みなさま、こんにちわ。下記内容でお話します。名古屋は味噌カツ、ひつまぶしを食べたいと思います!せっかく抄録を書いたのでこちらに。
Diagnostic errorは決して稀な不幸な出来事ではなく、医療者が意識すること無しに認識し難い日常的に遭遇するありふれた現象である。Diagnostic errorとそれに付随する有害性が近年欧米を中心に少しずつ明らかにされて来ており、米国の研究では救急外来等のクリティカルな状況に限れば、約10人に1人の割合でDiagnostic errorが起こっている事が示唆され、年間4-8万人に及ぶ関連事象死、ならびに毎年1000億ドル(12兆円)以上が無駄になっていると推測されている。
臨床現場における思考過程、環境因子等が複雑に交絡するDiagnostic errorの疫学的研究は難しく、世界的にもメインとして用いることができたのは医療訴訟のデータであった。それ以外には剖検データ、医師からの報告、患者からの報告、インシデントレポート、緊急再入院時の統計などがサロゲートデータとして使用可能である。必ずしも判例のデータが医療現場の情報を正確に反映しているとは言えないが、これまで医療者側と患者側だけが知るブラックボックスであった重要なDiagnostic errorについて多くの情報が得られるために有用な情報である。
米国における医療訴訟の研究からは、米国内の全医療訴訟のうち28.6%がDiagnostic errorが原因となっており、全医療訴訟費用のうち35.2%がDiagnostic errorに費やされ、また全医療訴訟で最多の死亡理由(40.9%)であり、手術等を含むその他の理由(23.9%)よりもその有害性が高いことがわかっている。本邦の同様の医療訴訟を用いたDiagnostic errorの研究はあまりされておらず、2010年にTokuda等が医療訴訟274判例から大部分のDiagnostic errorは認知バイアスによって起こっていることを国際誌に報告した以外に詳細な調査は無い。そこで、我々は日本最大の判例データベースであるWestlaw Japan(25万件収載)の協力を得て、2017年時点で判例データバンクに登録されている昭和初期まで遡った全医療訴訟3200判例のデータの抽出と解析を行ったので、それらの結果から我々は何を学び、そしていかにDiagnostic errorを乗り越えていくべきかを提言したい。
引用
Saber Teharani AS, et al. BMJ Qual Saf 2013; 22:672-680
Tokuda Y, et al. J Hosp Med. 2011 Mar;6(3):109-14.
Gupta A, et al. BMJ Qual Saf 2018;27:53-60
Rubin JB, Bishop TF. BMJ Open 2013; 3:e002985.