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切られお富!

歌舞伎から時事ネタまで、世知辛い世の中に毒を撒き散らす!

「密着 市川染五郎 KABUKI in Las Vegas」(NHK)を観て。

2015-09-12 23:59:59 | かぶき讃(トピックス)
歌舞伎美人のニュースでしか情報を持っていなかったので、興味深い番組でした。染五郎の奮闘には脱帽するものの、今後の歌舞伎演出にとって、こういう方向性はどうなのか、考えさせられたりはしますよね。ということで、簡単な感想のみ。

「鯉つかみ」という演目に、メディアでの露出でおなじみ猪子寿之氏のチームラボが加わった今回の公演。わたしは、ネットの動画とこの番組でしか、現場の様子を知らないので、限定的な感想ですが、役者より映像処理と噴水が目立ってしまって、役者が気の毒という印象です。

というのも、映像で見る限り、観客の居場所が舞台から遠すぎる。歌舞伎の良さは、生身の人間が演じるところにあるので、江戸時代の芝居小屋が再現された四国の「こんぴら歌舞伎」とは対極にあるコンセプトだと思いました。

で、役者が距離的に遠く、小さくなってしまっている分、プロジェクションマッピングの鯉の映像だったり、噴水の演出が目立ってしまっているという印象はぬぐえなかったですね。もちろん、鯉の映像との格闘シーンや鯉を投げ飛ばすくだりは、それなりに面白くはあったんですが・・・。

で、唐突に結論から先にいってしまうと、今後の歌舞伎の演出に重要なのは、やはり脚本とかテーマだと改めて思いました。地球を投げ飛ばすというアイデア一本で大コケになった六本木歌舞伎をみるまでもなく、内容を生かすテクノロジーじゃないと、結局、芝居がテクノロジーに負けてしまう。山本周五郎の歌舞伎批判も、ま、一理あるんですよ(歌舞伎は芝居じゃなくてショー化しているという趣旨)。

ただ、ちょっと興味深いと思ったのは、近年、舞台演出に多用されるようになった、舞台上にスクリーンを設置するプロジェクター演出の担い手が、音楽PVや映画の演出家でなく、チームラボみたいなクリエイター集団に取って代わられるのかな~、ということ。もっとも、職業ジャンルの問題というより、よりセンスのある個人や集団が優位に立つだけの話かもしれませんけど。ただ、一方で予算面の問題は浮上するかもしれません。プロジェクションマッピングが、案外恵まれない舞台演出の予算に見合わなければ、広がらない可能性はある。ま、今後の動向に注目というところですが・・・。

なお、以前、ドミンゴが指揮したオペラ「アイーダ」の東京国際フォーラム(2010)での公演がCGを使った演出で、初期のRPG並みのしょぼい映像だったのが記憶に残ります。で、さすがにあれからすると今回の映像はかなり凄いとは思いました。でも、「アイーダ」みたいな壮大なオペラは、大型美術セットでみたいというのが、多くのオペラファンの心情なんじゃないかというのはありますけどね・・・。

ということで、簡単ですが。

PS:米吉君は個人的に好きです!
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