以前、優れた医師を育てるためにはどのような教育が必要かという問いに遭遇しました。
目指すべき医療の在り方や、医療システム、さらには医療の需要が異なれば、「良い臨床教育」の定義も変わるでしょう。単に「良い臨床教育」と称するものが、自己満足に過ぎないのではないかとも考えました。
しかし一方で、ぼく自身は尊敬する恩師たちに導かれ、非常に恵まれた教育を受けてきたことに深く感謝しています。セレンディピティによって出会った多くのロールモデルやメンターの存在が、自分の成長に大きく寄与してきたのは間違いありません。
その問いに対する一つの答えが、本書の内容です。
本書では、ローレンス・ティアニー先生、グープ・ダリワル先生、ミシガン大学のセーラ・ハートリー先生をはじめ、米国で指導医向けのアンケート調査によって選ばれた高名な18名の指導医の教育回診をシャドーイングし、質的データを収集・分析した研究成果をまとめています。さらに、半構造化インタビューによって得られたデータを基に、教育における重要な示唆(教育パール)を記しています。
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病棟教育学論 | Nathan Houchens, Molly Harrod, Sanjay Saint, 和足 孝之 |本 | 通販 | Amazon
本書では、以下のような問いに対する実践的な示唆を提供しています。
- 働き方改革が進む中で、指導医はどのように病棟教育を行うべきか?
- デジタル時代、ポストコロナ時代に適した教育のあり方とは?
- 多忙な指導医が限られた時間の中で効果的に指導する方法とは?
- 文化、宗教、社会的背景、地域、言語の違いによって教育がどのように変わりうるか?
これらのテーマを質的研究の視点から整理し、病棟教育の本質について考察しています。
師匠Sanjay Saint 先生は、「日本でこそ、この書籍が役立つように、君自身の言葉で、日本の文化に合うように伝えなさい」
と助言してくださいました。それから忙しく随分と時間が経ってしまいましたが、今こそ多くの指導医に本書を手に取っていただきたいと思います。本書が国境を越え、日本の病棟教育に貢献することを願っています。それ以上に3年目から突然担当することも多い外来教育もやはり重要で次のターゲットかもしれません。
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