第四部 Generalist in 古都編

Generalist大学教員.湘南、城東、マヒドン、出雲、Harvard、Michiganを経て現在古都で奮闘中

医者こそ、もっと寝せなさい。【人の命を預かる責任重大な】パイロットはたっぷり寝てます。

2019-01-03 21:21:42 | 診断エラー学

こんにちわ

さすらいのホワイトプレーヤー です(嘘)。

年末年始・・基本はこれまで他の病院・医師が休むからこそのジェネラリストの出番のごとく働き詰めでやってまいりました。

インフルエンザ診療、感染症が好きな先生ほど、本当に辟易しているのではないでしょうか?

自分は寝ていないとあまりにも不機嫌になり、判断に影響が出やすいことを、救急を断らずに受け続ける戦国無双の修行期間に48時間連続ERなどをやっていて、本当に苦い思いばかりをしました。驕りではなく、8時間勤務だったら絶対にしないような判断ミスもいっぱいしてきたと思います。

当時のヤサ男の考え

頑張って勤務して欲しいという需要に精一杯答えることがカッコいい≠患者さんにとって良いこと

であることを知りました。当時はさらに正義感に燃えていたのですね。

若さゆえの過ちというやつですね。 

さて、今回は診断エラーの観点からの小話を、、

パイロットの知り合いはそれはそれは厳しい厳しい睡眠と健康管理が義務付けられているそうです。

彼曰く、それはなんでも【人の命を預かる極めて責任の重い仕事】であるからだそうで、当たり前の義務であり権利であると。

確かに飛行機に乗ることが多い自分としてもいつもあの強風と雪の出雲縁結び空港に着陸させてくださり大変感謝しております!!

そこで、気づきました。

 

【人の命を預かる極めて責任の重い仕事】って・・・

僕らじゃん!! 診断の付いていないド緊急の業務や処置をすることが多い、マジ僕らじゃん。直結しまくってるじゃん!

そこで思う訳です。寝てないことと診断エラーはどうだろうと。

2018年にLancetからオモローな【際どい】論文が出ました。1)

 

34時間以上の連続勤務をしている医師は休みをちゃんととっている医師より460%も診断エラーが多い!!

 

また前日の睡眠時間が6時間に満たない外科医はよく休養をとった外科医の170%もSurgical damageを与える可能性が高いそうです。

 

正気ですか?まじですか!?ここまで多いのですか!!

でも、自分のこれまでの反省や経験とすごく一致する・・・確かにそうかもしれません。

 

2005年当時はまだ医師が患者に与える有害性のことなどの研究ができていなかった時(文化があまりなかった時)に、NEJMから当直と研修医の交通事故の研究が出ていました。患者さんへの有害性は研究できないけど、医師の車の交通事故は研究できますもんね。また医師だって車の運転をするパイロットになる時もありますので、パイロットさんも36時間勤務とか連続勤務したらどうなるかという論文は探せませんでした(飛行機と車一緒にするなと怒られそう)。

これから見てもわかるようにExtended Work shiftの医師は車の衝突事故がOdds 比2.3も高く、ヒヤリハットの事故直前がOdds 比5.9も高くなります。

比較的複雑な思考過程を要しない車の運転ですら、明らかに当直明けはデンジャーな訳でありまして、これが認知バイアスや感情や疲労がもろに影響を受ける臨床と診断であればなおさらなかと感じます。そう、睡眠と診断エラーは必ず直結してます。経験的に、感覚的に、数値的に。

パイロットさんの飲酒や睡眠も大事ですが、本来寝ていない疲弊しまくっている臨床医をたっぷり寝かせる事がより命に直結していると思います。

働き方改革が医療者にとって、国民の皆様にとってどのような展開を見せるか。新しい時代が楽しみでなりません!!

 

こんな内容は、Dr's マガジンの「しまねからこんにちわ」の題材に持ってつけかなと思っています。乞うご期待。

 

1) A sleep prescription for medicine, Lancet. June 8, 2018 http://dx.doi.org/10.1016/ S0140-6736(18)31316-3

2) Extended work shifts and the risk of motor vehicle crashes among interns. N Engl J Med 2005; 352: 125–34


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