万葉集に、山部赤人が「真間の手古奈伝説」に感銘を受けて詠んだ歌がある。
----- 手古奈は美しい娘だったので、自分を求めて何人もの人が争うのを見て、罪の深さを感じ、自ら命を絶ったという伝説 ----
手児奈の住んでいたところが「葛飾の真間」、で現在の千葉県市川市になっている。
そのため万葉集のゆかりの地として、市川市には「市川万葉植物園」がある。
それほど広い植物園ではないが、植えられている草花や樹木は、全て万葉集に登場しているもの。
そして、それらにちなんだ万葉集の和歌が添えられているので、両方を楽しむことができる場所となっている。
5月8日の時点で見られた花をいくつか。
[ヒメシャガ(姫射干)]
万葉集の中で「はなかつみ」として1首だけ詠まれている。
”をみなへし佐紀沢(さきさわ)に生ふる花勝見(はなかつみ)かつても知らぬ恋もするかも” (中臣郎女・なかとみのいらつめ)
花勝見がヒメシャガのこと。
万葉集ではマコモ、ノハナショウブ、アシノハナ、アヤメ、カタバミ、デンジソウなどの諸説あり。
[ノイバラ(野茨)]
”道の辺の茨(うまら:宇万良)の末(うれ)に延(は)ほ豆のからまる君をはがれか行かむ”(丈 部鳥・はせつかべのとり)
宇万良は野薔薇・野茨の古名。
[ヒトリシズカ(一人静)]
[フタリシズカ(二人静)]
”つぎねふ山背道(やましろじ)を 人夫(ひとづま)の馬より行(ゆ)くに 己夫(おのづま)し徒歩(かち)より行けば 見るごとに 音(ね)のみし泣かゆ そこ思ふに 心し痛し”---長歌(作者未詳)
つぎねふは山城にかかる枕詞で、つぎねがヒトリシズカまたはフタリシズカの古名。
[チガヤ(茅萱)]
チガヤは歌の中では、浅茅(あさじ)・浅茅原(あさじはら/あさつばら)と詠まれ、多くの歌が残されているが、説明文にあった歌。
”秋されば置く白露に我が門の浅茅が末葉色づきにけり”(作者不詳)
子供のころはこの花?をツバナと呼んでいたのを覚えている。
和歌は添えられていなかったが、そのほかに咲いていた花。
[イチハツ(一初)]
[ホタルカズラ(蛍葛)]
[ハマエンドウ(浜豌豆)]
[ニッコウキスゲ(日光日光黄菅)]
[ヘラオモダカ]
季節が変わればまた違った花が見られるので、次の季節にまた行ってみたいと思っている。
中部地方在です。
写真を見た瞬間「ツバナ!」と思いました。
柔らかい穂を食べませんでしたか?
『雨月物語』<浅茅が宿>の浅茅はこれでしたか。
脳内の「宿」のイメージを修正しておきます。
やっぱり中部地方でもツバナと呼んでいたのですか。
きっとチガヤよりツバナの方が一般的だったんですね。
でも、穂は食べませんでしたよ。
食べられるとは知りませんでした。
茅花を抜いて、根をなめると甘くて、こだもたちが喜んでいる、とは、壺井栄だったでしょうか。
チガヤはサトウキビの親戚らしいですね。
だからその根と若い穂には甘い成分が含まれているらしいです。
昔はお菓子代わりに舐めていたんでしょうね。