼少時からずっと自分の先生で、今回その先生に不敬を働いてしまったことで動揺しているのは分かった。その後、あんなに先生と話したのは初めてだ、と言い、将棋までさして仲が深まった気がする、と複雑そうにヒロに報告してきた時は(村のちびみたいだな)と思った。自分のことの様に嬉しかったのは間違いじゃ無いだろう。
だから、自分が言えるのはこれしかない。
「俺とミカが友達だから、先生としては『末長くお友達でいられます様に』って事じゃないかな」
それで良いと思う。
それで良いと思う。
先生を信じろ。ミカが信頼しているそのままで、きっと先生は良くしてくれる。だってミカの先生だから。
今のミカがあるのは先生のおかげだと思っているヒロには、それが真実だ。
「だから先生は俺とミカが永久に友達でいられる様に考えろ、って言いたいんだと思ったんだけど」
とにかく考える。
ヒロの考えに、先生も先生の考えで応えてくれる。それを受けてまた考える。
それを体験した今だから、ミカと先生もそうやって関係を築いてきたのが実感できるからこそ、『仲が深まった』とミカが感じるなら、それは先生が今のミカに応えてくれた証だと思う。
ミカが変われば周囲も変わる。貴族社会という厳格さで変わらないことの方が多いのだろうけど、それを身をもって知っているからミカも期待はしていないのだろうけれど、それでもミカのために変わってくれる人もいるはずなのだ。
ヒロと先生との授業に入れなくて、『放って置かれた』三日間にどうしてたのかと尋ねてやれば、今回の騒動の説明報告で家に帰っていた事、ついでウイたちの様子を見に行ったが会えなかった事を知らされて確信する。
ミカは誰に機嫌を取られなくても大丈夫だ。
「じいちゃんがミカのこと怒らないのって、ミカが自分から怒られに行くからなんだな」
と言えば、なんだそれ、と怪訝な顔をされる。
今回の事件はもう退っ引きならないほどの大事だったのは、もうヒロにも分かっている。
だからミカがことの次第を説明しに家に行く、というのはひどく叱責されるのだろうな、と思って心配していたのだが。
「うちはもう母ちゃんがすげー怒るからな?ここが俺ん家で、先生に無礼な事したってなったら母ちゃんが飛んできて怒る。母ちゃんに怒られて、これやべえ、ってわかるっていうか」
多分先生が怒るより母ちゃんが怒る方が早いぞ、と言えば、ミカが複雑そうに頷く。
「それは、わかる、気がする」
何日かをヒロの家で過ごしたミカたち。三日以上いる人はお客様じゃなくて家族です!というヒロの母はミカの事も他の子供たちと変わらず雑に扱い、遠慮なくこき使い、いつでも戻って良いのよ、ここも貴方の家なんだから、と言った。それを受けて、お世話になりましたなどと言うミカには他人行儀はよしなさい!と怒っていたくらいだ。
「だからもう、とにかくごめんなさいとお許しくださいが言える子になる」
「ああ、うん」
「許してもらうまで、ひたすら喋り倒して、母ちゃんを笑わせたらこっちのもん、っつーか」
それが先生に、延いては侯爵様に通用する、と思っていた自分は甘かったよね、と言えばミカが笑う。しょうがないな、それがお前だし、と。
郷に入れば郷に従え、ってお前がいつも言うだろ。今回は俺のやり方を通させてもらうぞ、と言ったミカ。
郷に入れば郷に従え、それをなぜ自分が試されていると考えないのですか、と言った先生は。
若様の背負う荷まで、背追い込もうとするのをやめなさいとも言った。
身の振り方を考える。
失敗から学ぶことは多い。
失敗を許容してくれる人がいるからこそ、人として望まれる方向に成長する事ができると心得なさい、というのがミカのお爺さんからの伝言だと言う。
失敗を許容してくれる人がいるからこそ、人として望まれる方向に成長する事ができると心得なさい、というのがミカのお爺さんからの伝言だと言う。
「今一度戻ってくれた先生への感謝を忘れぬ様に」という思いやりには、ただただ感謝しかない。
(寛大なミカの爺ちゃんと、同じくらい、それ以上に先生にも感謝をして)
学ぶ。
「学び、考えなさい。そうしてこの授業が終わり貴方の成長した姿を見てから、今一度、今回の事に判断を下します」
そう言い渡されて、今ヒロは先生の教えを受けている。
『ミカの友人でいられる様に』学ぶ授業だ。
正直ヒロには、これまでの授業と何処が違うのかはわからない。それでも確実に、先生の言葉はヒロの希望する方へと導く。導かれていると信じられる。だから。
「授業、楽しいか?」
とミカが聞いてくる事に、笑顔で応えることができる。
心配はいらない。
ミカが貴族社会から庶民になじんだ様に、そこにある苦労や困難は覚悟の上だ。そう皆んなで確認し合った日には分からなかったことも、楽観も、甘えも、全部受け止める。
形だけ真似をしても、無様なだけです。そう言われた事も、今ならわかる。自分の中で、ちゃんと納得できているという自信。自信がなければそれはただの真似事だ。
もっと早くこれに気づけていれば良かったのかもしれない。ミカにもそれを言って安心させてやれただろうと思う。だが、中身のない言葉ではミカを納得させられなかったのだ。
大変なことをしでかしてしまったけれど。今だから言える。
「そうですか。それは大変よろしい」
と、先生の声がして、ミカと同時に扉の方を振り返る。
授業の時の様に生真面目な先生の隣には、執事のライダスさんがにこやかに立っている。
「お茶の準備を致しましたよ。一息つかれては如何ですか」
自習も大変お疲れでしょうし、と先生が言うのには「ああ、えっと」と返答に困っているミカを制する様に、立ち上がる。
「先生のお誘いとあらば喜んで!いついかなる時と場所でも馳せ参じます!」
先生にはありったけの感謝を示せ。
「そうですか。それは大変よろしい」
と、先生の声がして、ミカと同時に扉の方を振り返る。
授業の時の様に生真面目な先生の隣には、執事のライダスさんがにこやかに立っている。
「お茶の準備を致しましたよ。一息つかれては如何ですか」
自習も大変お疲れでしょうし、と先生が言うのには「ああ、えっと」と返答に困っているミカを制する様に、立ち上がる。
「先生のお誘いとあらば喜んで!いついかなる時と場所でも馳せ参じます!」
先生にはありったけの感謝を示せ。
言って減るものじゃなし。むしろ言わないと増えないし。
ミカが先生との仲の深め方が分からないなら、過剰なくらい自分が率先してやって見せる。それで怒られるなら、ミカも適度を知るだろう。
そんなヒロの意図がどうあれ。
やはり過剰であったように、苦笑するライダスと、鼻白む先生。
「…それは興味深いですね。参考までに。いついかなる時と場所とは?」
「そりゃあもう!ドラゴンとの戦闘中でも完璧な正装に早変わりしてキラーパンサーを駆ってひとっ飛びで」
「…ルーラの方が早いと思うぞ」
やはり過剰であったように、苦笑するライダスと、鼻白む先生。
「…それは興味深いですね。参考までに。いついかなる時と場所とは?」
「そりゃあもう!ドラゴンとの戦闘中でも完璧な正装に早変わりしてキラーパンサーを駆ってひとっ飛びで」
「…ルーラの方が早いと思うぞ」
今更引くに引けないヒロの太鼓持ちにミカが乗ってくる。中途半端に乗っかってくるなよー、困るだろーもう!と内心で思ってはいても、笑ってしまった。
「ルーラでひとっとびです」
そんな悪ガキ二名のしょうもないお追従を見せられて。
「今声をかけたのがその時でなくて良かったですよ」
そう言って先生が姿を消す。
「今声をかけたのがその時でなくて良かったですよ」
そう言って先生が姿を消す。
怒られない事に、先生の譲歩を感じる。あれは先生最大の、ジョークに対するジョーク返しだ。
だから、ええーなんでー、と先生の背を追いかけて、ミカ振り返って手招く。
だから、ええーなんでー、と先生の背を追いかけて、ミカ振り返って手招く。
大丈夫。先生は怒ってない。
…呆れているかもしれないけれど。
ヒロの自信を後押しする様に、ライダスもミカを呼ぶ。
「お庭へ参りましょう」
明るい日差しに中庭の緑は鮮やかに、色とりどりの花が柔らかく包み込む東屋。
「お庭へ参りましょう」
明るい日差しに中庭の緑は鮮やかに、色とりどりの花が柔らかく包み込む東屋。
ついてくる教え子を待つ様に歩調を緩める先生の影。
外は気持ちのいい風が吹いていた。
外は気持ちのいい風が吹いていた。
先生とヒロが無駄に意気投合してから、放って置かれること三日。
な、ぜ、か、今日は自習になったということで、久しぶりにヒロが隣でおバカ発言を連発し、それにいちいち「くだらねー」と突っ込んでいるうちに、ここ数日の鬱憤は晴れた。
古典文学の短編集を自分が読み、それに対してヒロが疑問を投げかけてきたり、逆に自分の疑問にヒロが妙解釈で応えてきたり…と、やってることは他愛無い。
自主学習、と呼べるほどのものではないから、そのうち会話が脱線し出すのも自然の成り行きで。
「そんで先生が、俺が貴族になるにはいくつか手段があるっつって」
「ああ、あるけどな」
確かに現実的ではないものを排除したとしても、ミカにもいくつか案を出すことはできる。
その中でもヒロが自身のこととして受け取れそうなものは。
「武勇をあげるとか」
「武勇」
「黒騎士騒動、…あれはそこまでの大事じゃなかったが、城内城下で死者が数千規模の被害が出ている事件を解決したとか、城を乗っ取られたとか、そういう国難を救ったことを評価されて領地と称号を頂くことはある」
「ああ、なるほどな。俺だけが、ってことな?」
それならわかる、というヒロに今度はミカが疑問を抱く。
「どういうことだ?」
「いや、俺、家族こみで考えちゃってたからさ。貴族、って家ごとじゃん?それってミカのとこみたいにうちの家族みんなで、みたいなの想像しちゃって」
住んでた荒屋がいきなりお城みたいになるとか、俺の父ちゃん母ちゃんがドレス着て舞踏会行ったりするとか意味わかんなくて、というヒロが思い描いていた貴族像はわからないでもない。
これは実際ミカがヒロの家族と共に過ごした経験であり、それこそ、その感覚はヒロとの付き合いの長さだ。これを先生に説明するのは難しいだろう。
「まあお前が領地と称号を貰えば家族もそこに住まわせられるけど、貴族の称号はお前の代からだな」
「ふーん?俺の子供は必然的に御貴族様、ってこと?」
「それは褒賞による。領地はなく称号だけだと、一代限りってこともある。そこはまたいろいろ複雑だ」
それにも、ふーん、と返事をするだけに終わる。ヒロは大体、こっち方面の野心がないな、と思う。友人のよしみでなんとでもできる、と思っているのは自分だけで、ヒロは特にそれを希望していないのだ。
だから、気が引ける。
今回の上流社会の礼儀作法を学ばせる、という指示も、それを是とする自分と否とする自分のせめぎあいがなかったとは言えない。ヒロが上流社会に馴染めば、…ヒロだけでなくミオやウイも共に、同じ世界に生きてくれれば、自分は躊躇いなく外の世界を捨てて、上流社会一筋に生きられる。自分の生きる世界に彼らがいてくれるとするなら。
それは何よりも甘い誘惑。
だがそれは結局、自分の独り善がりなのだともわかっているからこそ、繋いでいてくれる彼らの手を強引に引き寄せることができない。
(ここの均衡が難しい)
ミカの最近の悩みはこれだ。
誘惑と現実の間で、どこに自分の心を決着させて良いかわからない。
(オシエル先生が、それをヒロに示唆した意図もわからない)
ヒロの野心を試したのか?あるいは、その誘惑に揺れる自分を試したのか。
それをヒロに相談したくとも、「貴族になって欲しい」と思っているそれに感づかれれば、ヒロは否応なく「よし任せろ!」と言う様な気がする。
今回の様に。
(いや)
ヒロは躊躇いなくこちらに来るだろう。そう思っている自分が甘いのか。
自分のためなら躊躇いなくそうしてくれるだろうと思っていることが罪で、現実にヒロに拒絶されることが罰なのだとしたら、そう易々と答えも出せないでいる歯痒さ。
だから煩わしい。だから友人など持つべきではなかった。と、言える自分はもういない。
なら、尋ねるべきなのだ。
目の前にいる、ヒロに。
「先生は、どうしてそんなことを言ったんだと思う?」
「え?どうして、って?俺が阿呆だから?」
「…違う…」
そうじゃなくて、と両手の中で開いたままだった古典の短編集を指す。
心証を学ぶ様に、と言われたそれ。
文学を読むことはできても、そこに書かれた人物の複雑な心理描写や人間関係の背景などを読み解くのが苦手な自分と違って、いわゆる『行間を読む』のが得意なヒロが、ヒロなりに面白おかしく解説してくれていた、それ。
それだけで、ヒロは「ああ、それ」と理解する。
「それはやっぱりー、んんー。…俺とミカが友達だから、先生としては『末長くお友達でいられます様に』って事じゃないかな」
一瞬難問でも投げかけられたかのようなそぶりを見せておいての、その返事。
普段と変わらない呑気な調子でのそれには、面食らう。
「え?友達?!」
貴族になる手段の提示、そこにかける橋として、あまりにも牧歌的。
ミカの知るオシエル先生との大きなずれに思わず驚いたが、その感想にヒロも間髪入れず驚きの声をあげる。
「えっ?何?俺ミカの友達じゃねーの?!」
いや、だからそういう話ではなく。
「いや、友達…、…友達で良いけど…、貴族になる話どこ行った…」
ミカは先生の厳格さが、情に流されない毅然としたものだとわかっている。それこそが先生の美意識で、それがあるから自分は安心して先生に学んでいるのだと思っていたが。
ヒロは、全く違う様に先生を捉えているのだ。
「あー、そこはあんまし重要じゃねーんじゃね?」
という言葉でそれを知る。
「だって重要だったら、先生が言うだろ?貴族になる手段。こうしたら貴族になれますよ、じゃあやってみましょうか、っていうんじゃね?先生なんだし」
「あ、ああ。そうか」
先生なんだし、か。
「だから先生は俺とミカが永久に友達でいられる様に考えろ、って言いたいんだと思ったんだけど」
授業が始まる前に、「俺学校行ったことないから先生とかよくわかんないけど良いかな?」と、ヒロが言っていたことを思い出す。それについての補佐はする、と返事をしたが、ヒロはヒロなりに「先生」を理解しているじゃないか、と思う。
ミカとは違う受け取り方で教えに学び、ヒロはヒロの答えを出す。
「もー今はとにかく、『考えろ』なのな。授業の時だけじゃなくて、休憩中も、ちょっとお茶飲むじゃん?そのカップについて考えろ、それを扱うことを考えろ、茶葉について考えろ、意味を考えろ、感じるな考えろ、って、もう三日間ずーっとそんなん。俺はめっちゃ考えましたよ?そしたらどうしてそう考えたのか考えろ、って、考えろ無限地獄ですよ。考えても考えても終わりがねえんだよー」
と、ソファーの背もたれにへばりつきつつ嘆いて見せてから、ヒョイと顔をあげる。
「っていう授業してた」
そして「ミカは?」と尋ねるのは、三日程の空白を埋めるため。
だから、まず家に戻って祖父と話をしてきた事、ウイたちの様子を見に行ってきた事を話せば、「あ!ウイとミオちゃんの事見に行ってくれたんだ。ありがとな」と感激されて、「爺ちゃん怒ってた?」と心配をされる。
どっちもミカの心情からはかけ離れた(ウイ達の不安を気遣ったわけじゃないし、祖父に会うのは報告だし)細やかな感情優先で反応してくるのがヒロなのだ。
感じるな考えろ、というそれはオシエル先生がヒロに何を求めているのか、自分は考えなければならないのだろう。
ミカの話を聞いた祖父は「何がいけなかったのだと思うかね?」とミカに答えを求めた。
「先生という存在を蔑ろにしてしまったのだと思います」
そう答えたミカに、祖父は頷いた。それがお前の答えか、という様に。
「儂は信頼を蔑ろにしてしまった、と思ったよ」
これは先生に孫を預ける祖父としての言葉だが聞いてくれるかね?と言い、普段と変わらぬ穏やかな調子で語る。
今回のヒロに対する教育は貴族の子らに対するのとはまるで勝手が違うだろうがどうぞよろしく、と先生を頼りにした。それに対して先生は実に十分な検討をしてくれた様に思うがどうか?と聞かれれば、確かにヒロに対する様々な授業内容や教材には一切の妥協は無かった様に思う。
あるとすれば、自分の迷いだ。
ヒロを先生に預けることに対する、わずかな不安。自分たちの将来に関わるこの時期に、この選択で間違いがないかどうかの、躊躇い。
おそらくそれをヒロに見抜かれた。ヒロを動かしたのは、自分だ。
「その不安をまずは先生に打ち明け、理解を求めるべきだったかもしれません」
ミカの懺悔に祖父は、再び深く頷いた。
「そうじゃな。それが、信頼ということやも知れぬ」
祖父はミカとヒロを先生に預けることに全面的な信頼をおいた。それを受けて自分は総てを先生に委ねる事ができず、先生との信頼を築けなかった。そういう事なのだろう。
「それを学ぶのだよ」
と祖父は幼い子に言い聞かせる様に語る。
「儂もまさに今学んでいるところだ。この先、お前を数多の人間に委ねていくことになるだろう。それをどこまで許容できるか、預ける先の人間とどれだけの信頼を築けるか、築いた先にある物事にどう対応していくか、学ばなければ己を正すこともできぬ」
祖父として、ミカの失敗は自分の事の様に捉えていると言い、今は同じ失敗に学び共に成長する事を儂とお前との信頼としよう、と、祖父はミカを送り出してくれたのだ。
失敗から学ぶことは多い。
失敗を許容してくれる人がいるからこそ、人として望まれる方向に成長する事ができる。祖父はそれをミカとヒロに分らせるため、「今一度戻ってくれた先生への感謝を忘れぬ様に」と念を押しただけだ。内心では怒っていたのかも知れないし、失望されたのかも知れなかったが、それを自身の事として捉えることで、決して無駄では無かったと言った。
そんな話をしてやれば、ヒロが感極まった様に「爺ちゃんありがとー」とどことも知れぬ方角に手を合わせて拝む。続いて、逆の方に向いて「先生もありがとー」と拝むのには、自分も一緒に拝んでおいた方が良いかと悩む。祖父はともかく、今同じ館にいるオシエル先生なら、どこかで様子を伺っているかも知れない。
実際それを見られていれば「不敬」と怒られそうだが、大真面目に敬う姿勢で感謝を示して、ヒロは笑う。
「よかったな」
と言われて、それはお前だろ、と言いかけ。
ヒロにこの笑顔が戻って良かったな、と思う心に負け、「うん」と頷く。
先生が、『この友情を末長く続けられる様に』ヒロを導いてくれるのなら、自分はそれにどう応えられるだろう。
ヒロが先生に出された『宿題』、先生がヒロから受け取った『宿題』。
残りの日数で二人が取り組む授業に自分は口を出せない代わりに、彼らが出した答えに真剣に向き合う覚悟を決めろ、ということか。
自分の心がどこにあるのか。
一つの課程を終えたヒロの考えが、どうあるのか。
(オシエル先生は、ヒロを教育することで俺に対する指針を考えている)
今はヒロの授業を受け持ってはいても、先生はミカの専属教師なのだ。
ヒロと、ウイとミオと、永久に友達でいられる様に考えろというそれは追い風か向い風か。
どちらであっても、その風は強く厳しく吹く。
けれど、厳しくとも暖かい。
そう感じるのは、先生が先生であるからであり。
ヒロがそれに気づかせてくれたからでもある。
「授業、楽しいか?」
とつい聞けば、唐突な質問にヒロは一瞬驚いた顔をしたがすぐに笑って見せた。
「大変だけど、楽しい」
そう言って、ここ重要な?と続ける。
「大変だから、楽しい。考えるの大変だし先生厳しいし時々筋肉痛だしめっちゃ食わされるけど、まあ全体的に大変で楽しい」
「そうか」
今度はウイとミオちゃんも一緒だとなお楽しいのでよろしく、と言う。
そうか。そうだな。
もっと早くこれを聞いていれば、良かったのかも知れない。だがもっと早かったら、自分はそれを信じられなかったのかも知れない。
大変なことをしでかしてしまったけれど。今は。
「そうですか。それは大変よろしい」
と、先生の声がして、ヒロと同時に扉の方を振り返る。
先生の隣には、執事のライダスが。
「お茶の準備を致しましたよ。一息つかれては如何ですか」
自習も大変お疲れでしょうし、と先生が言うのには「ああ、えっと」と誤魔化すミカを他所に、ヒロが立ち上がる。
「先生のお誘いとあらば喜んで!いついかなる時と場所でも馳せ参じます!」
おおお、そこまで言うのかこいつ。
感謝と好意、その示し方の作法に悩むミカとしてはヒロのそれが羨ましいやら、慄くやら。
苦笑するライダスと、鼻白む先生。
「…それは興味深いですね。参考までに。いついかなる時と場所とは?」
「そりゃあもう!ドラゴンとの戦闘中でも完璧な正装に早変わりしてキラーパサーを駆ってひとっ飛びで」
「…ルーラの方が早いと思うぞ」
「ルーラでひとっとびです」
「今声をかけたのがその時でなくて良かったですよ」
そう言って先生が姿を消す。
ええーなんでー、と先生の背を追ったヒロが振り返って手招く。
「お庭へ参りましょう」
と言うライダスと共に、ミカも部屋を出る。
外は気持ちのいい風が吹いていた。
天使御一行様
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愁(ウレイ) |
天界から落っこちた、元ウォルロ村の守護天使。 |
魔法使い |
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緋色(ヒイロ) |
身一つで放浪する、善人の皮を2枚かぶった金の亡者。 |
武闘家 |
三日月 |
金持ちの道楽で、優雅に各地を放浪するおぼっちゃま。 |
戦士 |
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美桜(ミオウ) |
冒険者とは最も遠い生態でありながら、無謀に放浪。 |
僧侶 |