憂生’s/白蛇

あれやこれやと・・・

白峰大神・16   白蛇抄第3話

2022-12-08 11:32:52 | ー白峰大神ー   白蛇抄第3話

ところが、
「や?澄明がおらぬ」
不知火の声に白銅もはっと振り返った。
その場所にひのえの姿は無かった。
ひのえは白峰の所に行ったに違いない。
「しまった。行かせるでなかったに」
「そうじゃの。ひのえを留め置いてほんにあふりがこぬか、
確かめれば良かったかの?」
確かめるには交情を持とうとすればすぐ判る。
ひどく皮肉った言葉を投げ掛ける不知火である。
「なにぞ、思いがあるのだろう。ひのえを信じてやれ。
戻ったのではないわ。帰ってくる」
「そう、思うか」
「ああ、白峰の姿であれば来ると言うたのだろう?」
「ああ」
帰って来るのであろうか?
いや、帰ってくる。
来ぬものならすでに白峰の元に留まっておろうに。
あれも、己の気持ちが見定めきれずにおるに、
迷うたまま白峰の元には留まらぬ。
そうだと思うと白銅はやっと鼎の事に気がついた。
「鼎?」
「ああ・・今のは?」
眠り続ける澄明が目覚めたかと思えば
何時の間にか美しい男が現れ、消えると、
兄と不知火は何かを話しており、
その間に澄明が軽く鼎に会釈をすると出て行ってしまった。
それを鼎はぼんやりと見ていた。
「澄明がひのえだという事は、判るか?」
「女子の方だったのですね」
なにやら良く知った温かいものに擁かれたような気がする。
それから・・・
「鼎が我気道に落ちたのは知っておるか」
「あ、はい、たぶん」
鼎の思念の中には
山童に受けた陵辱の記憶のひと欠片も残ってない。
事実は鼎が身体が陵辱を受けているのだが、
その記憶も業も一浚いにひのえが持ち去っている。
そして新しくできた記憶を事実と信じているのである。
陵辱を受けてないのは思念の上だけであるなぞという必要はない。
鼎の信ずるまま、ひのえが助けに来てくれたのだと思うていさせれば良いのである。
「我気道に落ちやったを助けてくれたのですね」
後は、なんとでも言える。
山童は人の腐肉まで漁る。
食われかけた恐ろしさで
我気道に逃げ込んだとでもいうておけばよいし、
年端の行かないこの妹はまだ男と女の事なぞ知りもしない。
本当の事なぞ考えつくわけもないし、信じもせぬことだろう。
「父上。母上に会いに行きやれ」
「あ、はい。が、兄さま、先の美しい方は?」
「白峰だ」
「白峰様?ああ、西方の山の上の?鼎を助けてくれやった?」
「ああ、そうだの。鼎。今のこと、白峰の事誰にも言うな。」
「は・・・い?」
「よいな」
兄の言う事である。なんぞ考えのある事と思うと鼎は素直に頷いた。
「白銅」
不知火が白銅を呼んだ。
「もそっと、考えてみぬか?どうかんがえても、
あの白峰はいつもの白峰でない。
何か、我らの目で見えぬはかりごとがあるようなきがしていけぬ」
「そうだろうか?」
白峰の謀よりも、ひのえが白峰の元にいった。
この事実はひのえの真の気持ちをあらわすのか?
白銅の胸は暗く塞がれ不知火の言葉を
もはや、まともに考えている余裕はなかった。

社の扉を開け放つと
薄暗い、その中に白峰が蹲ってはあはあと息を継いでいた。
肩で大きく息をしていた白峰だったが、
ひのえに気がつき
「来てくれたか」
と、一言、声を掛けると
「寿命には、勝てぬ」
と、言う。
「白峰。すまぬ」
黙ったまま白峰は首を振ると
「白銅の元に行く気でおるのか?」
「いえ」
ひのえを咲かせたのは白峰である。
今更、白峰に擁かれ尽くした自分を差出せる訳もない。
「が、迷うておろう?」
白峰がここに居続けるなら、
ひのえも流石に口を拭う様に手の平を返すように
白峰をうち捨て白銅の元に行けるわけもない。
白銅の深い思いのせいもあるが
一つに白峰の寿命がひのえを頷かせたのである。
死ぬる身の者の為に白銅を断ってしまえば白銅も死ぬるだろう。
「じゃがの、ひのえ、お前の言うたことは証にならぬ」
「え」
「白銅に蛇を産めばというたがの。ひのえ、お前が産むのは蛇じゃ」
「では?」
もう一度、白峰は首を振った。
「腹におるのが蛇と聞いては気ずつなかろうと思うて言わなんだがの」
「ならば?」
「そこが違う。お前のわしへの思いが深くても、
人の形にはならぬ。蛇なのじゃ」
「え?」
「悪童丸の時にお前が政勝に言うたであろう?
精が破瓜の傷跡からも入りたれば
その血も鬼の物になるとな。同じなのじゃ」
「あ、あああ」
「だからお前の性も血も蛇の物じゃ。
かてて百夜精を受くるば嫌が応でも、性が変えられてしまう」
「それでは、どのみち蛇を産むと・・」
「そういう事じゃ、だから証にならぬ・・」
しばらく白峰は考えていた。
「白銅のものになってやるがよい」
「え」
「ただし、身二つになりて、わしが天空界に上がってからじゃ」
白峰の頭の中には計算がある。
とにかくは産をなすまでは白銅をひのえに寄せ付けとうない。
そして、子を産み落とせばその子は祭神として奉られる。
今度はその子に、あふりを上げさせて、
白銅を寄せ付けない様にさせればよい。
どの道いずれには、白峰があふりを上げぬ事がおかしいと思うて、
白銅も手繰ってくるであろう。
その隙にひのえを奪われてしまってはならない。
交い事は同じ人同士の方が馴染む。
だからこそ、白峰とて百夜を掛けて
ひのえの性を変えて来たのである。
もし、この時期に白銅に精を叩き込まれれば、
九代の身にて同じ事をやり直さねばならぬ。
産まれくる子の魂が嵌る前にその身を取るのである。
白峰はそうして千年をこの地上で生き越して来たのである。
が、もう早う、天空界に上がりたい。
その為にも、嘘をついても、白銅を遠ざけたいのである。
「なぜ?」
「もう、わしが守ってやれぬようになるに・・・」
「・・・・・」
「わしが寿命はよう、生きて二百年。
此度の様に精魂出し尽くさば、流石に持たぬ」
「二百年?」
「前世前世のひのえと契りてひのえが生みたる子蛇の中に
その身を移して生き越して来た」
「ならば。何故、此度は天空界にあがります?
此度も子の中に入ればようございましょうに?
さすれば・・ひのえも・・・」
自分の言いかけた事にひのえははっとして口を噤んだ。
「おってくれるとか?じゃがそれでは、親子の交いじゃろう?
七度わしもそれが辛かった。
手が届くほど側におっても手をだせぬ」
「それで、思いの丈を晴らすために百夜?」
「そうじゃな」
「そうですか」
「わしもこれで満足した。
七度、側で見ておるだけで只只骨になるまで守り守りて、
又も産まれてくると思うても、哀しゅうて哀しゅうて涙が落ちた。
産声を聞くたびどんなに胸が温まったか。
そして又同じ繰り返し。
側におっても抱いてもやれず
一人生きる苦しみを与えているのも辛かった。
が、それも終る。わしもその、苦しみ終わりにする」
白峰の苦渋が今始まったものでないと判ると、ひのえはおもわず
「白峰・・ひのえは、御前が好きじゃ」
思わず口から出た言葉にひのえ自身も驚いていた。
『それが、本意なのか!?ひのえ。
蛇のものなどになりとう無かった筈ではないのか?
本意なのか?』
ついと白峰の手が伸びてくるのにひのえの方から
それを手繰り寄せる様に引くと
自分から白峰の胸に入り込んだ。
白峰からひのえに手を出すことは
願掛け百日を過ぎれば許されないが、
ひのえから望むのは別である。
ひのえの求めに応じる様に
ひのえの体を開かせると白峰はひのえの中に
ゆっくり己の物を入れ込んだ。
「欲しゅうなれば、来や。ひのえが望むは受けれる」
「ああ」
この欲情の強さも性を変えられておるせいかとひのえはふと思う。
「蛇はの、本来交われば七日八日かも雌の身体を離さん。
それを一夜にして百度の精をはたき込んで来たのじゃぞ。判るか」
「ああ・・・あ、はい・・・」
「白銅のものになってはならん。奴がこの身体静めてやれぬわ。
なお、わしが恋しゅうてほたえ苦しむだけじゃ」
「ああ、なれど・・・」
「なんじゃ」
「白峰もおらぬようになる」
「覚えておけ。来世はわしの妻じゃ」
「え?」
「ほれ」
ぐうと実を入れ上げると
そのまま、細かく引く様にくじり始めるのに、ひのえの声が重なった。
「なんと?」
そのまま弧を描く様に引いてくると抜けぬ物を
もう一度弧を画く様にして突き入れて来る。
「ああ・・よい・・・」
白峰のいうた言葉が定かでなくなる快さに
ひのえが喘ぎ始めるとその身体を起こして
白峰の膝の上に抱いた。
身体を包むようにしておいて白峰がひのえの口を吸い始めた。
舌を割り入れひのえの舌を絡め取ると、軽くその舌を吸う。
其れだけでひのえのほとの中にどよめきが起きてくる。
そうしておいて白峰は空いた手でひのえの乳を柔らかく揉みあげる。
「ん」
塞がれた口の中から嗚咽が零れる。
白峰のもう一方の手が腹の方を滑り降りると
滑る精汁に指を絡めそのまま指を引き上げ
ひのえの一番鋭い場所を指の腹で擦り上げて行く。
そうされると、すぐに高いうねりが上がって来て
ひのえがすぐにあくめを迎えるのを白峰も判っている。
指の動きに合わせるように実を動かして行くと
やがてひのえのほとの中がじんわりと締まって来る。
ぐうと締まると小刻みな波のような震えが来る。
それを構わず、実を突き動かして行くと
「ああ・・あ、ああ、ああ・・・・」
唇を離してひのえがあくめの声を上げ続ける。
あくめが長く続くようににその指も実も動かし続けて、
白峰がひのえをしつこいほど喘がせる。
「ああ・・・堪忍して・・・」
あくめを追えてもまだ、ひのえのほとの中がうねる様に動いている。
そのうねりが、与える感覚もまた快く果てしない。
ひのえのほとの中の血脈がずきずきと脈打つのが判る頃に
やっとひのえの中から波が去って行く。
ぐったりとした身体を支えて白峰が
「なんぞ、よりひもを探してでも、抱きに来てやるわ」
「・・・」
「の、だから、白銅なぞ、許すでない」
白峰のはてるまでもう、何度かひのえはあくめを迎えさせられる。
「私は白峰の物?」
「この様が違うと言いたいか?」
「・・・・」
「今宵は間違いなくひのえがわしを欲っしたぞ」
「・・・・その通りです」
欲情が沈むとふと何処かで違うという思いがする。
が、それを手繰り始める頃に白峰の動きに
ひのえの沈んだ筈の欲求がまたも迫り上げられていった。
ひのえが家に帰りついたのはもうとうに陽が落ちていた頃であった。



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