第四部 Generalist in 古都編

Generalist大学教員.湘南、城東、マヒドン、出雲、Harvard、Michiganを経て現在古都で奮闘中

スウェーデン物語第一章 医療背景・医学部・プライマリケア

2018-04-24 20:41:11 | スウェーデンのジェネラリスト

みなさまこんにちわ

もう、いい加減に毎朝のハムと卵とチーズだけの食事に飽きてきました。多分一生分食べました。。もう無理です。ウォシュレットがないので、おケツもとても痛いです。

さて今回、ファイザーの国際共同研究費と副院長の超絶特別なご好意で僕はこのようなチャンスをいただいております。自身の訓戒として応援くださる方々の期待には倍返し!で応える努力をする(結果は知らない)ので、今後の自施設や島根県内、ひいては日本全体のために良いアイデアはないか毎日朝から夜まで食らいついてディスカッションをしております。深夜にしかまとまった時間が取れないために、もっとも重要なエッセンスだけでも忘れないうちに記載していこうと思います。他のことは時間のあるときに論文にするためにここに書いて行きます。

まず、スウェーデンの世界的に高い幸福度は有名ですが、その根源はおそらく高い税金にあります。合言葉は「High Tax, High Happyness」!?とまでは言いませんが、お話を聞いたどの医師(おそらく高所得者)の誰もがそれを不満気に言わなかったことに強烈に驚いています。この国の一人当たりのGDPは日本より高くとても裕福で、物価も高いですが、その分老後までの十分な社会福祉があるためかのんびりと質素に毎日を楽しんでいる印象です。病気や孤独や老化や職を失うことへの不安が少ないのかもしれません。

 

本題、では今日は、スウェーデンの医療背景と医学部について。

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・スウェーデンの面積は日本よりやや広い程度であるが、人口は少なく総人口は約950万人であり、人口密度は22人/km2である。これは日本の人口の12分の1で人口密度は(335人/km2)の約19分の1とまばらである。それでも、広い国土の中で都市に人口が集中していることは日本と代わりない。スウェーデンの医学部は合計7大学あり、医学部を含むすべて国内学生の学費は無料である。税金から補填されているために、医学部卒業後にPhDコースへ進む事ができるのは限られた情熱を持った人のみに絞られことになる。医学部への入学は外国人学生の受け入れも行なっているが、非常に難しく、また学費は有料である。
・スウェーデンは世界一社会保障制度が整っている国と呼称されており、その税金制度や高齢者福祉などの社会政策は見本とされることも多い。医療保険は日本と同様に皆保険制度による全医療行為の保険でのカバーと、後述するPHCや病院の垣根なくフリーアクセスが担保されている。患者の支払いは年間約1500SKr(約2万円弱)を超えた場合は全額政府が負担する為に患者の直接的な支払いは高額の医療を受けても一律その値段を超えることはない。わが国とほぼ同様の少子高齢化社会であることが大きな問題となっており、広大な国土に高齢化現象が重なる医療過疎化の問題は本邦とも同様である。スウェーデンの個人の選択を重んじる文化的背景から医師の勤務地の縛りなどは国内出身者には一切なく、日本でいう地域枠や自治医大のような制度が無い。後述するプライマリヘルスケアセンターが臨床・教育・研究現場として似合う役割が極めて大きい。一方で、外国人の医学部生などは高額の学費を払う必要があるためにそれに対して奨学金を担保する代わりに地域医療へ派遣するなどのことが少ないがあるとの事である。
・スウェーデンの7つ大学が医学部を持っており全てが国立である。国内で医学部医学科に進む学生は合計約2000人弱であり、日本と同様に高校の成績のみで評価され進学する人数が約1/3、残りは高校時の内定に加えて全国統一試験のようなものを受けて総合的に評価される。医学部のカリキュラムは5.5年間のコースを終了することで卒業認定を受け医師免許を取得することができる。医学部の教育内容は本邦でよく見られるような各講座持ち周りの縦割りの教育形態ではなく、1年生では面接技法、2年生では聴診の方法、3年生では臨床推論、などといったように入学当初から実践的な臨床医学を学ぶ。また最高学年になっても段階的に病態生理を中心とした基礎医学を学ぶように設定されている。前述したように学費は無料である為に医学を学ぶことが自分の興味とは異なる、向いていないと判断した場合には、全体の約10-15%程度の医学生が自主退学や将来の方向転換を行っている。医学部を卒業し医師免許を取得すると、その後はATと呼ばれる18ヶ月のインターン期間を経て日本でいう初期臨床研修が終了となる。その後、全体の約20%もの後期研修医がスウェーデンの医療の現場でもっとも重要とされるプライマリケア医の専修コース(ST:Special Training)を選択する。
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今日はこの辺りで。次回は、スウエーデンがどのようにジェネラリストを養成して、マインドを育てて、日本の人口比10倍とされる臨床研究の論文数を叩き出しているのか?プライマリケア医がどのように臨床研究を行っているのか書いていきます。
 
 
プライマリケア領域で大変恵まれた環境で、多国籍であり、すでに仲間のように暖かく迎えてもらっています。