憂生’s/白蛇

あれやこれやと・・・

白峰大神・16   白蛇抄第3話

2022-12-08 11:32:52 | ー白峰大神ー   白蛇抄第3話
ところが、「や?澄明がおらぬ」不知火の声に白銅もはっと振り返った。その場所にひのえの姿は無かった。ひのえは白峰の所に行ったに違いない。「しまった。行かせるでなかったに」「そうじゃの。ひのえを留め置いてほんにあふりがこぬか、確かめれば良かったかの?」確かめるには交情を持とうとすればすぐ判る。ひどく皮肉った言葉を投げ掛ける不知火である。「なにぞ、思いがあるのだろう。ひのえを信じてやれ。戻ったのではない . . . 本文を読む

白峰大神・17   白蛇抄第3話

2022-12-08 11:32:36 | ー白峰大神ー   白蛇抄第3話
「かのと・・・かのと」呼び起こされる声に、かのとは目を覚ました。が、夫てある政勝は今宵のかのとにおおいに満足したのであろう。かのとの中で果つるとそのまま深い眠りの中に落ち込んでいた。「はい?」うろんげに政勝を見やりながら小さく返事を返したがやはり、政勝はぐっすりと眠っている。「かのと・・政勝を起こすでない」潜めた声が響くと、かのとの目の前に男が現れた。ぐっと後退りをしながらかのとは、男を見た。が、 . . . 本文を読む

白峰大神・18   白蛇抄第3話

2022-12-08 11:32:18 | ー白峰大神ー   白蛇抄第3話
次の日。かのとは白銅の所へ急いだ。「白胴様」息を切らして玄関先にしゃがみ込むかのとを驚いた様に白銅が見た。「なんで、教えてくれませなんだ」「・・・・」やっと、ひのえの事に気がついたのだと判ると、白銅は何も言えなかった。「白峰が荒らぶっておるだけかと、思うておったのに」やはり、そうだと判ると「すまなんだ。がの、ひのえがかのと殿に知らせとうなかった気持ち、わしにはよう判る」「すみませなんだ。恨み言を言 . . . 本文を読む

白峰大神・19   白蛇抄第3話

2022-12-08 11:32:01 | ー白峰大神ー   白蛇抄第3話
かのとが白銅と話しおる同じ頃にひのえは父、正眼と話し合っていた。「父上」何も言わずとも、正眼は察したとみえて「白銅は得心したか?」と、尋ねた。「いえ。断り損ねました。」「そうか」「蛇を産み足れば行くというてしまいました」ひのえは白峰の言葉を疑ってはいない。百夜の満願成就で白峰がひのえを解いて天空界に上がるのだとそう考えている。身体も弱り果てても、子を見たい一心で生き長らえ様としている故にあふりなぞ . . . 本文を読む

白峰大神・20   白蛇抄第3話

2022-12-08 11:31:43 | ー白峰大神ー   白蛇抄第3話
かのとが急に高笑いで正眼の言葉を跳ね返した。父は、白峰が寿命を迎えているせいであふりを上げずにいるとは気が着いてない。が、それはどうやら、ひのえがいおうとしていないせいである。「ほほほほほほ。ああ、おかしい。それがどうしました?九十九が見ゆるのは前世でしょう?後世を見ゆるのなら、私も納得いたします。何もかも前世の因に縛られるのなら、こんな、父上の陰陽道も成立ちますまい?」厳しい目付きである。日頃は . . . 本文を読む

白峰大神・21   白蛇抄第3話

2022-12-08 11:31:25 | ー白峰大神ー   白蛇抄第3話
ぷいと立つとかのとは家に急ぎ帰った。家にたどり着くとかのとは慌てて黒龍を呼んだ。ふと、件の男が現れた。「何をあふりを上げおる」「聞いて下され。ひのえの強情にもほとほと手を焼きます」どちらも似たような者なのであるが。「仕方なかろう。きのえがそうだったに。あれは、おまえによう似ておった。普段は大人しいが、ここぞとなったらきつうてな。言出したらきかなんだ」「良い方に言出して聞かぬならよう御座います」始ま . . . 本文を読む

白峰大神・22   白蛇抄第3話

2022-12-08 11:31:07 | ー白峰大神ー   白蛇抄第3話
正眼の仕事が一つ増えた。さそくに、家に帰ってひのえを呼ばわる。「ひのえ」「はい」「わしも断れなんだわ」「やはり・・・」「そう。思うておったか?」「はい」「ならばいうが。おまけにひのえが良いと言うたら婚儀を許すと言うた」「え?」「あれは、どうにもならん。いっそ、共に死んでやれ」「父上?」「と、言いたくなるほど深い思いじゃ。後はお前が断りたければ、断われ」「あ」詰まる所、父は白銅との縁組を望んでいると . . . 本文を読む

白峰大神・23   白蛇抄第3話

2022-12-08 11:30:48 | ー白峰大神ー   白蛇抄第3話
かのとは生気の戻った正眼の顔を見ながら「が、まだまだすることがあります。先ずは産所を考えてやらねばなりませぬ。私の所では白峰が邪魔だてしてきましょう。龍が子孫には深き因縁が御座います故。八葉が所はどうかと思うております」「ここでは?」「男手で産ますのですか?白峰は杉を切らせております。産所を建てさす算段でございましょう。さすれば、白峰が我が手で取り上ぐると言いましょう」「ふむ」「八葉なら、ひのえに . . . 本文を読む

白峰大神・24   白蛇抄第3話

2022-12-08 11:30:28 | ー白峰大神ー   白蛇抄第3話
冬の朝。八葉のくどには湯を沸かす白い靄が立ち込めている。「やはり、産湯を遣わすのであろうな」独り言を呟いている所に白銅が来た。「ああ、聞いておりますに。先程聞かされて驚きましたが、何、それが一番よう御座います」戸の影に白銅を座らせると「出でくればお声を掛けますに、よろしゅうに・・・」と、言うと、部屋に入って行った。「うむ」子蛇を討つことをかのとはこの朝になって、陣痛が来たのを知らせに来た八葉に告げ . . . 本文を読む

白峰大神・終   白蛇抄第3話

2022-12-08 11:30:00 | ー白峰大神ー   白蛇抄第3話
一人、己の発した言葉を聞くと、かのとは静かに頭を垂れた。命を断たれた者への鎮魂を呟くとかのとは社を後にした。誰もすむ者のなくなる社殿の新しさがひどく目に痛かった。   ひのえの腹より、ま白な小さな蛇の姿が現れると八葉は白銅を呼んだ。産まれたばかりの子蛇は、もう、小さな赤い舌を出して外の空気を嗅ぎ取る様にひららと蠢かした。己の生を確かめる様にずうううとくねるとするりと身体を動かしてみた . . . 本文を読む

底・・・で  1

2022-12-08 11:28:16 | 底・・・で
悠貴・・・。倖・・・。だいたいが、俺のせい。盗人というのは、管理者が財産から目をはなす隙をいつでも、見計らっている。俺は、犯罪心理学に精通しているわけでもなく、まして、俺自身、悠貴という管理者が倖という財産から目を離す隙をいつでも狙ってる盗人の心をもっているとさえ気が付いてなかった。だから、俺は今、自分の心にうろたえてるしなによりも、俺は自分がひどく、卑怯でしかないと思う。 悠貴は事故にあっ . . . 本文を読む

底・・・で  終

2022-12-08 11:27:59 | 底・・・で
それから・・・。 この話の続きを書くのは、俺にとって、惨めなことでしかない。 だけど、俺の心の底に、倖という女性は、今も住み続けている。だから、表面上の結びつきなど、どうでもいい事で、それは、くしくも、また、倖の生き様そのまま。それをなぞらえることで、俺の倖への証にしたいと決めている。 あの日の朝。俺は倖を手に入れた安心感と倖との交渉に、満足しきって、快い眠りに落ちていた。 俺の携帯に病院 . . . 本文を読む