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<訃報> 映画監督 大島渚

2013-01-15 23:30:24 | アメリカの夜(映画日記)
「映画監督」という言葉の似あう人でしたね。長い闘病生活のあとの訃報。ご冥福をお祈りいたします。

わたしの大島渚観、大島作品への視点は、むかし書いた下記の記事に書き尽くしているので、今回はそれ以外の感想だけ。

・映画監督・大島渚を語ろう!(過去に書いた記事)

まず、松竹ヌーヴェルヴァーグも、そろそろ自由に論じ直していい時期に来てるんじゃないでしょうか?

大島渚、吉田喜重、篠田正浩、田村猛、石堂淑郎、高橋治…。

作品の高尚さ(?)で吉田喜重を評価する人は多いだろうし、わたしも最初は華麗な映像美の吉田喜重派(!)だったんですが、今となっては断然大島渚です!

結局インテリ映画の枠に納まっていった吉田喜重に比べて、いつでもアウトサイダーで扇動者でだった大島渚。作品だって、名作を志向したというより、いつでも時代と寝た映画を作ろうとしていたって、今だからこそ思えます。そして、大人になってつくづく思うのは、そういう過激な立場を大人になってからも貫き通すのがいかに大変かということ。小さい「芸術」の枠に納まってる方がやっぱり安全なんですよ。でも、安全な場所に安住しなかったってところが、個々の作品以上にこの人の存在の重要性だったんだと思います。

それと、朝生とかワイドショーのコメンテイターをやっていた時の、自分の体験や実感に落としてから発言するスタイルって、今にして思えば、良い意味で典型的にサルトルの実存主義を通過したインテリって感じではありましたね~。

そんなわけで、追悼特集では、なかなか観ることのできない、彼の批評性のよく発揮された「忘れられた皇軍」などのドキュメンタリーを是非上映してもらいたいところです。

そして、大島作品をイデオロギー的な視点だけで語るんじゃくて、技術的な視点から語ることも重要。その点、名編集者の浦岡敬一さんの本『映画編集とは何か』や脚本家佐々木守さんの本なんかも、今後大島渚を論じる上で重要な文献でしょう。

また、忘れてならないのは、昨年亡くなったギリシアの映画監督テオ・アンゲロプロスが大島渚のファンで、「血を分けた兄弟」とまで語っていたということ。

しかし、アンゲロプロスの『旅芸人の記録』といい、大島渚の『少年』といい、素晴らしい雪のシーンを撮った監督が寒い時期に旅立ってしまうなあ~とは、わたしの思い込みのなせる業でしょうか?

そして、右傾化しつつある日本でこそ、まだまだ発言し続けてほしい人でしたネ。右に石原慎太郎、左に大島渚とでもいうのかな?昨年の吉本隆明の死と並んで、個人的にも感慨深い訃報でした。

ま、今こそ、この人みたいな暴れるリベラルが出て来てほしいと切に願いますね~。

というわけで、取り留めありませんでしたが…。

PS①:「大島渚」というバンドを組んでいたみうらじゅんさんのコメントが聞きたいな~。
PS②:急に思い出したけど、深作欣二監督の『仁義の墓場』にチョイ役出演している大島渚や、自作『帰ってきたヨッパライ』にチラッと登場する大島渚がわたしはわりと好き。
PS③:『三島由紀夫映画論集成』に収録されている三島VS大島の対談「ファシストか革命か」は必読。三島の黒澤明評なんていうのも出てくるしね!
PS④:立川談志と大島渚がなぜ朝鮮半島に興味あったのかって、けっこう謎だと思うんですよね。60年代後期の大島作品では頻出するテーマでしょ。タブーだから好きということなのかしら?

「戦場のメリークリスマス」の大島渚監督が死去(読売新聞) - goo ニュース

(過去の関連記事)
・<訃報> 映画監督 テオ・アンゲロプロス
・<訃報> 脚本家 石堂淑朗
・『嘔吐』 J・P・サルトル 著 (鈴木道彦新訳)
・『シアトリカル』 大島新 監督
・『無冠それでいい―天才脚本家佐々木守の世界』 片桐 真佐紀 著
・<訃報> 俳優 佐藤慶

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⇒アンゲロプロスが大島渚について語っている本

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