八島ビジターセンター

長野県のほぼ中央、霧ヶ峰高原の八島湿原を中心とした地域の最新情報をビジターセンターからお届けします

移ろい

2007年07月31日 | Weblog
今日で7月が終わります。あっという間の一ヶ月でした。三連休を境にビジターセンターの来館者はどんどん増え続け、毎日いろんな人がきて、いろんなことが起こりました。

そんな中、4月にはずっと先だと思っていたツツジやキスゲの季節は整理する暇もなく記憶の引き出しに押し込まれようとしています。ある植物は実や種となり、ある植物は唐突に花を咲かせ、ある植物はもう少し自分の出番を待ちつづけます。

あらゆる変化は目まぐるしく、留まるところを知りません。7月が終われば霧ケ峰では夏の半分が過ぎたのと同じようなものです。そして、秋のお花と呼ばれるワレモコウやマツムシソウ、アキノキリンソウなども増えていくこととなります。

是非、一年のうちに2回以上霧ヶ峰を訪れてみてください。季節を変えるのもいいですし、一月後に来るのもいいと思います。自然は移ろいやすく、いろいろな姿で皆さんを出迎えてくれることでしょう。そう、ちょうど夏の日の雲のように。

この仕事を始めて3ヶ月とちょっと。このままあっという間に今シーズンが過ぎ去ってしまう。あわただしい夏の予感です。

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マルバダケブキ

2007年07月29日 | Weblog
木道の横で、マルバダケブキのつぼみが今にも開きそうなほどに膨らんでいます。小さなかぼちゃのような黒茶色の球体は最初つぼみであることがわからないほどの独特な雰囲気で私たちの目を捉えます。様々な花が咲き乱れる草原の中にあっても、それは人工的でいかにも不自然です。個々のつぼみはどこか滑稽で微笑ましく、よく見るとジョルジュ・スーラの点描画のような奇妙なグラデーションを描いています。本当ですよ。このつぼみを見ていると高校の美術の授業でやった点描画の時間を思い出すのです。先生が「マルバダケブキは霧ケ峰における個性派植物のひとつです」と説明する姿が目に浮かぶようです(笑)。

マルバダケブキに限らず、周囲を見渡すと自然の作り出す色形は本当に多岐にわたっていることに気がつきます。早春の新葉がそうであるように、つぼみや咲き始めの花々も出来立ての瞬間が最も落ち着きがあり、そのみずみずしい姿を楽しむことが出来ます。そして、外形から内部の模様に至るまで、非常に正確で整った秩序を持ち合わせていることに驚くのです。この時期、その種類はどんどん増えているようで、湿原はさながら自然のデザインカタログのような様相を呈してきましたよ。

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補足

2007年07月25日 | Weblog
昨日の気象データによると、実に15日もの間90%以上をキープし続けていた湿度が47%にまで下がり、長い間続いていたぱっとしない天気が一変したことがわかります。今朝の冷え込みも本当に久しぶりに10度を下回りました。放射冷却でしょうか。

自然界では何かが変化するとき、新たに生じるとき、その前触れが多々存在します。

夜明けや夕暮れ、雨降り前など、風の方向が変化したり、空気のにおいが変わったり、時には人の気持ちまでも変化します。昨日の風はじめじめとした天気を一変させてくれる、少し強引な立役者だったのでしょう。気象は時に強引でダイナミックです。それはしばしば人の想像する範囲を超え、そのエネルギーの前には人は完璧に圧倒されてしまいます。

もう一つ、今回の忘れ路の丘での体験は僕に一つの見方をおしえてくれました。それは、遠くから物事を見ることの大切さです。八島から諏訪盆地へと流れる雲の明確な流れ。これは八島にいたら把握することが不可能なものです。きっと、霧が出たり消えたりを繰り返すように私たちの目には映ったことでしょう。忘れ路の丘にいたからこそ、客観的、全体的な視点で風と水の織りなすダイナミックな演出を見ることが出来たわけです。

これは、時には必要な視点だと思います。自然でも、社会でも、自分自身についても。時々、自分の固定された場所を飛び出して、一歩離れたところから物事を見つめること。世の中にはそうしないと見えてこないことがたくさんあるような気がします。


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予兆2 そして変化

2007年07月24日 | Weblog
その風は上空から地表を押し付けるように斜面を下方へと駆け抜けていました。

霧ケ峰は南風や西向きの風が卓越する場所で、それが霧の発生に密接に関わっているということを以前に紹介しました。しかし、この日の風はその正反対。北から南、東から西へ猛烈な勢いで吹き抜けていたのです。それも莫大なエネルギーを含み、全ての物を洗いざらい平地に向かって押し流していきます。

八島のほうを振り返ると、巨大な霧のかたまりが思いとどまるように湿原上空に溜まっていますが、風は容赦なくそれを押し流し、巨大な生き物が斜面を這うように諏訪盆地へ下っていく様子が見られます。上空には散りじりとなった雲だけが取り残され、間の青空はどこまでも澄んでいます。その様子は、まるで雲の発生や消滅の映像を早回しで見ている時のようでした。本当に特殊な光景です。荒々しく異様ではあるが美しい光景。

*****

その数時間後、霧ケ峰の空は満天の星で埋め尽くされていました。
今日になってセンターに来たお客さんの話では、今朝、車山からはすばらしい雲海を見ることが出来たということです。遠くには富士山。天気は快晴。長い間、重苦しく霧ケ峰を覆っていた曇天は嘘のように晴れ渡りました。全てを風が押し流してくれたのです。

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予兆1

2007年07月23日 | Weblog
それはダイナミックな光景でした。仕事後、僕は久しぶりに八島を抜け出して気の向くままに諏訪市側の霧鐘塔に足を運びました。久しく行ってない場所。ビジターセンターで働く前は好きで行っていた霧ヶ峰の様々な場所に仕事を始めてからは全く行けてなかったので、懐かしい思いで自然保護センターから忘れ路の丘を登っていきます。少しずつ眼下に広がる茅野市の町並み、傾いた太陽、それを受けて信じられないくらいに真っ青に輝く草原。久し振りの訪問に自然も少し気を利かせてくれたようです。文句なしの絶景でした。

たくさんの荒々しい雲、その雲の切れ間から時々見られる青空と遠くの山々。ストーンヘンジのような山岳展望案内版、捨て去られたように誰も乗ってないリフト、ちゃんと立派な色彩を持ったオオバコ群落、登山道、孤独なニッコウキスゲ、嫌われ者のフランスギク、誰もいないベンチ・・・・。そのことを明確に記述しだしたら、物語の重要場面の風景描写のように、3ページも4ページも必要となるでしょう。それくらい、周囲のもの一つ一つがきちんと意味を持って存在しています。まるで表現されることを求めるかのように。しかし、もちろん僕にはそれぞれに的確な言葉を与えることは出来ません。自分の目や体で体験することに勝ることはないのです。時間までもがそういうものでした。

そして、いつもとは何かが違います。・・・風です。

続きは明日のブログで。

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アサギマダラ

2007年07月22日 | Weblog
つづき・・・

前回紹介したヨツバヒヨドリの花は一つ一つが細長い筒状になっていてその奥に蜜があります。そのため、昆虫が蜜を吸うためには筒の奥に届く長いストローが必要となり、それを持つ特定の昆虫だけが集まってきます。これにより、ヨツバヒヨドリにとってはある特定の昆虫が安定して花粉を運んでくれることになりますし、昆虫にとっても確実に蜜を吸うことが出来るので両者の間には強い相互関係みたいなものが成立します。

その、ヨツバヒヨドリの吸蜜者の代表がアサギマダラです。渡りをすることで知られ、そのきれいな模様から多くの人に人気のあるこの蝶。夏になるとヨツバヒヨドリに三匹も四匹もアサギマダラが群がっているのを見ることが出来ます。

理屈はともかく何でこんなにもよく出来た協力関係が作られたのかはいつも不思議に思います。動植物の進化はダーウィンの自然選択説が一般的な概念となっていますが、こういう見事な生物界の仕組みをみると、もう少し別の意図的な力があってもおかしくないような気がしてきますね。


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開花情報 初夏

2007年07月19日 | Weblog
梅雨の空は相変わらずぐずぐずしておりますが、湿原周辺には夏のお花が日に日に増えてきています。八島ヶ池周辺で目だってみられる花の開花情報をお伝えします。

今、見ごろの花は、ニッコウキスゲ、ノハナショウブ、ハナチダケサシ、ウツボグサ、ハクサンフウロ、オオカサモチ、トキソウ、キリガミネアキノキリンソウ、イブキトラノオ、カラマツソウ、などなど

現在つぼみが目立ち、今後増えてくる花は、ヤナギラン、クガイソウ、ノアザミ、ヨツバヒヨドリ、ノリウツギなどがあげられます。

写真はヨツバヒヨドリ。
その昔、枯れた花や草を火種として「火を取った」ことから「ヒヨドリ」という名がつきました。よく似た語源を持つ植物に秋に咲く「ボクチ」の仲間があります。「ボクチ」は「火口」と書き、やはり草を火打石から火を移し取る道具として利用したそうです。この仲間で霧ケ峰には「ハバヤマボクチ」というのがあります。「ハバヤマ」とは葉っぱの場所の山と書き、草刈場のことを意味します。

僕はこれらの由来や感じがとても好きです。火を取ってヒヨドリ。火の口でボクチ。ついでに草刈場に生えるのでハバヤマボクチ。昔の人々の生活を感じることの出来る風情ある名前たちです。

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三連休が終わりました。

2007年07月16日 | Weblog
三連休が終わりました。午後5時30分。最後のシャトルバスが八島ビジターセンターの前をゆっくりと動き出します。規制が解除された駐車場には数台の乗用車だけが残り、数えられるほどのわずかな人だけが遅い散策を楽しんでいます。

こういうとき、八島湿原という場所がある意味ではとても特殊な場所なのだという実感がわいてきます。昼間、シャトルバスの利用者は往復で1,000人に上り、木道は散策する人々であふれ、その活気は衰えることなく続いていました。しかし、夕方の6時には一変、湿原ですれ違う人々はごくわずかとなって、周辺の木々だけが風に揺られて音を発しています。

霧ケ峰において、人々の流れは極端に集中的で通過的です。

東京から4時間もあれば八島湿原に到着します。4時間といえば生活の中ではあっという間に経過してしまう時間です。そして、多くの人々にとって湿原に滞在する時間は決して長いものではないようです。昼間は同じ八島湿原にいても、私たちが夕闇のなかにシカの鳴き声を聞く頃、日帰りの人々は都会の電車に揺られて眠っているのかもしれません。

これは少しもったいないことです。余裕のある方は霧ケ峰にお泊りすることをお奨めします。夜空を見上げたり、木陰でのんびりと過ごしたり・・・。普段より時間をかけて何かを味わうこと。それは、思いのほか私たちに豊かな恵みをもたらしてくれることでしょう。

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ユキノシタ科の植物には雨が似合う

2007年07月14日 | Weblog
今湿原に咲いているバイカウツギはその透き通るような真っ白な花がとてもきれいです。

この花を見ていると、こんなにも雨の似合う花があるものかと思います。降りしきる雨を受けた花は驚くほど真っ白で、雨特有の静寂がのり移ったかのような落ち着きを兼ねそなえています。対生で行儀のいい葉っぱもまたしかり。思えば、ウツギの仲間はユキノシタ科・・・。ユキノシタ科といえば梅雨の代名詞―紫陽花・・・。どうやらこの仲間は雨との愛称がよいようです。

ユキノシタ科には木本と草本があり、その代表格「ユキノシタ」は花びらの上3枚が小さく下の2枚が長い、左右相称でユニークな花をつけます。やはり真っ白で繊細、これも雨が似合いそうです。是非図鑑で見てみてください。うなずいて頂けたら幸いです。

霧が峰ではもう少しすると紫陽花のような装飾花を持つノリウツギが咲き出しますよ。

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シャトルバスが運行されます

2007年07月13日 | Weblog
明日からの3連休(7月14,15,16日)霧ケ峰ではシャトルバスが運行されます。

この3日間は、八島ヶ原駐車場はバス・タクシー専用駐車場となり一般車両の駐車が出来ませんのでご注意下さい。八島においでの際は、旧和田峠スキー場駐車場に駐車の上、八島湿原行きのシャトルバスをご利用ください。

尚、強清水、霧ケ峰インターチェンジ、車山肩、車山高原等、他の駐車場は通常通り利用できます。

この機会に霧ケ峰をゆっくり歩いて見てはいかがですか。天気の方は不安定ですので雨具を忘れずにお願い致します。


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