憂生’s/白蛇

あれやこれやと・・・

踊り娘・・・2

2022-12-21 14:19:57 | 踊り娘

「サーシャが?」
ターニャの顔が複雑にゆがんだ。
妹の才能が本物であることは
姉としてうれしい。
だが、同じ踊り娘として、
歯牙にもかけられない自分をいっそうにしらされる。

「サーシャには、まだ、はなしてないが、
君がサーシャの保護者である以上、
まず、君の同意が必要だと思う」
サーシャをキエフにいかせる。
それは、
サーシャが一流のプリマドンナになれるチャンス。
「サーシャの気持ちしだいです」
答えてから、ターニャはどこかで耳にしたせりふだと思った。
イワノフだ。
「踊りをつづけてゆくか、僕と結婚してくれるか、
君の気持ちしだいだ」
踊りを続けてゆく。イコール、結婚は断るという意味になるだろう。
逆に
結婚するといえば、踊りは続けてゆけない。

ターニャの迷いはそこにあったかもしれない。
踊りは続けたい。
だが、
自分の踊りはもう、踊りだけでは稼げる代物でなくなってきている。
踊りをつづけてゆくということは、
人前で、胸をさらけ出すということだ。
イワノフと一緒になれば、
彼の財力で
たとえば小さな養成所をつくって、
子供たちを指導するということで、舞踏にかかわってゆくことも出来る。

だが、そんなことよりも、
もう、売り物にならない自分のレベルをつきつけられ、
いま、また、
サーシャの才能を見せつけられた。

才能さえあれば・・・。

踊り続けてゆくことが出来るのに・・・。

あと、二月でソロマドンナの地位を手放すしかない。

イワノフの劇場をはなれ、
他の場所にいったとて、結果は同じ。
むしろ、もっと、ひどい境遇がまっているだろう。
踊り娘という名を語る陰売。
あるいは、
踊りを踊れる陰売という言い方が正解かもしれない。

才能がないものは、
どこまでも、おちるしかないのか。
サーシャが逆にそれを証明する。
才能があるものは、
どこまでものぼりつづけてゆける。

ターニャは、出番を控えるため、舞台のすそから
ステップに上がっていった。
心なしか張り詰めた表情が泣き出しそうにも見える。
「返事ははやいほうがいい」
イワノフは伝えると観客席に移っていった。



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