憂生’s/白蛇

あれやこれやと・・・

邪宗の双神・46   白蛇抄第6話

2022-12-22 11:12:08 | 邪宗の双神   白蛇抄第6話
波陀羅が帰ってきたのでいなづちは扉を開いた。中に入ってきた波陀羅に「どうした?誰が邪魔をしに来た?あやつら何者なのじゃ?」いなづちが聞くので、波陀羅波は不思議な顔をした。「お判りになっておったのでないのですか?」「何ぞ誰かがおったのは知っておる。が、我等は同門の者同士の間の事しか読めぬ」双神が根を張ったもの同士の事だけが判ると聞くと、波陀羅は己らが地中深き穴の中の蟻に感じられた。同じ蟻の巣の中にい . . . 本文を読む

邪宗の双神・47   白蛇抄第6話

2022-12-22 11:11:55 | 邪宗の双神   白蛇抄第6話
「なみづち・・・・どうする気でいる?」「政勝が事か?」「聴けば聴くほど・・・・惜しい」「だろうの・・・。考えがある」「考え?」いなづちがにたりと笑った。「波陀羅が因縁というたじゃろう?わしはそれをずううと考えておった。・・・・・。比佐乃は一樹を殺す。そう思わぬか?」なみづちは考え込んでいたが、考えに辿り付いたのであろう。「確かに。・・・・だが、それが?」「死体が出来る。同門の死体じゃ。乗り移れる。 . . . 本文を読む

邪宗の双神・48   白蛇抄第6話

2022-12-22 11:11:42 | 邪宗の双神   白蛇抄第6話
一樹が比佐乃の元にさえ行かねば、一樹が比佐乃に殺される事は有得ない。だが、それを食い止める事が自分との情交なのである。「判りました。波陀羅が頼みをきいてくれますな?比佐乃様には、出きるなら、もうお会いする事の無いように」「ああ。波陀羅。切ない事を言う」一樹とて比佐乃には逢いたいのである。だが子を宿した比佐乃を抱くには一樹とて遠慮がある。逢えば愛欲の果て無体な事をしてしまいそうな自分の満たされぬ欲求 . . . 本文を読む

邪宗の双神・49   白蛇抄第6話

2022-12-22 11:11:27 | 邪宗の双神   白蛇抄第6話
波陀羅は森羅山を出た所で見かけた女の姿を借りると澄明の屋敷の玄関先に立った。中から正眼が最初に出て来ると波陀羅に言われるまま、澄明を呼んでくれた。正眼から鬼の映し身の女子じゃが、伽羅ではないと聞かされた澄明は、さては波陀羅であるなと玄関先に出て行った。話したい事があるという女を白銅のいる鏑木の部屋に招じ入れた。「私の連れ合いになる人です。たぶん、色々と貴方の話しに良い知恵を浮かばせてくれると思いま . . . 本文を読む

邪宗の双神・50   白蛇抄第6話

2022-12-22 11:11:14 | 邪宗の双神   白蛇抄第6話
澄明は、波陀羅が去ると肩を落として、ため息をついた。「どうした?」白銅が頃合の良い頃に波陀羅に話し置かねばならないきっかけを与えてくれていたのは澄明にも判っていた。「いえ。一番聞かれたくない事を波陀羅が聞き忘れていてくれていた事に」良かったというべきなのか、その覚悟もつけて貰ったほうが良かったのか、澄明はどちらともいえない成り行きにまかせた。が、後ろめたい思いがなきにしもあらずであった。「言えはす . . . 本文を読む

邪宗の双神・51   白蛇抄第6話

2022-12-22 11:11:00 | 邪宗の双神   白蛇抄第6話
玄関先に現われた一樹の声で比佐乃があっと小さな声を上げると一樹にむしゃぶりついて行った。「元気でおったか?身体はつろうないか?よう、ここまできてくれたの」比佐乃の顔を見る為に一樹は比佐乃の肩に手をおきほんの少し比佐乃の身体をおしやった。身体を少し離されて、比佐乃は一樹を真直ぐに見上げた。「ああ。相変わらず・・綺麗じゃ・・ますます、母さまに似て来た」泪が潤んで来る目元さえ亡き母親を思い起こさせる比佐 . . . 本文を読む

邪宗の双神・52   白蛇抄第6話

2022-12-22 11:10:46 | 邪宗の双神   白蛇抄第6話
だが、其れも束の間。波陀羅の浮き立たせた因縁からの解脱法が、何も役に立たないという事をしらされる時がくる。夕餉も終え、片付けを済まし、波陀羅は古手屋を回り少しずつ集めまわってきた木綿の着物を解くと生まれくる子の為にしめしを縫った。洗いざらし草臥れたぐらいの古着が、赤子の肌を柔らかく包むことであろう。そろそろ腹帯を蒔いてやらねばならぬ頃でもある。戌の日は何時になるのであろうか。取りとめなくそんな物事 . . . 本文を読む

邪宗の双神・53   白蛇抄第6話

2022-12-22 11:10:29 | 邪宗の双神   白蛇抄第6話
その様を呆然と見詰めていた比佐乃はやがて一樹の傍に静かに歩み寄った。そして、比佐乃は持っていた脇差しを一樹の後ろ首から突き立てていた。邪鬼丸の命を奪った刀は、邪鬼丸の存念を晴らすが如く、時を経て、その時波陀羅の腹の中にいた陽道の子を、邪鬼丸が殺された時と同じ形で仇を討ち終えるかのようでもあった。刀の切っ先が波陀羅に届き、その痛みで波陀羅が覚醒した時、おびただしい血の海のなか、比佐乃は気を喪失し、ま . . . 本文を読む

邪宗の双神・54   白蛇抄第6話

2022-12-22 11:10:14 | 邪宗の双神   白蛇抄第6話
そして、その夕刻。一樹の咽喉に、畳針を深く刺し貫く澄明の姿があった。。澄明の目に映った者は驚愕と恐怖が混在した顔をしていたが、一瞬の内に何もかもを判断し諦念し哀しく情けない顔に変わった。恐ろしいほどの呪詛の念誦が封じ込められた畳針に更に澄明は、不動明王の真言を唱えている。「ナウマク・サマンダバザラダン・カン」修験者を守護し、修行の功を達成させる明王である。その力の中には金縛りという、まさしく不動明 . . . 本文を読む

邪宗の双神・55   白蛇抄第6話

2022-12-22 11:09:59 | 邪宗の双神   白蛇抄第6話
が、その時であった。榛の木の後ろに小さな芽が吹き出しているのを澄明が見つけて小さく叫んだ。「あ、芽がでておる」澄明の声になみづちは身体を捻じった。なみづちもそれを見つけると「あ」と、声を上げた。同時に澄明は一つの時に気がついていた。「双神。一樹の身体の中に入れ・・・」澄明はなみづちの傍に座り込むと畳針を一樹の身体から抜いて呼びかけた。「閉じ込めてくるるのか?」なみづちの中にも一縷の望みが湧いている . . . 本文を読む

邪宗の双神・終   白蛇抄第6話

2022-12-22 11:09:43 | 邪宗の双神   白蛇抄第6話
森羅山を抜ける頃になって波陀羅に白銅が「波陀羅。男はもういやか?」と、言う。「は、はは・・・もう、懲りた」淋しい顔で笑いながら、波陀羅は答えた。「そうか。わしは、御前がいっそ男になれば良いと思うての」「は?」突飛な事を言い出した白銅である。波陀羅も澄明も顔を見合わせていた。「いっそ、波陀羅。御前が一樹になりすましたらどうかと思うての」「え?」澄明は白銅の言う意味合いが、すぐさまに理解できず、突飛な . . . 本文を読む