第四部 Generalist in 古都編

Generalist大学教員.湘南、城東、マヒドン、出雲、Harvard、Michiganを経て現在古都で奮闘中

スウェーデン物語最終章 プライマリケア医臨床研究家の育成システム

2018-04-30 13:12:39 | スウェーデンのジェネラリスト
みなさま こんにちわ。
ついに日本に帰ります。日本の医療システムは米国と比較した場合の経済的コストパフォーマンスの高さで非常に良い見本として出されることが多いです。興味がある方は、2016年1月に発刊されたInternational Profiles of Health Care Systemsで検索してみください。これがきっとこの地球でもっとも簡単にまとまっている文献です。
 
さてということで、スウェーデン物語最終章は下記に真面目に作成しておきます。ちなみにスウェーデンは人口は日本の12分の1もいない小さな国ですが、ノーベル賞数は2016年で32個らしいですよ。知らなかったです。なんとも異なる文化面での国力。
 
【Primary Health care 領域の臨床研究について】
プライマリケア医を養成する段階から、臨床研究の基礎知識と経験を行う事が必須になっている。またこの20年で臨床現場の最前線であるプラリマリヘルスケアセンターの患者のデータを用いた臨床研究が盛んになっている。大きく推進した要素を筆者なりに分析してみた、1) PhD過程で学びながらPHC(臨床現場)で働くことができるシステムを構築した、2)Distant learningを利用した学習の配備み尽力した、3)実験基礎医学ではなく実臨床現場におけるクリニカルクエスチョンを研究テーマにしていること、4)国をあげてジェネラリストの臨床研究を推進してきたこと、以上4つにあると確信する。
 
1)プライマリケア医のPhDコースに関しては、前述した通り専修医プログラムの中に10週間のScientific methodologyが必修となっており、そこで臨床医として科学的考察の必要性を実感し、全体の10%がPhDコースに進学しているという(Lund大学のPhD修了条件は4本の国際ジャーナルのAcceptが必要となっている)。我が国と比較すると臨床でのトレーニングをしながら臨床研究も並行して学ぶと言うことが金銭的にも生活スタイル的にも可能になっていることは極めて大きい。また4)に関しては、スウェーデンでは国の機関であるSwedish Research Council’s (SRC’s) が中心となってプラリマリケア領域の大学の臨床研究能力の向上、拡大学間のコラボレーションを目的にNational Reserach School in General Medicineと呼ばれる機構を作成し運営を2009年より開始した。これは医師だけでなくコメディカルスタッフにも門徒を広げた約3年間の臨床研究トレーニングコースである。Webinerと言うインターネットの双方向性の授業とワークショップの参加、国際的な研究力の強化のために3ヶ月程度の海外臨床研究留学(米国、オーストラリア、オランダetc)などを行い世界で通用する臨床研究を地域のPHCから発表すると言うものである。驚くべきことに、7大学全ての全医学部が参加してコラボレーションしており国家としてのスウェーデンの臨床研究の向上のために力を合わせている。このコースは必須ではないものの、モチベーションの高いPhDコースの医師の多くが参加している。これまで8年間で87人の卒業生を出すことができており、7割以上が医師でまた7割以上が女性である。この試みが開始されるまでは、大学間での共同研究などはあまり見られなかったとのことであるが、2010年以降は国レベルでの臨床研究が実施されやすくなるという大きなメリットがあった。
 
 
(なんと全ての大学が垣根を超えて国の助成で臨床研究家の育成を地域医療をカバーしながら進めています。これは、私の中で今後の日本の地方で働く臨床医のロールモデルになると思います)
 
僕は日本に住みたいし・日本で働きたく、日本の良さが大好きであります。
 
しかし、たまに俯瞰的に日本という国家やその仕組み、文化的背景を考えながら他国と比較して見ると、もう今の時代小さい医局間の派閥や、病院間の壁や出身大学の派閥や、科の住み分けだったりとするセクショナリズムとグルーピングは、正直患者さんや国全体の為にはあまり良い影響を与えていないような気がしてなりません。これは最近流行の総合診療医の定義などの議論でも時折感じることがあります。僕はあまり頭が良くないのでうまく言語化できないのですが、海外の作られた概念や何かをそのまま日本に持ってきて当てはめること自体がそもそも軋轢と無理を生じさせることもあると感じております。国別の数値上は似たり寄ったりで一見同じように見えた他国の医療システムが、実際に行ってみると全く職員の雰囲気も考え方も異なっていることを体感できたことが今回の最大の収穫です。その根本的な原因はその国の医療システムが作られ伝承されきてた歴史、文化、宗教感が異なるということを体の毛穴から吸収し感じ取る作業でもありました。
このような貴重な機会を頂いた、廣瀬副院長と国際共同研究費を頂いたファイザーさん、またボスの鬼形先生に本当に感謝申し挙げます。必ず、これを実らせます。