憂生’s/白蛇

あれやこれやと・・・

白峰大神・・1   白蛇抄第3話

2022-12-08 11:37:02 | ー白峰大神ー   白蛇抄第3話
白銅が鏑木の部屋にいると、伝えられて澄明は部屋の戸を開いた。そこに白銅が、じっと立っていた。が、その足元に黒い醜い者がいるのが見えた。「白銅!餓鬼ではないか?」思わず澄明は叫んだ。「見えるか・・・・鼎だ」澄明の言葉にふりむいた白銅の袴の裾を掴んでいた餓鬼の姿がふっと消えた。「なんと?我気道に落ちやったか?」「うむ。それよりも、不知火が白峰よりあふりがたったと、言霊を寄せてきよったわ」「そうか・・・ . . . 本文を読む

白峰大神・・2   白蛇抄第3話

2022-12-08 11:36:47 | ー白峰大神ー   白蛇抄第3話
「嫁にくれと?そう申すのか?そちが、か?澄明をか?正気か?知っておろう?」白銅は澄明が女子である事もしっている。が、問題はそれだけではない。正眼の声が震えている。「勿論です。だからこそ・・・白峰なぞに・・・・」白峰の名前が白銅の口からでた。白峰の目論見をしっているということである。「無理じゃ。勝てる相手でない。加護を与えるどころか、むしろ、澄明の足手まといになる。澄明の方が法力は上だ。その力をもっ . . . 本文を読む

白峰大神・・3   白蛇抄第3話

2022-12-08 11:36:30 | ー白峰大神ー   白蛇抄第3話
白銅は項を垂れたまま、正眼の部屋を出るとそのまますぐに不知火の庵に向かった。先ずはこの目で白峰のあふりがどれほどのものか見定めたかった。 扉を開けてぬっと入ってきた白銅にさして驚きもしなかった所を見ると、不知火も白銅のくるのを予期していたのであろう。「早くも来たか?」「おお」振り向きもせず不知火は声をかけるとそのまま茶を立てつづけた。風流な男である。床の間に飾られた花もこの男が手ずから活けている . . . 本文を読む

白峰大神・・4   白蛇抄第3話

2022-12-08 11:36:13 | ー白峰大神ー   白蛇抄第3話
「白峰の事もか?」「判らぬのう。澄明の事を読むお前の気持ちは気がついたが、何に左程に白峰が気に障る」「澄明を読んではおらぬのか?」「するものか?御主ではないわ」「・・・・・」「いうてみろ」「初めはわしも、判らなんだ。御主の言う通り、澄明の心を透かして見とうてな。都度、都度、読む内に白峰の名前がよう過った。その内、かのとが政勝の嫁に行く頃に、『妻には成れぬ』といいおる。深い悲しみがある中に『この身、 . . . 本文を読む

白峰大神・・5   白蛇抄第3話

2022-12-08 11:35:56 | ー白峰大神ー   白蛇抄第3話
「巫女様!!」息を切らして半蔵が駆け込んで来た。「どうした?」巫女は半蔵をじっと見た。「それが、嗚呼。白峰様がいかってらしゃるのだ」「訳が判らぬ。きちんと聞かせや」齢を七拾を超え様かという老いさらばえた巫女である。少しの事では、驚きはしないのだが、白峰の怒りという言葉に膝を正し、幾ばくか、背筋を伸ばした。「昨日の雨の後、雨に打たれた者は身体が痺れると言い、草を突付く鳥もしばらくすると地べたにじたじ . . . 本文を読む

白峰大神・・6   白蛇抄第3話

2022-12-08 11:35:41 | ー白峰大神ー   白蛇抄第3話
『雨が降ってしもうた』白銅と同じ思いが今、ひのえの胸に去来する。『この、雨をどんな顔で見ているのやら・・・』白銅はひのえへの溢れる思いをどうする事もできず、只、白峰の物に成るのを指を咥えて見ているしかない。それを、ひのえが望んでいる事なら白銅も諦める事もできる。が、ひのえはもはや諦念している。その諦念を託つものはせめて村人達にこれ以上白峰のあふりを受けさせないですむという事だけであろう。 次の日 . . . 本文を読む

白峰大神・・7   白蛇抄第3話

2022-12-08 11:35:23 | ー白峰大神ー   白蛇抄第3話
重たい社の扉を開け放つと、予期していたかのように白峰が待っていた。「きやったか」つと、立ち上がると見えたら、もう白峰の姿はひのえの側に寄り添う様に立っていた。「さて・・・ひのえ・・・・いかがなす?」「・・・・・・」「この白峰。ひのえが七の年より十二年、この時の来るのをどんなに待ち受けた事か」「好きになさるが良い」「ひのえ・・・良いのだな?」「ほっ。嫌だと申せば、おやめ下さると?」美しい白峰の顔がひ . . . 本文を読む

白峰大神・・8   白蛇抄第3話

2022-12-08 11:35:07 | ー白峰大神ー   白蛇抄第3話
五十四夜白峰がくすりと笑った。「ひのえ。」「はい」「昨日、人の物を触った事が無いと言うておったの?」「あ、はい?」何を言い出すのかと訝しげなひのえの返事である。「が、鬼の物には、触れたの?よう、掴んだの?」「あっ、ああ。そうでありましたな。が、よう知っておいでである」「お前の成す事は、全て見ておった。危なげな事を平気でしおる。が、時折、よう判らぬ事をする」「判らぬ事?」白峰がひのえを抱きこみながら . . . 本文を読む

白峰大神・・9   白蛇抄第3話

2022-12-08 11:34:51 | ー白峰大神ー   白蛇抄第3話
今は静かな佇まいを見せているが、ご開帳の日ともなると弁財天を信奉する者の人の波でごった返す境内を不知火は突っ切っていった。「あいすまぬ」不知火が呼ばわる声に住職が出てきた。「はい。いらさりませや」「御くつろぎの所、あいすまぬの。ちと、御知恵を拝借しとうてな」通り一遍の挨拶をすると、住職の方が「陰陽道の不知火様の御力になれるやらどうやら・・・」と、ひどく慎まし気な返事を返して来た。が、そんな事で引く . . . 本文を読む

白峰大神・10   白蛇抄第3話

2022-12-08 11:34:36 | ー白峰大神ー   白蛇抄第3話
「何者じゃ?」その声と共にぬっと、現れた男は背が高く、いかつい顔で年の頃は三十半ばを越していようか、すこし、剣のある目付きをしていた。「なんだ?陰陽師風情が何の用だ?」一目でそれと見ぬくと高飛車な言葉を投げ掛けた。不知火はその男がくりくりの磨髪であるのが判ると、「堂を守るのは、御主であるかな?」と、問い正した。男からはむっとした返事が返って来た。「俺が守っておってはいかぬか?もそっと、高尚なやつば . . . 本文を読む

白峰大神・11   白蛇抄第3話

2022-12-08 11:34:20 | ー白峰大神ー   白蛇抄第3話
八十八夜白峰はこの所よく眠る。朝に昼に夜に供物を届けてくる巫女の声にはっとしたように目を開けると、必ず白峰は自分から供物を取りに行く。巫女の方はそれを置くと一目散に山を下って行く。うっかり白峰の姿なぞ覗こうとしたら、どんなあふりがくるか。自分から姿を現わさぬ限り触れる事のならない掟のような物を巫女は判っている扉を開けて供物をとりいれると白峰がひのえの前に供物を置き食べるように言う。「精をつけねば、 . . . 本文を読む

白峰大神・12   白蛇抄第3話

2022-12-08 11:34:03 | ー白峰大神ー   白蛇抄第3話
何時のまにやら夏の盛りになり、青く小さな柿の実が花を結んで枝枝に付いている。蝉の声がじいいいと底鳴りをさせるように唸り出すと、あちこちから、呼応していくつもの蝉が鳴き始めた。ひのえは急いでいた。早く家に帰りつきたい。父に逢いたい。そう思うが父の顔を見て泣き付いてしまわぬだろうか。やっと、帰って来たひのえを迎える父の前でけして泣いてはならない。そう言い聞かせながら足早に歩いていたひのえの足が止まった . . . 本文を読む

白峰大神・13   白蛇抄第3話

2022-12-08 11:33:47 | ー白峰大神ー   白蛇抄第3話
白峰の百日があけようとするのに、なんの手立ても得られなかった。手繰る糸は有るのに手繰る術がない。歯噛みしながら日が過ぎて行った。矢も立ても溜まらず白銅はもう一度正眼の元に行った。ひのえの心さえ白峰の物になっていなければそれで良い。が、正眼の応の返事は無かった。意に沿わぬ婚儀でこれ以上ひのえを苦しめたくない。ひのえの心はどうなのじゃ?逆に正眼に聞かれ、白銅は答える事が出来なかった。「白峰の事が無けれ . . . 本文を読む

白峰大神・14   白蛇抄第3話

2022-12-08 11:33:29 | ー白峰大神ー   白蛇抄第3話
「白銅もう一つ用事があると言うたであろう」「お、おお。言うておったの?」白銅はやっとひのえを放した「鼎様の事だ」「鼎」「何故、ああなった?」「聞かぬがよい」「あの姿のままで良いと言うのか?もしも、助くらるる法があったらどうする?」「え・・・?」「伊達に、白峰の所におったわけではない」ひのえの嘘である。が、そうでも言わなければ白胴も喋るまい。『白銅から読み透かしはしとうない』色んな思いが渦巻いている . . . 本文を読む

白峰大神・15   白蛇抄第3話

2022-12-08 11:33:10 | ー白峰大神ー   白蛇抄第3話
鼎の眼が虚ろに開いたまま、夕刻迫り探しに来た白銅に見付けられるまで山童の蹂躙が何度も繰返された。 「か、な、おのれ!」白銅は鼎の有り様に気が突くとたちどころに法術を唱えた。風が起きると山童の身体が巻き上げられ引き切られぼたぼたと肉片となりて落ちて来た。「鼎」慌てて、鼎の側によると鼎の顔を覗き込んだ。「鼎?」眼が宙をさ迷い白銅と目があわない。ひしと鼎を抱き締めると、「鼎?」もう一度呼ぶと鼎の眼がぼ . . . 本文を読む