朝には雨がやんでいた。
遠くから銃弾の音が散漫にひびいてくる。
あたしは東さんの包帯を替えながら、
その音の意味をかんがえていた。
銃の音は病院の後方の山向こうからきこえるきがする。
そして、緩慢な発砲。
これは、部隊が後退をしいられているということではないだろうか?
発砲を繰り返しながら部隊が山の中に逃げ込んでいる。
つまり・・・。
それは、この病院がもう、敵の陣地の中にのみこまれたということになるんじゃないのだろうか?
そのとき、東さんがぽそりとつぶやいた。
「片足だけじゃあ・・もう、どうにもなりゃしねえなあ」
東さんも部隊の後勢をさっしている。
部隊に戻って参戦して味方を支援したいのだろう。
だけど、既に参戦できる身体でもなく、
本部に帰還するしかない東さんに武器も必要ないと
武器さえもたされちゃいない。
とおくで、また、鈍い爆発音がひびいた。
東さんは
「やっぱりな」
と、つぶやいた。
あたしには、よくわからなかった。
だけど、その爆発音は今まできいたことのある武器の発するものじゃないのだけはわかった。
「撤退してるんだよ。そこらじゅうに地雷をしきながら、あとずさりしてるんだ」
聞いた事の無い爆発音の正体は地雷の音だと東さんがいう。
「敵の誰かが地雷をふんじまったんだろう」
東さんはおいつめられてゆく部隊をおもってか、
それっきり黙ってしまった。
包帯を替え終えるとあたしは次の患者のところにいく。
東さんは、窓のそと、
晴れた青い空をみつめていた。
あたしは励ます言葉も
慰める言葉も見つけられず東さんをみてるだけだった。
今闘ってる兵士のことをかんがえたとて
東さんはここにいるだけしかできない。
あと、二日、トラックが早く来れば良いとあたしは、おもった。
だけど、この朝にきいた地雷の爆発音が
あたし達の運命をおおきくかえる元になっていたなんて、
おもいもしなかったんだ。
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