憂生’s/白蛇

あれやこれやと・・・

邪宗の双神・48   白蛇抄第6話

2022-12-22 11:11:42 | 邪宗の双神   白蛇抄第6話

一樹が比佐乃の元にさえ行かねば、一樹が比佐乃に殺される事は有得ない。
だが、それを食い止める事が自分との情交なのである。
「判りました。波陀羅が頼みをきいてくれますな?
比佐乃様には、出きるなら、もうお会いする事の無いように」
「ああ。波陀羅。切ない事を言う」
一樹とて比佐乃には逢いたいのである。
だが子を宿した比佐乃を抱くには一樹とて遠慮がある。
逢えば愛欲の果て無体な事をしてしまいそうな自分の満たされぬ欲求と、
何処か母親を思い起こさせる波陀羅への恋しさが重なり合って
今は波陀羅を求めてはいるが、
けして比佐乃に飽きたわけでなく、
比佐乃への心を無くした訳でもないのである。
「御約束下さい」
一樹も波陀羅の言葉に逆らえば、
同門の波陀羅との情交をもてなくなると考えた。
双神の用事とやらも済んでいないのに、
ここから出られる事もどうせ叶わない事である。
であれば、唯一の情交を結べる相手を、
欲情を感じれる恋しい相手をなくしたくはなかった。
「判った。どうせいでも双神様の用事も済んでおらん。ここから出る訳にも行かぬ」
双神の用事が何であるのか
政勝を追従する事が不可能となれば
双神の用事が終わり、
今やそれが波陀羅との事に摩り替っている。
波陀羅がここに通い続けていけば、一樹がこの社から出る必要はない。
が、双神も無理に一樹をここに留め置く必要もない。
一樹自身にここにいなければ行けないと思い込ませておいたほうが良いのである。
余程、比佐乃から遠く離れた所に一樹を連れだそうかと考えた波陀羅であるが、
ここを出ても一樹はやはり、シャクテイを掠め取られる。
ましてやマントラを唱える事で比佐乃を救う約束なのである。
子を宿している比佐乃を救ってやりたい。
ましてやその腹の子は一樹の子である。
それは、母親としての波陀羅と、
一樹の女である波陀羅が混濁して内在している思いかもしれない。
兎に角は一樹をここに留め置く事を双神にも頼んでおかねばならない。
そして、八代神の言うように澄明に会いに行こうと波陀羅は考えていた。
『比佐乃と一樹の因縁を避けられるかもしれない。
その事が起きるのは子が産まれた時であろう。
子が産まれれば一樹も逢いに行きたくなろう。その時が正念場かもしれない』
二人を逢わさなければ良い。
そして逆に逢う時を見計らえば比佐乃の因縁を塞ぐ事が出来るのではないか、と、
波陀羅は考えたのである。
双神に一樹の事を頼むと、
そうしてくれるかと逆に一樹をここにいさせる事を良しとする返事であったので、
波陀羅は外に歩み出した。
双神の思惑なぞ知る由もなく、
波陀羅は哀れな双神の社を後にすると澄明の元に向かった。



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