切られお富!

歌舞伎から時事ネタまで、世知辛い世の中に毒を撒き散らす!

『小さな兵隊』 ジャン・リュック・ゴダール監督

2011-02-06 23:59:59 | アメリカの夜(映画日記)
最新作『ソシアリスム』も話題のゴダールだけど、『勝手にしやがれ』に続く長編第2作のこの作品を久々に見直して、大いに感銘を受けました。といっても、むかし観たときはさっぱり良さがわからなかったんですけどね~。というわけで、簡単に感想っ。

そいうえば、『ソシアリスム』の感想も書洩らしていましたが、いかにもゴダールらしい新作で、あれはゴダール・ファンにしかすすめられない映画だったなあ~。

で、『小さな兵隊』!

この映画、政治問題を扱った野心作で、3年近く上映禁止になったといういわくつきなんですが、「上映禁止」がなければヒットしたかというと微妙な感じ。

とはいえ、ゴダール作品にアンナ・カリーナが初登場した記念すべき映画だというのと、技術的な野心作だなあ~というのが、今回わたしが見直したポイント。

「やりたくないことをやらされる男」、「脅迫される男」の二重性(本人とその背後)を素早いカメラのパンで全編表現しているんですよね。このあたり、わたしは相当野心的だと思いました。しかも、わざとだと思うんだけど、素人っぽいパンの仕方なんですよ。

ゴダールはのちに『恋人のいる時間』で、フェードアウトのリズムを全編にわたって貫くというスタイルも試しているけど、とにかく、このころのゴダールは冴えている!

そして、アンナ・カリーナ初登場シーンには、ゴダール本人が登場しているんですね!むかし観たときは全然気づかなかった!この頃からぞっこんだったことがよく判ります!

そして、カリーナ登場シーンでは、「バッハは朝8時の音楽、モーツアルトは夜八時の音楽、ベートーヴェンは真夜中の音楽で、昼下がりに聞くべきはハイドンだ」ってくだりのカリーナの躍動感!ここではハイドンの交響曲が流れて、ゴダールのクラシック好きがよくわかる感じ。

で、『気狂いピエロ』のアパートからの逃走シーンもそうだけど、ゴダールの室内の手持ちカメラ長回しカットは相当考えて撮ってますよ。ゴダールの映画というと、思い付きで撮影してると勘違いしている人が多いんだけど、テクニカルな狙いがはっきりしていないと、ああいう風には映りません!最近、見直していると、ゴダールのテクニカルなセンスに唸らされることが多い!(特に初期から中期!)

というわけで、ゴダール版『上海から来た女』(オーソン・ウェルズ監督)みたいな、そんな映画です!

興味のある方だけ、観てください!

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ゴダール、わがアンナ・カリーナ時代
山田 宏一
ワイズ出版
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1 コメント

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追伸 (切られお富)
2011-02-15 02:03:13
カリーナが飛び回るシーンで流れるハイドンの曲は「驚愕」でしたね!

あのシーン生き生きしててよかったな~。

カルロス・クライバーの「驚愕」がわたしは好きです!
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