一見みたそのときは、完璧なヒューマノイドタイプで、私たちは
まず、人間のそれも、行き倒れであると
あわてて、救急車を呼び、彼女あるいは、彼を、病院に搬送した。
身元を確認できる物はなく、いっさい、彼女(彼)を証明するものがなく、
名前すらわからなかった。
私たちが身元引受人として、病院での治療費いっさいを支払うとして、
病院側では、彼女(彼)の回復を待っ . . . 本文を読む
幸い、彼らの案じた「被爆」はいっさいなく、
レントゲン室も彼ら5人も、「彼女」にも、いっさいの数値の変動を見せず、
自然界における、放射能指数が目の前のデジタル数値に現れているだけだった。
こんないきさつで、
彼女をラボに移送しおえると、相変わらず、昏睡を続ける彼女に
点滴を与え、心電図や脳波測定の処置を行った。
心電図は正常な波形を刻み、なんら、一般成 . . . 本文を読む
二日の間、彼女に何の異変もなかった。
だが、三日めの朝、彼女が発光しだした。
青白い炎、陽炎が、薄く彼女の体が取り巻いていた。
私はまだ、ラボに他の人員が着てない時間の彼女の変化を
他の研究員に連絡をいれ、
至急、ラボへの帰還を要請し、
彼女の監視カメラがきちんと画像をとりこんでいるのを確認すると
彼女の部屋に入っていった。こんな時ほど、厳重なロックシ . . . 本文を読む
それから、3~5分後に彼が現れ、私を揺り動かしていた。
と、いうことは、彼女が消滅してから、まだ15分そこそこということになる。
「わからないね」
彼はモニター画面をもういちど、巻き戻し、閃光する部屋を
スロー再生で見つめなおしていた。
「どう考える?」
私は彼女の消滅を受け入れるしかなかったが、
その消滅が、どういうことなのか、考えつ . . . 本文を読む
私たちの研究自体、人類救済を目的としている。
異なる環境、あるいは急激な環境変化に適応出来るために、
あらゆる条件に適合できるDNAを急速に成長させる。
たとえば、低温。
たとえば水中生活。
その条件に見合う生物のDNAを人間に移植する。
仮に水中生活を余儀なくされたとしたら、
たとえば「いもり」など両性類のDNAを移植し
それを急速に成長させる。
これで、人間は . . . 本文を読む
「なにが、わかったの?」
私の顔がこわばっていくのが、自分でもわかる。
私の表情が固まっていくのを覗き込んで、スタッフは
おそろおそる、不安気にたずねた。
「どうしたの?なにか、恐ろしいことがわかったってこと?
だったら、なおさら、解説してくれなきゃ
私にはわからないわ。ただの数字の羅列にしかみえないのよ。
あなたが解読できるようになった「鍵」をおしえてくれなきゃ・・・」
私の喉が . . . 本文を読む
『私たちは、私たちの星の消滅を察知して、
あらたな、居住場所をさがしはじめたのです。
いくつかの候補地があったのですが、
やはり、元々の星の住民と同じヒューマノイドタイプの地球人が最有力候補にあがり、
まず、私が実験をかねてやってきました。
私たちが移住しようとしている場所は地球ということになるのですが、
私たちは、寄生型生命体なので、移住といっても、
地球の人口が増えたり、私たちの . . . 本文を読む
「ごめんなさい。徹夜続きで、まいってしまってるんだと思うの。
そして、彼女の脳波解析を照合した結果
彼女の「箱舟」は一種、テレポートだと思うの。
丁度、彼女が消えるまえに発した「箱舟」は彼女の母船とのコンタクトをとる呼びかけじゃないかと・・・」
とってつけた説明をしゃべりだす私をスタッフは怪訝な顔でみつめていた。
「それが、どこで、照合できたというんだ?」
つじつまの合わない説明は彼女 . . . 本文を読む
(箱舟(第1部)を書き終えた私だったが、
物語の終わらせ方がしっくりこなかった。
だいいち、-私ーはこの先どうなってしまうんだろう?
彼女と共存するにしたって、どういう風に共存していくんだろう?
寄生植物を考えたって、寄生側が宿主を殺してしまうようなことを
しないのとおなじように、彼女が宿主に必要以上のコンタクトをとらないのはわかるけど、
どうなるんだろう?
もうひとつの案でもう一度 . . . 本文を読む
「これ・・?あなたが・・自分でかんがえて、かいたんだよね?」
あたりまえじゃないですか。そう、いいかえすこともできたけど、
あまりにも、ぱくりっぽい?
あるいは、ベタ物設定・・・。
オリジナリティに欠ける。
そんなものしか、かけないってことは、作家になるのは無理だね。
編集長の言葉のニュアンスがよみとれて、私は
「はい」それだけしか答えられなかった。
「そうだよね。そうだよね」
. . . 本文を読む
「水島かな子本人が小説をかいているわけじゃないんだよ。
ゴーストライターが居るんだ」
「つまり、穴をあけたのは、ゴースト・ライターさんだってことですね?」
それが、どうしたっていうんだろう?
売れっ子作家であろうが、ゴーストライターであろうが、
「穴埋め」に使われるということに変わりはないじゃないか。
ゴーストライターなんていうのは、その言葉が出来たように
そういう存在があるからこそ . . . 本文を読む
バスに乗ってる間、私の頭の中には疑問符ばかりが浮かぶ。
A4封筒は、手軽な軽さ。
短編なら、充分の量。
でも、短編なら、そのまま、掲載すればよいだろう?
もってきたというんだから、短編なら仕上がっているはず。
長編小説の連載1~2回分?
その続きを書けっていうことかな?
私が読んだら書く気になるってこと?
ーひょっとしたら、巧く、はめられたのかもしれないー
読んだら最後、書かざる . . . 本文を読む
私自身が奇妙にも、酷く冷静にうけとめているのだから、
編集長とて、奇妙なほど、驚きもしないことを疑問に思うのはおかしいことかもしれない。
だけど、今思えば、あの冷や汗?
あの「君が考えたんだね?」って、念押し?
それ、どういうことになる?
亡くなった人間が持ってきた原稿と私の原稿が書き方こそ違え
同じ設定になっていたなんて、
通常なら・・吃驚なんてものじゃないよね?
心霊現象以上の . . . 本文を読む
唐突に付け足された第2部のはじまりをほんの少し書いて
私はそれを読み直した。
******箱舟(箱舟(第1部)を書き終えた私だったが、
物語の終わらせ方がしっくりこなかった。
だいいち、-私ーはこの先どうなってしまうんだろう?
彼女と共存するにしたって、どういう風に共存していくんだろう?
寄生植物を考えたって、寄生側が宿主を殺してしまうようなことを
しないのとおなじよ . . . 本文を読む
その日を境に私の生活は、急変した。
箱舟をかきあげた私はそれを世にだすことをあきらめた。
なぜか、急激に、出版への意欲がうすれていったのだ。
それは、おそらく私の中にはいった寄生物の操作に他ならないと思えた。
彼らが人類に寄生するエネルギー体であること、
そして、彼らがまず、実験的に人類にはいりこんで、
仲間を誘導していくこと。
このモデル実験に選ばれた人間はかなりいる。
編集長も . . . 本文を読む