葉が赤くなる紅葉、黄色くなる黄葉、茶色くなる褐葉、紅葉には3種類あることが知られています。木々の紅葉は1本1本が色づきますが草の紅葉はある程度の群落を成して色づくのでその光景はまるで草原のパッチワークです。
9月下旬から10月中旬頃まで、八島ケ原湿原の草紅葉は茶色を基調とした落ち着いた彩りの草原に点在する木々の紅葉が浮かび上がり、その立体感はこの時期ならではの景色を私たちに見せてくれます。秋は動物達の活動も活発になり木道を歩くとあちらこちらにそのフィールドサインを見ることができます。また鹿の鳴き声が谷間に響きわたる夕暮れは夏の喧騒の中で浮足立っていた自分を恥ずかしく思い、理性的に心の内面に目を向けさせてくれます。
秋はまた昆虫の季節でもあります。八島ケ原湿原での代表選手は全国的に有名なカンタン、キリギリス、ヒロハネヒナバッタ、コオロギの仲間達です。私たち日本人は江戸時代から虫の音を楽しんできましたが西洋の人々は虫の音をサウンドではなくノイズとして捉えるようです。しかし最近では日本でもその音色を心地よい音ではなく雑音として捉える方が増えてきているように思います。
鹿の鳴き声や虫の音を代表とする八島ケ原湿原の秋は日本の心の特徴を良く表している季節です。秋の八島ケ原湿原に身を委ねると私たちが忘れかけている日本人の心あり方に気がつきます。