レネーゼ侯爵家の護衛服です
全体的に刺繍と胸のリボン部分がとんでしまうのでいつもより大きい画像にしてみましたが…
見えないものは見えないですね
リボンの色が悪かったか…(;'∀')
基本ポンチョの形ですが、前身頃・後身頃・両袖、の4つのパーツに分かれています
ウイがそのまま着用
ミオが前身頃のみベルトで押さえて、両袖と後ろ身頃をマントふうにして着てます
ヒロは前と後ろをベルトで固定、両袖もベルトで腕に固定、という具合に着ています
ミカは襟とマントを脱いだところですね
基本的に、警護の任務に当たる場合などは戦闘になる事も踏まえて、ひらひらしない状態で着用しますが(ヒロパターン)
客人の目に留まるような任務の場合は、あからさまに帯刀状態を見せつけるのは穏やかでないので
ウイかミオのようにマント部分を利用して、剣を隠すようにして着用します
ミオの上体が主人用、ウイの上体が客人用、とかですかね
っていう設定を詰める前に4コマ描いてしまったので、4コマの方では
みんな好き勝手着てますけど(;'∀')
あ、そうそう
胸のリボンの色が、階級を表してます、っていうのも考えてたんですが
いざ、よくよく考えてみたら、新米・ベテラン・凄腕、とかいう階級分けだと
敵も、よしあれが新米だ!新米からやっちまえ!!とかいう事態にならないか?ってな問題に差し掛かる
あと、お給金とかもあからさまだから、恋のアタックも高給取りが有利じゃないか?ってどうでも良いコトを考える
のでリボンの設定はまあなしの方向で…
それからどうでも良いコトといえば
ブーツのカバー部分も、襟とおそろいの白で塗ってたんですが
白…、汚れの目立つ白…、しかもブーツ…
いや白で塗ってた時はそりゃもう高級感あふれる上品な装いだったんですけども
ブーツの輝く白を常にキープしないといけない護衛を想像してたら、護衛どころじゃなさそう
(任務の腕を磨くよりもまずブーツの白を磨くことに命かけそうだし)
(雨の日は泥が跳ねるので護衛できません、とか言いそうだし)
(お客様のお宅にお伺いするときは必ずおろしたての靴下で!とか言い出す電気屋思い出すし、もー大変)
てことで、無難に茶色にしときました
色のセンス云々はもうあきらめてるんですが
どうでもいい設定で自分で自分の首を絞めるのをなんとか回避したいような
回避してもセンスはないので無駄な努力なような
そんな大人のぬりえ
メイド室 「も、ももも、ももっ、申し訳ございませんでしたー!!!」
婆やさん 「おや、もう終わりですか。ではお説教と参りましょうか」
さすがに、ドレスでの歩き方は俺には解らないしな、ってことで
ミカが不用意にメイドさんに声をかけて大騒ぎ
若様のお客人、ってことで男性陣は一応一目置いている感じではありますが
女性陣の方は、若様には、眉目秀麗、品行方正、聖人君子のご友人でなければ!!というのが総意です
なのでウイたちのことは内心では認めていないんですが、
ウイたちがいることで今まで見ることのなかったミカの喜怒哀楽を垣間見れる事態に、一喜一憂
婆やサンも勿論ウイたちといることでミカの素行が下品になり下がるのが嘆かわしい、とお怒りです
そんな女性陣たちの間でミカたちのあれやこれやを事細かくネタにしてはあーだこーだ盛り上がっています
ハッキリ言ってご法度な行為ですが
婆やサンは「若者たちの感覚も取り入れていかないとこの先の時代に侯爵家が取り残されていくのではないか」
という先々代からのお言葉を守っているので、とりあえず若い子たちのきゃっきゃうふふにも参加してみる心意気
参加してみて、うん、これはけしからんな、というわけでお説教タイム
叱るっていうよりは、道徳や使用人としての理念などを話して聞かせる、お説タイプです
(罰したりするのは主人の役目なので)
ミカが不用意に声をかけて、と書きましたが、このように使用人たちの間に不公平感を生んでしまうので
普段から主人が直接に下の使用人たちに直接声をかけることはならぬ、って事ですね
ミカは解放感のある外から戻ってきてちょっと感覚がまだ戻ってないので、ついうっかりやっちゃった、って感じですが
侯爵家が変革していくのはミカの時代からだと考えてまして
これは、天使が人々の中から消えて、天使像が「邪魔だねえ」とか言われてしまう世界に変革した世界観に倣っての事です
ミカがお爺ちゃんくらいの歳になったころには、ウイたちも今よりは気楽に出入りするようになってるかもしれません
(それはそれで、侯爵家はお堅いのが良い所、と思ってる私には残念な気がしないでもないですけども)
さて、そろそろ夜会が近づいてきて、マジ私に描けるんだろうか?!?!って戦々恐々です
ミカ 「いや、結べる!結べるんだが!解ってる!解ってるから!」
ヒロ 「もーミカが自分の結べよ、俺それ見て勝手に覚えるから」
自分のタイは結べても他人のタイを結んであげることができない謎
ミカが言ってるパフタイ、っていうのは、アスコットタイのことですね
結び方も幾通りもあるんですが、ビジネスマンのネクタイと違って華やかに結ぶので、手順はちょっと複雑です
これ元々は、エルシオン学院のところで作ったネタだったんですが
ミカが思いのほか風邪でダウンしたのが早かったので、お蔵入りになったやつをココで放出
じゃあエルシオン学院の制服のタイはどうしてたんだ、って事になりますが
あれは、あれですよ
綺麗にネクタイ結びになった完成形のタイをボタンで留める系のタイ(名称が解らん)だった、ってことで一つ( `・∀・´)ノヨロシク
ウイたちの世界のエルシオン学院は小さい子もいるので、簡単に着脱できるネクタイでっす
で
自分のはできても他人のはできない、っていうのは、いつもの「基本ができても応用が利かない」というミカの特性ですが
これと同じネタでお蔵入りになってるのが、ダンスですね、ダンス
当初の舞踏会を夜会に変更したことで、ダンスネタが全部お蔵入りになってるんですが
ウイとミオはまあ社交界デビューがまだである、という言い訳が通用するけれども
ヒロは年齢的に社交界デビューしてないとおかしい、というミカの主張の元、ヒロにダンスを教えるネタがあるんですが
これもネクタイと同じで、自分のパートは踊れても女子のパートは踊れないのでヒロが女子パートで覚えちゃう
っていうネタです
(そしてやっぱり、ミカが勝手に踊ってくれたら俺それ見て覚えるし、っていうヒロのオチがある)
(そしてやっぱり2、ミカは相手がいないと踊れなくて結局ウイを相手役にしてやっとなんとか面目躍如)
さらに、応用効かない系の設定では、ミカは音楽やってるくせに歌えない、っていうのもあります
なんやかんやあって、ヒロにじゃあミカも歌ってみろ、と振られて「歌えるわけないだろ」と堂々と返すミカです
なぜなら、習ってないから!
歌は習ってないので、どの程度声を出していいか解らないし、どうやって音程を保っていいのかも解らないので
初めて歌ってみた結果、ウイとヒロに「聞き苦しい!!!」と一刀両断にされる、っていうネタになるところでした
今回、勝手に品評会用のネタに、ネクタイと歌と、どっちのネタを採用しようか迷ったんですが
この歌のネタの、なんやかんやあって、というなんやかんやが全然思いつかなかったので
ネクタイの方を採用しました
(描くなら、おじいちゃんのピアノを弾いてわいわいやってるあの辺りでぶち込むべきでした)
普段くっそ偉そうなくせにできないミカ、っていうのを描くのは全然いいんですが(私の頭の中ではミカはできない子なので)
実際4コマにしてみるともんのすんごい難関です
多分、絵心がないから(-_-;)
前回のヒロの正装に大ウケな3コマ目のミカもどんだけ手こずったことか!!(なので、(≧▽≦)の顔で逃げた)
ミカの笑ってる顔は、どう描いても目がイっちゃってる薄ら寒い人になってしまうのが困りものです
おそらく、ミカが4コマでほほ笑むことは一生ない(微笑っつーか、狂気になるから)
ミカ 「いやコレは違うんだ、お前は何も悪くないんだ…っ…ぷふ…ッ」
ヒロ 「ミカ様ご乱心?」
ミカにしかわからない笑いのツボ
ミカはお貴族様の服は見慣れているので、一目見ただけでどの年代に相応しい色デザイン生地の服なのかが解ります
ウイミオと違ってヒロの服はミカのお義父さんがくれた服なので、ヒロには一回り以上大人の装いなんですね
それをなんとか、貴族でない若者が貴族の呼び出しを受けてそれなりの格好で駆けつけた体、のバランスに仕上げました
ってことなので
ヒロにはミカが何でそんなにツボってるのかさっぱり解んないんですよ
勿論ミカのツボなんでミカにしかわからなくていいんですが、言ってみればおっちゃんが園児の服着てるみたいな違和感?
…ちょっと違うか
ミカの疲労と緊張の蓄積もここにきてピーク!最大のツボにはまった模様
衛兵A 「皆!!彼らはホンモノだ!!近づくな殺られるぞ!!」
衛兵B 「あのほにゃらかした見てくれは世を忍ぶ仮の姿だったんだ!!」
衛兵室 「まじかーーー!!!」
衛兵A&B 「マジだーーー!!!」
そんな衛兵たちの戦慄の午後
ハイ、では答え合わせに参りましょうかネ…
(敗北感)
まず、控室でウイたちは武人か否かで盛り上がって遊んでいた衛兵たち(1話)
そんなバカ話の輪から外れて持ち場に戻る二人の衛兵(2話)
偶然、庭で談笑しているらしいミカ&ご友人を目にします
ここでバカ話を思い出した二人は、ちょっとしたノリで、物陰から「御命頂戴!」とかいう
おふざけを、二人にしかわからないおふざけをやって、俺たちもバカだねー、って笑ってたんですが
ミカ&ご友人たちに察知され、ブーメランの威嚇攻撃をくらって凍り付いてます
嘘だろバレてたのか?!っていうのと、顔を知られたら懲罰必至、なので逃げようとしてるんですが(3話)
ブーメランを回収にきたヒロに、とんでもない脅しをかけられて竦み上がってます
仲間たちにこれを報告し、おふざけでちょっかい出すんじゃねえ!とくぎをさしたところです(枠外)
で
この話をミカたちの視点で見ると
庭で談笑していたミカが、背後の木から、つつーっと降りてきた蜘蛛の気配を察知し(2話)
「殺気!!」を感じているのと同時に、いちいち蜘蛛に警戒するミカには慣れてるヒロが、
ブーメランで蜘蛛を追い払ってます
これが描けねえ!!(…いや、他も描けてるとは言いませんが)
蜘蛛の糸めがけてブーメランを投げ、糸をひっかけたまま茂みにブーメランが突き刺さったとでも解釈してくださいませ(-_-;)
ヒロがそのブーメランを回収(3話)
当然、衛兵二人のおふざけもしらなければそこの茂みに二人が潜んでいることも知らないヒロですが(ここも描けてねえ!)
蜘蛛を逃がしてやる時に「ミカは蜘蛛嫌いだから遠くで幸せに暮らせ」的なことを、蜘蛛に!語り掛けて!解放してやってます
っていうお話
この2パターンが偶然にかみ合って、衛兵たちはヒロが遠くの殺気も察知する凄腕の武人だと信じ切ってる感じです
勿論、仲間にも言っておけ、と言われているので何が何でもほかの衛兵仲間のおふざけを阻止です
衛兵たちもそんな鋭い気を読む達人にうかつに手を出して懲罰やら解雇やら受けてはたまらん!ので、おとなしく静観の構えですよ
そんなわけで、ほにゃらかした見てくれでも衛兵たちには一目置かれているヒロたちです
見てくれに以上に中身もほにゃらかさんなんだが、それはミカのみぞ知る悲劇
ネタは0.3秒で思いつくものの、画力がなくて闇に葬り去られるシリーズ~(パチパチパチ…)
…いつの間にシリーズ化したというのかね?というのはさておき(山のように葬りさられているもので…-_-;)
3話構成ですが、もーほんとに画力が追い付かなくてほぼ理解されないだろうなと思いつつ
今世間的には夏休みなので!出来の悪い自由研究的な生暖かさで!
やっちまったはっはーん♪
大丈夫、ラストに親切丁寧な解説付き(いつもより事細かく)
ウイ 「これがミカちゃんの言ってた、何もしない、っていうアレね」
ヒロ 「あー、自分で自分の事やると恥ずかしいことになるっていうアレな…」
確かにミカが自分で自分の事をやるより、よっぽど早くて確実です!
っていうのを、やっと解ったウイたちでっす
じゃあなんでミカはかたくなに(愚盲に?)自分で自分の事をやらねば!って思ってるかっていうと
小さい頃に「従者は要らない」って宣言したからです
人と関わることを極端に嫌ったミカは他人を遠ざける選択をしたわけですが
「だったら自分の身の回りの事は自分でしなさい」「それが出来るなら認める」っていうのが大人の返事です
それを祖父や母は良しとしたわけじゃなかったんですが、ならばやってみるがいい、っていう、まあ見守る構えだったんですよね
今は言って聞かせても解らないみたいだし、どうせすぐに不便になるんだしそのうち気づいて改めるだろう、という感じ
しかしミカは思いのほか頑張るし、ますます頑固になるし、学校に入ってからは友達もできないしで、周囲は奇人変人扱いです
(だから今更、冒険者として外に出る変人、と思われてもミカは痛くも痒くもない)
これが今のミカの現状なのですが、祖父はまだちょっと及び腰
ウイたちが友としてミカを変えていってくれているようなのは見てわかるけど、そこに自分が口出ししていいかどうか探っている状態
母も同じ見解ですが、祖父が言えないようなので自分が言わねば、と思っています
ミカの成長と家族との関わりはここから変わっていきます
てことで
ミカがウイたちの為に人払いをしてるので4コマにほかの人たち出てこないですが
(私が描けないっていうのもありますが)
屋敷にはいろいろな人たちが大勢いて、暮らしてたり通ってきたりしてます
親戚とか役職とか、まあ色々…(そこは人数が多すぎてあんまり考えてないです)
その人たちからも、夜会用に貢物が続々到着
なんの問題もなく夜会に参加できますね!
(貢物です、もらったものは返しません!あとでミカがお礼に何か贈り物を返す感じ)
この準備に、主にドレスとかのお直しに、三日でいけるかな?っていうのが当初の不安で、そこを曖昧にしたんですが
(ウイたちはまあいけるとして、義父のタキシード系仮縫い段階から間に合うか?っていうがちょっと)
そこはそれ、侯爵家お抱えの職人たちの誇りにかけて間に合わせます!
いよいよ夜会、…の前におふざけはいります
ヒロ 「そんな急激にめんどくさくならないで(´;ω;`)ウッ…」
ミカ母の侍女、レア夫人からドレスのお届け物です
描き切れなかったので補足
一応、二人の娘の社交界デビューの為に仕立てたドレスですが、当人たちに「流行りじゃないから嫌!」と拒否された模様
レア夫人、もともとドレスとかお洒落に興味がある質ではない上に、根が庶民なものですから社交界には疎いです
普段来ているドレスも、ミカ母が仕立てさせてるくらいです
まあ、流行りじゃない=普遍的なドレス、ってことでウイたちのお披露目にはちょうどいいかと…
思ったんですが
ドレス描くのが楽しくてついつい装飾過剰に!!
しかし華美にしないドレスだと結婚式に着ていくみたいなドレスになるし!!
まあウイたちの年齢なら、ちょっとくらいいいか!て感じのラインに収めた…つもり…デス…
もうそこは雰囲気で!
雰囲気4コマなんで!
毎回これで逃げ切る私をお許しください…
こいつさえコレ着れれば解決なのによー、っていう
侯爵家のお屋敷にお泊り、という一大イベント。
ミカが徹底的に人払いをしてくれているおかげで、自分たちは勝手気ままにしていられるのだが。
(この寝床だけは許容できーん!!)
と、心の中で唸ってヒロは寝返りを打つ。
寝返りを打つたび体は沈むし、じっとしていてもぐにゃぐにゃの柔らかい感触が気になって落ち着かないし、
そうでなくても、ふわふわの軽いものが全身に張り付くように覆いかぶさっていて、
身動きする体の形に合わせて吸い付いてくるような滑らかさが、…いっそ何かの呪いの様で恐ろしい。
ウイなんかはそれをとても気に入ったらしく、起きている時でもふわふわのクッションを見定めてはもふもふして楽しんでいるが
自分には無理だ、と思う。寝床は適度に固さがなくては落ち着かない。
幸い、ミオには同意を得られたのでひとしきり辛さを分かち合って多少は満足したものの。
それで眠れるかと言うのは、別の話。
(うーん、つれええ…)
と、何度目かの溜息をついたとき、そうかコレじゃつらいよな、と思い至る。
この寝心地に生まれた時から慣れているのなら、そりゃあ旅の間の宿のベッドはつらいだろう。
言わずと知れたミカのコトではあるが。
ミカは朝が弱いのだと思っていたが、実は寝床に問題があって、よく眠れていないのではないだろうか。
そんな考えがふと浮かんで、ヒロは目を開けた。
闇に慣れた目には、月明かりに部屋の様相ははっきりととらえられる。
それらを何とはなしに目に入れながら、ここで生まれ育ったミカの事を思う。
(ミカは、そういうことを言わないから)
いや、そうじゃない。思い返せば、出会って旅を始めた頃には意見の相違はあった。
些細な衝突、他愛ない不満や疑問、見知らぬ者同士が寝食を共にすれば必ず起こる諍い。
ミカがそれらを言わなくなったのはいつからだろう。
(思えば、あれが…)
あれが、きっかけだったのか?
…もうずいぶん前の事、野営の食事にミカが口を出してきたことがあった。
いくら節制とはいえ、食事にくずを使うな、と。
それはヒロにとっては心外も心外、いわれなき非難だと思ったから、よく覚えている。
自分一人ならともかく、仲間のための食事で、それも旅の間の要となる食材に「くず」を使っている意識はない。
ちゃんとした仕入れ先で、値段の交渉も適正価格、十分に満足するだけの物を使っている事を主張するヒロに、
ミカは納得していない様だった。
だから、ミカがいうところの「くず」な食材とは何なのか、それを問いただした結果。
それがまた衝撃的で。
形が揃っていない、色や艶など見た目が悪い、判別できないほど小さい、口当たりが悪い等々…
育ちが良いのだろうな、とは薄々思っていた。城内で兵士として配属されているくらいだから、そこそこ生活は良いだろう。
時折、世間知らずな発言もみられたし。
人に命令することに慣れているような口調も、まあそういう事なんだろうし。
と、ミカの主張にやや呆気にとられたヒロは、「ちょっと見てな」と麻袋の中から大きめの芋を取り出し、ナイフを構える。
そういう時のミカは、やたらヒロに素直に従った。
(今思えば、庶民の生活を学ぼうとする意欲だった、って事なんだろうけど)
芋ってのは普通、こういうもんだ、と目の前で見せれば、知ってる、と返す。
知ってはいても調理はしたこともないだろうミカの前で、芽とひげ根、皮の固い所を取り除き、傷んでいる箇所を削る。
「下準備はこれで、終わり。あとは料理に合わせて、大きく切ったり、小さく切ったりするけどな」
それがどうした、とでも言いたげなミカに一通り芋の全体を見せてから、「ミカが言ってるのは」と芋を手に構え、
今度は丁寧に皮をむいていく。
ざらついた表面の皮を残さず、綺麗にむいてしまえば、鮮やかな黄色の全体が露わになる。
「こうやって、皮の部分を全部捨てて口当たりを良くしてんだよ」
土に触れ常に成長していく外側の部分は固く頑丈で、それに守られている中身は瑞々しく柔らかく、新鮮だ。
皮をむいた芋と、むいていない芋をそれぞれ手に乗せてやって、比べさせる。
そうしておいて、「それで」と、むいた方の芋をミカの手から取り上げ、ナイフをいれる。
綺麗な長方体にするために、大雑把に、周りの実を削り落とす。
「形が揃ってる、ってのは、こうやって揃えてんだと思うよ」
他のどんな野菜でもな、と、仕上がったそれをミカに見せる。
自然に採れる野菜や果物がみんな均一に同じなんてことはありえない。人間がみんな違うのを同じだ。なんて言って
「勿論、形を揃えるにはそれなりに大きな物ばかり買わないといけないけど、これくらいの市場ではそんな大きい野菜は見ないな」
だいたいこんなものだ、と麻の袋の中を見せてやる。
芋と人参、豆、みんな片手で包み込めるくらい。
「だから、少しでも多く食べるところを確保するために皮は極力むかないし、形なんか不揃いでもどうでも良いんだよ」
そういうのが、料理屋や大きな宿の食事とは違う、ごく普通の庶民の食事だ。
それを黙って聞いていたミカは、じゃあ、とヒロが落として捨てた皮と実の部分を指さす。
「それはどうしてるんだ」
「どうって」
ヒロとしてはミカに解らせるための実演だったので、この後、まあ薄く薄くうすーーーーーく向いた皮は捨てるにしても、
長方体に切り落とした方の実は、ゆでてスープに入れるなり、つぶして塩を混ぜて食べるなりするけれど。
どうしてるんだ、という尋ね方は、ヒロの主張が正しいなら自分が今まで口にしてきた料理ではどうなっているのか、という事だろう。
「いや、それは知らねえけど」
まさか捨てたりはしないと思うから、まかないとかに使うんじゃねえ?と、あの日の自分は言ったものの。
(この分だと捨ててても全然おかしくないような…)
と、侯爵家の規模を知ってしまった今のヒロは、思ってしまう。
美しく整えられた食材、味だけでなく、見た目にも一切手を抜かず、完璧に作り上げられた、それは芸術のような料理。
それらが当たり前の日常が、この屋敷にはあって。
そこで生まれ育ってきたミカの常識を、この数日でしか体験してないヒロには、あの日のミカが何を思ったのか、
想像することもできないけれど。
まかないとは何だ、と尋ねられて、以前、小料理屋で下働きをした経験を話してやった。
「お客さんにはお金をもらうから良いもの出すだろ、その切り落としを従業員や家族の食事にするんだよ」
ミカは自分の手の中にある立方体の「良いもの」と、ヒロの足元に落ちている「切り落とし」を見比べている。
見比べて、ただじっと考え込んでいる様子は。
(きっと、ミカにとっては初めての衝撃だったはずなんだ)
ヒロがこの屋敷で次々と衝撃に打たれたように、ミカもきっと。
だがあの日のヒロにそれは解らなかった。だから、言ってやったのだ。
「俺たちはそれで慣れてるから良いけど、ミカがどうしても無理、ってんなら、ミカの分はちゃんとむいてつくってやるよ?」
食材がくずではない、と解って葛藤しているのか、と思っていたからの提案。
育ちがいいなら、まあおいおい慣れていけばいいんじゃないかな、と軽く考えたからなのだが。
いや、とミカは、手の中の芋をヒロに返しながら言った。
「いや、いい」
「え?そうか?皮むくくらいなら、別に手間じゃないけどな」
「でも、その切り落としはお前の分になるんだろ」
「まーな、俺は気にならないからな」
「…俺はお前たちの主人じゃないし、お前たちは下働きでもないんだから」
そうさせるのは違うと思う、と言い、お前が正しいのは良く解った、と言った。
それが、郷に入れば郷に従え、というそれを実践しているミカのそれまでの様子と何ら変わりはなかったから、
ヒロもそれ以上は追及しなかった。
…しなかったけれど、ミカの食が進まないようなのは見ていて良く解るし、仲間である以上同列であるべき、と言った
ミカの心根は好ましかった(それまでのヒロの人間関係で知った育ちのいいらしい人間とは違っていて驚いた)ので
こっそりとミカの料理にはひと手間と、「良いもの」を加えてやるようになった。
ミカはそれを、ミオに習ってヒロの調理の腕が上がった、というように思っているらしいが、違うのだ。
(いや、それもないとは言わないけど)
ミオの料理でも同じだ、食材は大事だから。生きているものを刈り取って、見た目が悪いから食べないという道理はない。
(俺はそれを究極の究極の究極の極致まで食える、ってのが当たり前だから)
だから、良い。ミカには知られなくて良いことだ。
(どうやったって、歪なものは歪でしかなくて)
それを美しく整えたとしても、削ぎ落された欠片は残る。残ったそれを。
(あの日のミカは、受け止めた)
受け止めたからこそ、何も言わなくなった。
それを、傍についていた自分は無意識に「良し」としていて、何も言わなくなったミカを気に掛けることもなくなっていた。
この屋敷にこなければ、たぶん、ずっと思いを寄せることもなかっただろう小さな出来事。
(正しいって、何だろう)
どうすれば良いか、どうするのが良かったのか。
自分は、ずっと「良い」ことを望んでそればかりを追ってきたような気がしているけど。
実際そうでもないのかもしれない、と考えた時。
ふいに、部屋のドアがノックされた。
こんな時間になんだ?!と飛び起きれば、寝室のはるか向こうのドアから光が差し込んで、ミカが顔を出した。
「もう寝てるのか」
といういつも通りの声音にそれまでの思考を中断され、脱力しつつ、寝室から出る。
「ちゃんとベッドで寝てますよ」
と言えば、何の話だ、と返される。
あれ?床で寝てないか見張りにきたわけじゃないのか、とミカを見れば、片手にワインを持っている。
ますます訳が分からないで首をかしげると、飲むか、とワインを見せる。
このお坊ちゃま、なりふりが下町の不良少年なんだよなあ、なんて思いながら黙っていると、ミカは勝手に用意を始めた。
「…ワイン飲みにきたのか」
「そうだ」
「何で」
「何でって、…飲まないのか」
「いや、飲む飲む、いただきます」
正直、寝るには随分と早い時間だし、ちょうど喉も乾いていたし。
「じゃ、座れ」
訳が分からないまま、とりあえずミカが用意をしているテーブルの、これまた無駄にでかいソファーに胡坐をかいて座ると、
その隣にミカも腰を下ろした。
「ウイが、こっちに来ればいいだろ、って言うから」
と言いながら、グラスを並べ、ワインの封に手をかける。
ヒロがこの部屋に一人にされるのが不安でウイの部屋に混ざっていいか聞いたら、案の定ミカにこっぴどく説教された初日。
ヒロのためにわざわざ、間取りが分かれている館を用意してやったのに、というそれには納得できたものの。
じゃあミカの部屋に混ぜて、っていうと自室に客人は泊めない、前例がない、そういう事をすれば屋敷全体が混乱する、と言われ
渋々、ヒロは一人でここ滞在しているわけだが。
ウイに言われて来た、というミカが、「ん」とワインの注ぎ口を向けるので慌ててグラスを出す。
なるほど、ミカなりに気にはしていてくれたようだ。
「あとは」
と、自分のグラスにも注ぎながら、ミカが言う。
「学生時代、舎監の目を盗んで飲酒をするのが流行っていて」
「え?ミカが?」
「俺じゃない、周りが、だ。俺はものすごくくだらないと思っていたから、参加したことはない」
それ以前に、友人がいなかったわけだが、と言うのは互いに暗黙の了解。それを視線で交わすように、ミカはヒロを見る。
「お前となら良いかと思って」
と、ひどく生真面目に言われては、返答に困る。
それは、学生という規律の厳しい時代に羽目を外すから楽しいのであって、今自分と酒を酌み交わすのは違うんじゃないかな、
と思うのだが、その辺り、ミカの思考はどうなっているのだ。
「う、うん、そうか」
「…ほかにいう事はないのか」
不機嫌そうに睨まれて、愛想笑いを一つ。
「光栄でっす」
「嘘くせえ」
「嘘じゃねーよ、来てくれてすんげー嬉しいよ!嬉しいけどさあ」
飲んだら帰るんだろ自分の部屋に、と、ミカのこの無意味な行為に困惑してる風を見せれば
いやこっちに泊まる、と言われて、え?!マジで?と、身を乗り出す。
「なんだーそれを先に言えよなー、いやあ実にいい酒ですなあー」
「嘘くせえ」
途端に調子に乗っておだてあげようとするヒロの態度に、先ほどと同じセリフを重ねて、文句の一つも続けようとしたのだろうミカが
仕方ないなというように笑って見せた。
そんなミカを見て、ヒロもようやくいつもの自分を取り戻せたような気がする。
だから深く考えずに、グラスに注がれたワインを口にして。
「ぐぇっはっ」
と盛大にむせ返る。
いい酒ですなあ、なんて調子に乗って言ったが、日ごろから進んで酒を飲んだりはしない。それは旅の間のミカも同じだ。
ただ、飲み方は覚えておいた方が良いと言うミカが用意する酒類を時折口にするくらい。
「まっずぅぅぅっ!!なんだこれ、まずっ」
「え?そんなにか?」
と驚いたミカが、少量を口に付けるようにして確かめる。
「…うん、まずいな」
「まずいな、って何?!どゆこと!?毒見?俺に毒見させたのか恐ろしい子っ」
「いや、説明する前にお前が勝手に飲んだだけだろ」
呆れたようなミカが別のグラスを差し出し、水、と言うのを受け取る。
いつも大体ミカが持ってくる酒は軽く飲めるので、完全に油断していた。一気に水を流し込む。
「俺たちが飲んでいい強さの酒じゃないと思います先生」
「そうだな、結構きついなコレ」
ヒロに同意した先生、ミカが手にしている瓶には、なんのラベルも張られていない。
「お高いのか」
「いや、おれの荘園で試しに作らせた物なんだが」
俺の!荘園で!とヒロが絶句しているのを別の意味にとったのか、ミカがきまり悪そうに、いやその、と言いよどむ。
「基本は葡萄でワインを作らせているんだが、作物一種だけだと農作被害に会った時、その年は全滅するだろ」
だからほかの作物でも作れないか、ちょっと試行錯誤をしていて、という説明に、ヒロはただ頷く。
そこそこ飲める物ができた、と届けられていたのを思い出して、これでいいかと持ってきたらしい。
「だから別にお前で人体実験をしたというわけじゃないからな」
「わかったわかった、うん、わかりました」
おれがビックリしたのはそこじゃないんだけど、とは言わず、ヒロはグラスに残った酒の匂いを確かめる。
「材料何?」
「これは、芋だったかな」
「へー芋かー、全然わかんねーな」
「解るほど酒を知らねえだろ」
「そりゃそーだけど、葡萄とか桃とか解るじゃん。甘い匂いするし」
そんな事を言いながら、あ、と思いつく。
「ソーダ水に混ぜてみたらどうかなコレ、甘くて飲みやすくなるんじゃねえ?」
「甘くする意味が解らねえ」
「じゃあミカは水で薄めてみろよ、絶対これそのままだとキツイんだって」
「なるほど」
ヒロの提案を受けて、ミカが酒の残ったグラスに水を足していく。
それを味見しながら、お互いにこれなら飲める、という所まで水で割った結果。
「…こんなに薄めるんなら別にこの酒飲まなくてもいいよな」
「そうだな…」
そんな不毛な結論に達しては、興味も失せるというものだろう。二人してソファーに身を投げた。
背もたれに反り返り天井を見ながら、「そうだ、料理!料理に使うってのもありじゃねえ?」とヒロが声を上げれば、
クッションに身を預けているミカが、くつくつと笑う。
「お前って、本当に」
「なんだよなー」
互いの姿を目に入れず、声だけで反応を窺う。軽く酒が入って、楽しい気分になっているらしい。
「どんなものでも余すことなく利用しようとするな」
「そりゃーまー、利用できるならとことん利用しないと、失礼でしょーよ」
余り、捨て去られるのは、しのびない。どんなものでも。
「なるほど、礼か」
「礼だ」
そう言い切ったヒロは、別の事を考えていた。
あの日。
美しく整えられた形を手にし、美しく整えるために切り落とされたものを目にしたミカだからこそ、
今のヒロの言葉を受け入れることができるのかもしれない。
いや、それは自分の成した驕りだろうか。
「じゃあ、料理と…、ソーダ水だったな。あとは、何か手があれば、考えるか」
他愛ない発言も一蹴せず、しっかりと受け止めている様子は普段のミカと何ら変わりない。
変わったのは、ミカの境遇を知ってしまったヒロの方だ。
住む世界が何もかも違う。それをいやというほど思い知らされたこの数日、友達の家に遊びに来たなんて次元じゃない。
ミカがとてつもなく遠い存在なのだと、やっと理解することができた。
それなのに。
自分は、ミカが何も変わっていない事を、ちゃんと信じていられるのだ。
個人で荘園を管理して、多くの人間を使い、それらの将来の事も見据えて支持を出したりする実態を見せつけられていても。
あの日のミカが、ヒロの中に生きている。
生きているミカと今まで積み重ねてきた時間が、互いの距離を結び付け、どんな障害に引き離されようともミカの本質を見誤る事はないと思える。
これは驕りじゃない、自信だ。
「俺、ミカんちに遊びに来てよかったと思うな」
「なんだ、突然」
「ウイが来たがってたのは、これなんだなーって思って」
よ、と軽く勢いをつけて身を起こせば、ミカがこっちを見る。
「これって、どれだよ」
「自己満足」
「自己満足だあ?」
「いいぞ、自己満足。現状に満足できて、さらにその上を目指せるって事だろ」
少なくとも自分は、ミカの境遇を知れてよかったと思う。
「別にそれを知ったからって、これからのミカに対する態度が変わるとか、ないんだけどさ」
ミカだって俺たちの家に来たからって今までと何も変わらないだろう?というヒロに、ミカが頷く。
「そうだな、態度は変わらなくても見る目は変わったな」
お前のいう家族というものがどういう事か良く解った、と言われ、俺もだ、とヒロも頷く。
「解りあえないのはしょうがねえ、って思ってたけど、実際目にするとそういうもんでもないな、って思ったな」
「形が違うだけで、本質は同じだ」
「同じか」
「整えられているか、いないか、だ」
そのミカの言い分を、ヒロはゆっくりと、胸のうちに収める。
美しく形を揃え、美しくあるために葬り去られるものを、ミカは必要としている。
いつか、俺にはお前たちが必要だ、と言っていたミカの心は多分、ここにある。
これから先も、自分たちは違う視点から世界を見るだろう。同じものを、違う形のものとしてとらえ、立場を変えるだろう。
その根底にあるものを、今、知った。
知るという、強み。
それさえあれば、互いの立場の違いなど、何の隔たりにもならない。
「夜会、成功させような」
ヒロが言えば、ミカがちらりと笑う。
「安心しろ、とことん利用してやる」
ミカにしか立ちえない立場の物言いで、礼を尽くす、と言っている。
「それは、願ったり叶ったり」
三度目の、お調子者の本懐ここにありと言ったヨイショには、「嘘くせえ」という抗議はこなかった。
はるか高みにある美しきものが、いびつなものに送る礼と賛。
それはきっと、類をみないお披露目になるだろう。
全然絞められなくて、中途半端にぶったぎりですがスミマセン(;´・ω・)モウムリ
ミカ 「そんなわけにいくかー!」
ウイヒロ 「またアレをやられちゃたまんないよ!!」
「人は、自分の見知らぬ領域で他人が楽しそうにしてるとやっかむものだって」
っていうヒロの言い分に「へーそんなものかー」って、全員がヒロのこの作戦に乗っかったわけですが
4コマに入らなかったので、ここに置いておきます(;'∀')
貴族社会に波風立てない、っていう方向での作戦会議だったのでウイとしては自分が矢面に立つ気満々でしたが
ミカが貴族社会の外に出てしまっている以上、どうしたって波風は立つので
だったら、ウイ主導でミカが何をしてるか解らないがゆえに勘ぐられる…、
冒険者を隠れ蓑にしてミカが何か裏で起こしていると疑われる、よりは
ミカ主導で大義名分を存分に疑われているほうが、貴族側のねたみうらやみなども単純化しやすい、とヒロは睨んでます
単純なのは大好きだ
天使御一行様
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愁(ウレイ) |
天界から落っこちた、元ウォルロ村の守護天使。 |
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身一つで放浪する、善人の皮を2枚かぶった金の亡者。 |
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金持ちの道楽で、優雅に各地を放浪するおぼっちゃま。 |
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